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BS松竹東急・月曜ドラマ「カメラ、はじめてもいいですか?」カメラのヤマヤ現場同行記

「あの4日間、1日の延べ来店数にしたら過去最高だったのではないか」

・はじまり
1本の電話が届く。
とある制作会社の担当からロケーションに使わせて欲しいとの相談だ。
一瞬詐欺をも疑う。毎日のようにもっともらしい営業電話がかかってくるので、まず疑ってかかる癖がついている。
詳しく話を聞いてみれば、周知のコミックの実写化が決まったという。
嘘かほんとかについては、すでに知り合いである原作のしろ先生に聞いてみればいいと思う。
詳細は決まっていないが大体の撮影期間は決まっているという。
営業保証の支払いもあるという。その額は不明だが、そんないい話が転がっているとは思えない。この時は、まだ疑っていた(笑)。
自分としては(本当であれば)お店の宣伝にもなるしいいんじゃないかと思った。後日、制作担当者が来店し面談して話すことになる。

・ロケハン
お店を貸すことが決まって、作品の監督やスタッフが何人かロケハンにやってきた。制作担当さん含めて皆若く30代くらいか。映像制作や映画監督とかは「年配の人」みたいな勝手なイメージが経年で付着していたが、それは自分の過去を引きずってきただけの結果で、よく考えればクリエイティブの仕事は30代以下がメインだと思い出す。
笑いが絶えない和やかなスタッフグループは、次のロケハンのために丁寧な挨拶をしてお店を出て行った。

・撮影
目の前で撮影が進んでいる。
撮影機材は、想像通りのものもあるのだけれど、思いの外進化していてすごくシステマチックだ。カメラもモニターも音声も照明(屋外光照明や天井設置照明も個別にコントロールできる)も全て無線接続されていて遠隔操作できて、各オペレーターがスマホ端末で全体を把握できるようになっている。
Sony FX6シネマ用4KムービーカメラにSIGMAのシネマレンズ。
24mm,35mm,50mm,85mm,135mm各単焦点とズームを一本セットで持ってきている。室内撮影なので24から85mmまでしか使っていなかった。
解放F値は1.5くらいのようだった。
比較的馴染みのある固定三脚やドーリーだけでなくスライダーやハイハット、ジブアームなど初めて見る機材を使い、ムービーカメラマンと監督でアングルを取っていく様子は圧巻だ。

・現場の空気
スタッフ全員が無駄なく動く。
作業は和やかで、滞りなく緩やかに繋がっていくので「空気」にストレスが少ない感じがする。
スタッフ総員20名以上。全員30代以下じゃないかと思う印象。
屋外で警備する者、機材を運ぶ者、設置して使用する者、チーム一体となって連絡を取り合い、少なくとも素人視点では素晴らしく無駄なく動く。

・監督 -1-
【メイン監督・脚本の上村奈帆監督】
上村奈帆監督には、独特の和やかな空気がある。
今回の仕事場を見ていた感じとしてカリスマ性もあると思う。
そんなに理詰めで細かく役者さんに指示を出す方でもないような気がする。
それでも何となくやりたいことが伝わりやすい感じ。
和やかで話しやすいキャラクターなので役者さんも台本のニュアンスが分らないところを気軽に質問できる雰囲気が素敵だと思う。
脚本も物語の筋としての落とし所や伝えたいところがよく整理できているような感じ。現場で調整して煮詰めて仕上げる。煮詰めるといっても色の濃い煮物という感じでなく、やさしいホワイトシチューのような感じ(?)。
各々キャラクターのパーソナリティー設定や関係性、そこから何を伝えたいか、そういったことが読み取りやすい。

今回のカメラのヤマヤロケーションでの撮影の部分では上村監督の他に3人の監督がメガホンを取っていた。

【ウエダアツシ監督】
ウエダ監督の印象は、無言だとぬーぼーとした風貌に見えなくもないが、ちゃんとしゃべっていると優しい感じだ。どうしたいか、どう表現したいか、ニュアンスのイメージが明確で「言葉数は少ないけれど伝わる指示」のようで、リテイクが比較的少なかった印象があった。
なんか面白い感じ(空気)で雰囲気が良い。
静かでにこやかでちょっとお茶目な監督。
ゴスロリ衣装の中村(守里)さんとにこやかに記念撮影してもらってるあたりの楽しい感じがウエダさん?

