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米ラッパー、リル・ウージー・ヴァートさん 額に入れたダイヤモンドの秘密

※以下、すべて創作です

──額に11カラットのピンクダイヤモンド(25億円相当)を埋め込んだアメリカのラッパー、リル・ウージー・ヴァートさん(26歳)。どんなきっかけだったか、担当記者が聞いてみました。

せっかく念願のラッパーになったんだから、一度はみんなをびっくりさせてみたい。そんな目立とう精神から、額に大きなピンクダイヤモンドを埋め込んでみることにしました。とはいえ僕は実際、そんなにブリンブリンは好きじゃなくて、昔は無印の服をよく着ていたタイプです。お店で流れてるケルト音楽も好きでね。その後ラッパーになって、いでたちがブリンブリンになったのですが、ラップを始めた頃の僕は「会社員はネクタイをするもの」というような、ある種の服装規定として「ラッパーはブリンブリンであるべし」という決まりがあるのだと勝手に思い込んでいて、それに従っていました。たぶんマジメだったんです。最初はちょっとダサい服装だなと思ったけど、やっていくうちに少しずつ好きになってきた。

曲が売れて、お金が入るようになり、最初はお母さんに渡したりしていたんですが、やがて「そんなに要らないよ」となったので、自分用のアクセサリーや車を買い始めました。車も、そんなに車種などは詳しくないので、ディーラーの人に「なるべくブリンブリンのラッパーが乗りそうな車をください」とお願いして、おまかせで選んでもらっていたところ、ディーラーの人もだんだん勢いがついてきて、車体に大量のスワロフスキーを打ちつけたフェラーリとかを持ってくるようになった。光の反射がまぶしくて、対向車が事故を起こしちゃうんじゃないかと心配でした。「こうなったらやけだ」と思って、がまんしてトチ狂った車に乗ってるうちに、「アイツはヤバい」と評判が立ち始めて、さらに仕事が順調になっていった。人生、何がきっかけになるかわからないものです。

そのうち刺青も入れたのですが、痛そうだったし、きっとお母さんに怒られるだろうと悩みました。ただ、周囲から「アイツは刺青もしてないのか、ドープじゃないな」と陰口を叩かれるのではという気がして、「ここはいっちょやったるか」と、ワルいのかマジメなのか自分でもよくわからない恒例の思い切りのよさが働いてしまい、ガーッと全身に入れちゃって、最後はもう顔もいっちゃえ、ってことで顔面にも入れた次第です。実家に帰ったとき、刺青を見たお母さんに「あなたもう、就職活動できないよ。ずっとラップでやっていけるの」と怒られて、そのときは申し訳ないと思ったけど、僕はラッパーとしてとことん行くって決めたから、お母さんに叱られてもブリンブリンを貫いていこうと思う。実家への仕送りもつづけていますよ。

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ここだけの話ですけど、ダイヤモンドの価格は9億円なんです。でもまあ、9億円だとキリが悪いから、試しに10億円だってフカしてみたんです。ほら、ラッパーってボースト(うぬぼれ、自慢)が大事じゃないですか。その後、いろいろな人に話してるうち、11億円って言ってもバレないだろう、どうせなら16億円だ、ってな調子でどんどん額をふくらませちゃって、気がつけば25億円と報道されている状態。自分でも誇張しすぎたなと反省しています。皮肉なもので、ダイヤモンドを額に埋め込んだら、さらに仕事が増えてしまいました。実は僕、ラップの歌詞とかフロウもすごく工夫してるんですけど、こうした取材では結局おでこダイヤの話ばかり聞かれてしまうので、そこはさみしい。まあ自分でまいたタネではあるんですが、歌詞にも注目してほしいなと思っています。

手術は麻酔もきいていて、そこまで痛くなかったですが、ダイヤモンドは顔を洗うときにじゃまですね。僕は洗顔はしっかりするし、保湿にも気をつかうタイプなので。寝る前のスキンケアがめんどうで、ブリンブリンもたいへん。顔を洗ってるとき、指先にダイヤモンドが当たると、とがってて痛いです。それと、僕はうつぶせで寝る方がよく眠れるんですが、そのときおでこに圧迫感があって、たまに起きちゃうのも悩みでしょうか。僕は、硬めのそばがらの枕が好きで、そうするとダイヤモンドが枕に当たって気になるんですよね。そのせいで夜中に起きてしまったりと、睡眠に関してはかなり誤算でした。とはいえ、ラッパーになって途方もないお金の使い方をする、という当初の目標は達成できたので、満足していますよ。もし将来、ラップで食えなくなっても、額の石を外して売れば生活できますから。僕は料理にも興味があるので、いつか料理教室を開いて、生徒さんに料理を教えるのも夢ですね。いま作っている新しいアルバムにも、ぜひ期待してほしいです。

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