高い所からの眺望

以前は大好きだった高い所からの眺め。

今でも好きだが、前と違うのは、クラッとすること。

……………

最近出来た、ある施設に行ってみた。

地上48階建て、高さ225mという高層ビルに、映画館、劇場、ライブホール等があり、上部はホテルになっている。

週末、仕事帰りの曇天にフラッと立ち寄ると、開店初日だったためか、それなりに混雑していた。

人混みに紛れて、エスカレーターを上がる。

夕方過ぎだったが、エスカレーター添いの巨大な窓に映る街の景色は壮大で、開放的な気持ちになる一方で、あまりの高さにクラッとなった。思わずエスカレーターの手摺りにしっかりつかまる。

途中、映画館の階で立ち止まるも、何となく行ける所まで…と17階までやって来た。そこから上がホテルのようだが、あいにくどうやって行くのか分からず、その日は断念。

フロアを軽く一周し、目についたジェラートのお店に立ち寄る。

窓際で２種類のアイスクリームを堪能しながら、改めて外の景色に目をやる。

動かずにじっとしていればクラっとすることはない。

子どもの頃、高い木の上から地面を眺めたり、２階の窓から台風で荒れ狂う川を長時間見つめていたことがあった。

けれど、クラッときたことはなかった。

窓際を陣取り、写真撮影している大勢の人たちを横目に、ゆっくりと下りのエスカレーターに乗る。

地上に降りてきてホッと一息。

地に足がついた感覚に安堵する。

『今度来るときは、映画館に行ってみようか…』

そんなことを思いながら、帰路についた。