ー* これを書いているのは撮影が終わってから *ー
 朝5時にスマホのアラームを止める。
 あれから1週間過ぎたらしい。
 今日からまた始まればいいのに、と日付を確認する。
 もしかしたらタイムリープしていて永遠に撮影が…
 それも困るし、日付は正確に今日だった。
 スマホのアラームを直して二度寝に入る。
ー* そして随分時が過ぎてオンエア近くで校正している *ー

・物語設定
今回のロケのキャストは5名。
全員女性キャラクターだ。
原作とこのドラマの脚本はちょっと違う。
原作では主人公と友達、憧れの隣人とその友人の関係が「世界」なのだけれど、上村監督の脚本では主人公の家族が加わり、憧れの隣人とその家族の関係なども新たな設定で組み合わせてあり、ヒューマンドラマとして深みを出している。

・スタイリストさんの仕事
メイクさんやスタイリストさんの仕事というものを知らない立場から勝手に想像すると、俳優さんのメイクをして本番に送り出してあとは見守るのみで暇…、というような感じだったのだけれど、全然違っていた。
常にバックルームでカメラモニターを睨み、俳優さんのヘア、化粧、服装の乱れをチェックして、カットが入ると駆け寄ってすぐに「お直し」に入る。それも常に休む暇なく劇と劇の隙間を素晴らしいタイミングで出入りしていく。完璧な仕事だ。
俳優さんに給水や上着の管理などもされていて、忙しい。
無駄のない動き・仕事。

・録音
音声さんといえば、でかいウインドスクリーン付きのマイクを長い竿に提げて遠くの演技を録音しているイメージだった。
だが今回見たのは、室内での録音なので普通のウインドスクリーン付きの比較的小型のコンデンサーマイク。伸縮可能なカーボン製の竿を使って音を録っていた。
前から不思議だったのが俳優さんのセリフの録音方法。マイクは、俳優さんの服についているピンマイクと竿についているマイクと同時に録っているようだった。
しかしいくら先端のマイクがダイナミックマイクのように重くなくとも、竿を支えるのは筋力的に大変だと思う。竿の手元側にはトランスミッターのようなものがついていた。
屋外の騒音とか話し声とかが入ってしまうと、そのテイクの演技が良くてもNGになってしまう。本番中は、とにかく音を出さないようにするから換気扇やエアコンはOFF。俳優さんは暑くても涼しい顔で演技するし、スタッフも淡々と仕事をこなしている。真夏じゃなくてよかった。

・閑談
自分は、映画の現場とかで働きたいと思ったことはない。
撮影現場というものには、いろんなものに興味がある一端として興味がある。
過去に一回だけテレビドラマのエキストラに参加したことがある。当時好きだったドラマのエキストラ募集があると友達が教えてくれたので応募して、クリスマスの夜に一晩参加した。とても雰囲気がいい現場だったが大人数の現場のエキストラなので俳優さんの演技は近くで見ることはなかった。数百人体勢の現場だったから遠くで撮影していたのは見えたくらいの感じ。休憩中に暗闇に佇んで休憩していた阿部寛さんと目があったのが想い出。頭の高さが同じだったから。

・私(筆者)の現場での立ち位置
今回は制作側の好意で撮影中に現場で見ていていいとのことで、とにかくプロの仕事の邪魔にならないように、役者さんやスタッフさんのストレスを増やさないように、余計な手を出さずにとにかく「空気」か「家具」にでもなったつもりで終始スタッフの動きを避け、何か気になっても手を出さず口も出さないように努めた。プロの現場で素人が混じっているだけでストレスなのは普段の経験からも明らかで、善意で手伝っても裏目に出てしまうことも多々あるし、そうなると仕事が滞る。少なくとも自分のお店での仕事はスムーズに行ってほしい。
それが提供する側の責任みたいなものだと思っていた。
監督さんたちも現場スタッフさんたちもすごく丁寧で申し訳ないくらい気遣いしてくれる。私は申し訳なく思いながら、邪魔にならないように食らいつくように見ることに集中し続けていた。

・監督 -2-
【山嵜晋平 監督】
山嵜監督は、ムードメーカー。関西弁(奈良?)で常に笑いをとっている。
話してるの聞いてると結構昭和のおっさん風なツッコミも混じるので、キツく聞こえるかと思えばそうでもなく、笑い流せるような詞使い。言葉の印象よりも周りに気を遣っている人なんだろうなぁ、と思う。そういった感じが人によって同じ言葉を言っても伝わり方が違うということなのだろう。
指示もテキパキしている。一見雑なようですごく整然としていてストイックだと感じた。俳優さんへの指示も短く的確で無理がない感じ。
完成のイメージを正確に再現している。今後の作品が楽しみだと思う。

