手帳売り場にて
ちょんちょんちょん。
急に腕をつつかれた。
東急ハンズの手帳売場にいた時だ。
振り向くと、そこには
20代半ばと思われる女性と、
その彼氏っぽい男性が立っていた。
そして、女性の方からこう訊かれた。
「すいません、営業マンって、
どういう手帳を買えばいいんでしょうか?」
⁉︎
エッ、俺、東急ハンズの店員じゃないし。
それに、今はスーツを着てないから
”営業マン”に見えるとも思えないんだけど…。
なんで俺に聴くんだ…⁉︎
頭の中で一瞬そう思ったが、
目の前の2人は
師匠に教えを請う弟子のような目で
僕を見つめている。
ここで「さぁ…僕、店員じゃないんで」と
言うのは簡単だ。
しかしそれでは、
目の前の迷える子羊たちはどうなる。
そこで僕は、にわか師匠として、
自分なりのアドバイスをすることにした。
「えー、そうですね、、うん。
ひとくちに”営業マン”と言っても、
業種や勤務時間もさまざまです。
お使いになる方は、どのようなかたちで
営業のお仕事をされるんですか?」
僕は男性の方をチラリと見たが、
彼はフンフンと頷くばかり。
キミが使うんじゃないんかい。
そこで今度は、女性の方に視線を移した。
しかし彼女も「へぇー、そうなんですかぁ。
あの、、、どんな仕事かまでは聴けてなくて…」と言っている。
どうやら、営業マン手帳を使うのは
別の人間らしい。
そこで僕は続けた。
「お仕事の詳細を教えていただくのが
一番ですが、もしその方が9時から22時まで
びっしりアポが入るようなお仕事なら、
こういう、細かくスケジュールを入れられる
バーチカルタイプがお勧めです。
それから…」
その話の切れ目に、彼らはハッと我に返った
(ように見えた)。
そして慌てるように言った。
「すいません、勉強不足でした。
本人にピッタリな手帳を買うために、
仕事内容を聴いて、また出直して来ます。
ありがとうございました。」
と去っていった。
東急ハンズ側からしてみれば、シロウトの僕が
余計なお世話をしたのかもしれない。
でも手帳って、実に奥が深い。
それはさんざん自分に合った手帳を
探し求めてきた自分が良く知っている。
他人がサッと買ってプレゼントするようなものでもないと思う。
どうして”営業マン”氏が自分で購入しないのか、
そして彼らが僕に聴いてきたのかは、
謎のままだ。
ただ、彼らのような
良い友人に恵まれたその”営業マン”氏が
自分にピッタリな手帳に出会えることを
祈るばかりだ。
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