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俳句マガジン 「ランタン」

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小生の処女句「ランタンはゆつくり灯る秋の雨」より。これから俳句を始める人や、句作に悩んでしまった人たちの、道を少しでも照らせたらと思う。
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2020年12月の記事一覧

【句集紹介】麦車 芝不器男句集を読んで

・紹介俳句は基本的に5・7・5の17音で詩性を表現をする文学である。故に17音で自分の伝えたいことを表現しなければならず、俳人はいつもそのことに苦慮している。 しかし、どうしても17音では足りないことがある。そういったときのために、俳句には「前書き」と呼ばれる表現方法が存在する。前書きとは、デジタル大辞泉によると下記のような意味である。 和歌や俳句の前書きとして、その作品の動機・主題・成立事情などを記したもの 小生は基本的に前書きを用いない。俳句を俳句足らしめているのは

【句集紹介】山嶽 山口誓子句集を読んで

・紹介 俳句を少しでも嗜んだことがある人ならば、下記の2句はどこかで聞いたことがあるであろう。 夏草に汽缶車の車輪来て止まる ピストルがプールの硬き面にひびき 山口誓子。ホトトギスの4Sの一人にして、水原秋櫻子と並び新興俳句運動の指導者的存在なった人物である。 誓子の作風は、一般に、都会的であったり、知的で即物的であったりと言われている。小生もそのような考えを持っていたが、今回紹介する句集「山嶽」を読んでみると、誓子の違った一面も垣間見ることができる。 山をテー

【句集紹介】群青 水原秋櫻子句集を読んで

・紹介前に水原秋櫻子の名書「高濱虚子ー並に周囲の作者達」の紹介記事を書いたので、彼の実際の句も紹介したい。秋櫻子の句の特徴や考え方については下記添付の記事に詳しいのでご覧いただけたらと思う。 ここでは、一つ、クイズを出してみたい。下記の2句はどちらも「那智の滝」をモチーフに詠まれた句だが、どちらが客観写生の虚子の句で、どちらが俳句に主観の重要性を説いた秋櫻子の句か、お分かりになるだろうか。 瀧落ちて群青世界とどろけり  神にませばまこと美はし那智の滝  正解は「瀧落ち

俳句 雑詠5句

死後なんだらうこんなにも月冴へて遠山の銃声冴えて出棺す蜜柑落つだからどうとでもないけれど君宛の手紙が来なくなって冬本当は優しい人といふ寒さ亀山こうき

詩人(特に俳人)必読書。高濱虚子‐並に周囲の作者達‐(水原秋櫻子著)を読んで

 当然のことだが、歴史に名を残すような大人物にも、弱く、苦悩し、葛藤をした若き時代が、人生の中には必ずある。そのことを小生らは忘れてしまいがちで、大人物は昔から大人物であるかのように錯覚してしまう。  水原秋櫻子(みずはらしゅうおうし)。虚子と並び立つ俳句界の巨星にも、若く苦悩した日々があった。  師である高浜虚子への尊敬と次第に顕になる俳句観の相違。志を共にした友との決別。  全国最大の俳句結社ホトトギスの中心的人物の離反と、馬酔木(あしび)という新興俳句の先駆けとな