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『G.I.ジョー 漆黒のスネークアイズ』『ビルド・ア・ガール』

『G.I.ジョー 漆黒のスネークアイズ』

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映画化された、過去の『G.I.ジョー』シリーズは好きで見ていたのですが、今回はこれまで謎とされてきた忍者のキャラクター「スネークアイズ」がどのように誕生したかを描く作品。主演に『クレイジー・リッチ!』(2018)で主人公の魅力的な恋人役を演じたヘンリー・ゴールディングがキャスティングされています。日本を舞台としており、大量のニンジャ軍団、血の気の多いヤクザ、扇子で敵の喉を切り裂く女将さん(石田えり)などのエキゾチックな日本描写が楽しめます。正直、あらすじはかなりとっ散らかっていたのですが(劇中で起こるトラブル、全部主人公が悪いような気がするんですよね)、嫌いになれないタイプの作品です。

主人公の乗った飛行機が(おそらく)成田空港に到着する場面では、「成田空港から富士山がこんなに大きく見えたら楽しいだろうな~」と微笑んでしまうほどの特大サイズで富士山がそびえ立っていて胸がキュンとしますし、けばけばしい電飾で彩られた飲食店街の雰囲気にもぐっときます。やたら深く礼をする城の警備ニンジャ、バイクを修理するヤンキー整備工など、描写はどれもやりすぎなのですが、見ていて飽きることがありません。観光映画として作られた側面もあり、なぜ海外の方はあれほどに渋谷の駅前交差点が好きなのかわかりませんが、渋谷の場面ではしっかり尺を取って交差点を見せていました。金曜の夜にポップコーンをかじりながら見るのに最適のフィルム。バイクでチェイスしつつ、トラックの上でチャンバラをする場面などおもしろかったですね。

『ビルド・ア・ガール』

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90年代に、イギリスで音楽ライターとして活躍し始めた16歳の少女を描いた作品。主演のビーニー・フェルドスタインは『ブック・スマート 卒業前夜のパーティーデビュー』(2019)での演技も記憶に新しく、また映画ファンにとっては「ジョナ・ヒルの妹」としても知られる存在です。貧困な家庭に暮らす主人公は、内気で読書好きな高校生。文章を書くのが得意な彼女は、ライター募集の広告を見て原稿を送り、音楽ライターとしてデビューします。精力的に執筆し、やがて原稿料で家賃をまかなうまでになりますが、しだいにウケを狙うためにより過激なこきおろしを始めます。毒舌キャラとして名声は上がっていき、気がつけば天狗になっていく主人公。とはいえ、そのようなスタイルが長続きするはずもなく……。

劇中登場する、サルタンズ・オブ・ピン・FCやカーターUSMといったバンド名に「あったなー!」と懐かしさを覚えつつ、思春期の少女がいかに自己を確立していくかを描いた、まっとうな物語になっていたのに好感を覚えました。なにしろ主人公の表情が変幻自在、スクリーンにその顔が写っているだけで、何かが起きそうな雰囲気が漂うのが実にいい。その意味ではいかにも映画俳優らしい顔つきです。オフレコと約束していた内容を記事にしてしまうくだりなど、16歳の少女ならいかにもやってしまいそうな失敗なのですが、見ていて「ああっ」と胸が痛くなってしまう悲しさがありました。ドリー・ワイルドという筆名に託された自己の変身願望、髪を赤く染めるなどのモチーフも効いています。16歳って、実は平気で残酷なことができてしまう年代で、口から出る言葉が「それを言っちゃおしまい」の連続なのも切なかったです。イギリス映画らしい雰囲気も楽しみました。


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