夏休みのつぶやき

 日本における米の栽培の歴史は3,000年前に遡る。それだけの昔から今まで日本人は米を主食とし、また、米を生業として生きてきた。
 それは、この国の湿潤な気候が米の生産に適しているからであり、瑞穂の国と言われる所以である。
 しかし、自由貿易が進むにつれ、パンやケーキといった主に小麦を原料とする食事が日本でも広まり、米の需要が減少する。
 それは、米を根幹としてきた日本の農業にとって黒船来航のような出来事である。
 それに対して、日本は、かつて明治維新において欧米の政治体制・文化を受け入れたように、いや、単に需要が減ったから、作りすぎた分を主食用米として以外の用途で利用するという発想がなかったからか、米から麦や大豆への作付け転換を図ってきたのだ。
 
 麦や大豆は、元来乾燥した気候での栽培に馴染むもので、湿潤な気候の日本には向かない。そのため、政府は畑作物の直接支払交付金や水田活用の直接支払交付金などにより、転作奨励・生産条件の格差是正を行わなくてはならない状況であり、米の需要が減るにつれてこれまでどおり転作を進めていけば、国の予算に依存した麦や大豆の生産量が増加していくという構造にある。

 昨今の、コロナ対応、ウクライナ情勢への対応として食料安全保障への関心が高まる中で、米粉の活用が一つの選択肢として出てきているが、一方で、麦や大豆などの輸入依存穀物の増産も食料安全保障施策の一つとして掲げられている。

 もちろんそれも大切なことではあるが、予算がないと立ちいかなくないという構造、3,000年に渡って米に生活を支えられてきた瑞穂の国という原点に立ち返って、水田をどう有効活用するか、米をどう有効活用するかに思いを馳せてもいいのではないか。

 まだまだ米は日本人の主食の一つであり、いざという時に高い収量をあげられる作物である。
 輸出はもちろん、稲わらは神社のしめ縄にも使われているし、その強度を考えれば糸でもなんでも応用できるのではないかと思っている。

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