【山城達郎 監督】
山城監督は、4人の監督の中で一番シナリオの内容を丁寧に自分の言葉にして静かに説明するタイプに見えた。ここはこういう状況でこう思っているからこういうセリフに繋がるというようなことを落ち着いて俳優さんに説明している様子は、昔何か映像で見た映画監督という仕事の様子を思い起こさせる。静かに丁寧に確実に。地味だが理解しやすく現場が進む。

・照明
照明は天井照明を撮影用の照明に付け替えて使用していました。
蛍光灯のような形のLED照明で、明滅や色温度は全て個別に無線でコントロールします。撮影には色温度設定が重要なのは、スチル撮影も動画撮影も同じです。光源の種類が混じる場合は調整します。
あと天井照明から直接芝居しているシーンを照らすと光の回り込みがよくないので、スチル撮影で使うソフトボックスのような効果があるジュラルミンの枠にトレーシングペーパーのような透明度の膜が張ってあるものを光源の下に設けます。大きさも900mm角くらいのものから1500角くらいの大きなものまであり、専用の三脚に竿を付けて片持ちで使うので、三脚の足に砂袋などウエイトを載せるかスタッフが乗ってバランスを取っていることも多かったです。このソフト効果のある板は個人的に定常光の撮影には有効だと思うので、後日、LEDリングライトで使うために試作してみようと思います。

・ドラマ設定でのお店の名前
当初打ち合わせでは、店名は原作の通り「ヤエガシカメラ」だった。
脚本ができる前だったらしく、ロケハンの後に連絡があって「カメラのヤマヤのままで行っていいですか?」とのお話で、ウチとしては構わないということで実写ドラマ版の店名がカメラのヤマヤになった。
でも働いているナギさんの本名が八重樫ナギであるあたりは店名の由来ってなに?というところが観た人に疑問が残るかも(笑)。
※1 後日、「ヤエガシカメラ」に戻ったような雰囲気である。オンエアまでわからないので楽しみでもある。まぁ、現存のカメラ屋実名は、どうか?と思っていたが💦
※2 結局、実店舗名でのオンエアだった。お店関係各所にはインパクトがあったようだ(笑)。

・美術
地味に目立たず、だが常に確実に背景で仕事している美術監督さん。
制作さんから最初に聞いた話だと、お店のテーブルは撤去してソファー置くらしいですよ、と。
ソファーか?
昔、店内のテーブル撤去して人をダメにするソファー置こうと思ったことがあったが…。どんな美術設定になるのか、ちょっと楽しみだった。
お店の商品は背景としてそのまま使うとのこと。ただスポンサー関係で写せないものがあるらしい。カメラ関係の機材協力は、富士フイルムとリコーイメージング、ニコンらしい。
監督のイメージを美術監督さんが作る。
撮影前日、ロケーション準備。テーブルを撤去して、W170,D70くらいの楕円テーブルと丸椅子、カウンターの椅子は撤去、セルフサービスドリンクコーナーは物語設定上撤去。

その前日にカウンター上の漫画や邪魔になりそうなものは1日かけて片付けた。カメはじの原作や上村監督が原作を書いているコミックスや推し本を目立つ本棚にセット(笑)。
しかしその本棚と大きい液晶モニターは目障りだったようでカバーされてしまう(笑)。普段カウンター席になっているテーブル上には、物語上の店員ナギさんが海外で買ってきた土産物と撮ってきた写真が並んでいる。
展示写真はナギさん役の根矢涼香さんが旅先で撮ってきた写真だった。
※ジャーニースナップとしてもとても良い根矢涼香さんの写真はインスタグラムなどで公開されています。
アクセサリーコーナーには作中の設定になっている高級ストラップや富士フイルムのカラーフィルムが並ぶ。フィルムは品薄※で集めるのが大変だったとのこと。商品POPなども美術さんがオリジナルのものを作ってきて設置する(撮影終了後も譲り受けて使用)。
美術設定は、撮影中も映り込む物など細かく確認しながら進む。
※当時フィルムメーカーからの入荷が少なく一般の店舗在庫も僅少だった。

