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櫻井は桜井より強い

櫻井さんは、桜井さんのことをどう思っているんだろうか。普段、どんな気持ちでいるのだろうか。たぶん、ちょっと見下している。自分より弱いと思っている。口では「いや、なんとも思ってないですよ」「同じに決まってるじゃないですか」と言いながら、心の底で少しだけ見下しているのだ。私にはわかる。櫻井さんは、「櫻」の貝が2個並んでいる右上の部分を書きながら、自分が強者の側であることを確認しているような気がする。これは言いがかりではない。例を挙げれば、横浜にある飲食店や商業施設が、あえて「横濱」の表記をして、昔ながらの雰囲気、王道の感じを出そうとする傾向があるのは、やっぱり「濱」が強そうだからだ。同様に「櫻」には、「桜」を蹴散らすパワーがある。

沢田さんは澤田さんに引け目を感じている。なぜなら、澤田さんが自分の名前を書く際に、簡略化して「沢田」と書くことはあっても、沢田さんが「澤田」と画数を盛って書くことはできないからだ。上から下に降りることはできても、下から上に登ることはできないのが業界のルールだ。沢田さんが「澤田」と書いたとたん、「やっぱり憧れてたんだ」「引け目を感じていたのか」「画数を増やしたかったんだ」と本心が露呈してしまう。一方、斉藤さんは肩身が狭い。「斎藤」があり「齊藤」があり、きわめつけの「齋藤」があるからだ。サイトウヒエラルキーの最下段、「斉」。漢字に余白が多くて、来場者の少ないイベントみたいである。「斉」はシンプルすぎて、ホラー映画の序盤ですぐ死ぬ人を連想させる押しの弱さがある。一方、齋藤さんは、サイトウ世界の頂点捕食者(apex predator)であり、サバンナを駆けるライオンだ。

渡辺さんの業界は、実は比較的平和である。なぜなら「辺」「邉」「邊」など、どうやら50種類以上ものワタナベがあるらしいためだ。こうなると、誰がすごいか、ワタナベさん本人にすらわからない。渡邉さんが渡辺さんにマウントを取りに行こうとすると、渡邊さんが背後からやってくる、さらにはその向こうに7人のワタナベさんがいて、みたいな複雑な事情があるため、争いは起こさないよう平和協定が結ばれているのだ。山﨑さんは、山崎さんに多少の優越感を持っている。しかし、その優越感は比較的小さくて、「昔、実家でベータのビデオデッキを使っていた」とか「モールス信号が送れる」ぐらいの微弱なものである。そのため、あえてマウントを取りに行くことはないのだが、心のなかで、少しだけ自分が勝っていると感じている。

【斉藤さんにおすすめしたいスキンケア方法も書いてあります】

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