・スチールカメラマン
斎藤弥里(サイトウ ミリ)さんという写真家の方で劇中の写真家綿矢チサト作品を提供していました。原作コミックスでは「ヤエガシカメラ」(ドラマでは「カメラのヤマヤ」)店内に飾られた綿矢チサト作品は絵画だったのですが、ドラマ制作時に写真作品になりました。
斎藤さんは、写真家と映画やドラマ撮影現場でスチール撮影(静止画)する職業カメラマンの二面性を持つ作家さん。映画やドラマの現場では裏方の仕事で表に出ることはないスチールカメラマン。まるで忍者のように静かに確実に現場で撮影されていました。
現場ではさまざまなニーズも出てきます。劇中に使うスチール写真の要望をその場でこなすために撮り溜めたストックフォトを幅広く持っていることも重要なようでした。実際、最終回でチサトが動物園で撮影してきたという写真データの要望を端末の中から探していたのも目にしました。(でもオンエアでは、ほとんど映っていなかった…)
物静かな雰囲気のあるカメラマンで、お店で証明写真撮影に使っているNikonD800を目に留めて「初めて買ったデジタル一眼レフなんですよ、いいカメラですよね」など話しました。使用機材は仕事として使いやすいフルフレームのミラーレスに高倍率ズームレンズとサブに高画素センサー機を使われていました。とにかくレンズ交換しているタイミングが少ない現場の限られたアングルからスチール撮影の結果を出す仕事ではそういうセットがベターだと感じました。

・キャスト(出演者)
カメラのヤマヤ ロケーション回に出演された俳優さん。
前述の通り全員女性です。
主演
池田ミト:田牧そら

綿矢チサト:手島実優
八重樫ナギ:根矢涼香
音海モア:村山優香
毒島リン子:中村守里

・演技指導?
私はとにかく現場の邪魔にならないように、スタッフさんの動きをできるだけ予想しながら避ける。俳優さんと目があったりして不要な緊張とか与えないために向かい合っても見つめずにちょっと視線を逸らせていたり、手も出さず口も出さず、とにかく傍観に徹するように努めていました。たまにエアコンのスイッチとか換気扇のスイッチとかの操作したり地味な場所でお手伝いさせていただいていました。
とはいえ私はこの店の店主でもあり、フィルムカメラ屋で。制作側スタッフは、劇で扱うカメラについては調べているけれど扱いに慣れているわけではないので、扱い方など相談されることもありました。

特に、主人公ミトちゃんが店員ナギさんに教えられながらNikon Fにフィルムを装填するシーンについて、フィルムの装填方法を役者さんに教えてほしいとのリクエストがありました。
割と新しめのフィルムカメラならば装填方法も似ていますが、1959年発売のNikon Fは、ちょっと特殊。フィルム装填時に開ける必要がある裏蓋が下に引き抜ける構造であり、フィルム巻き戻しの時に押すボタンもボタンでなくレバーで、底面でなくシャッターボタンの周りにあるのです。
それを、フィルムカメラにフィルム装填するのが初めてのミトちゃん(田牧そらさん)が詰めるのだからハードル高い気がしました。
シナリオだけではよくわからないので、実際にNikon Fを触ってもらいながら装填方法と手順を説明させていただきました。ナギさん役の根矢涼香さんはプライベートでフィルムカメラを使っているので理解しやすいと思いますが、田牧さんは初めてのようだったのでできるだけ丁寧にお教えしました。
さすが俳優。飲み込みがすごく早くて、ちょっと練習して本番もほとんどNGなくクリア。俳優さんって凄いなぁと改めて感じました。

あとは、ナギさんがお店で作業しているシーン。
台本では「レンズをいじっている」みたいな感じだったのですが、山嵜監督から「なんか作業してる感じできませんか」みたいなお話をいただき、うーん…裏蓋の遮光モルト貼り替え作業なんてどうでしょう?と。
ということで、フィルムカメラのモルト貼り替えメンテナンスしているとミトちゃんがお店に飛び込んでくるというシーンが出来上がりました。
このへんも根矢涼香さんの飲み込みが早くて一発OKだったし、やはり俳優さんはスペックが高いなー…と再び実感しました💦


・フィルムカメラは、おしゃれアイテム?
フィルムカメラってやっぱり流行ってる?
ロケ中、ナギさん役の根矢涼香さんがフランクに、店頭で販売しているフィルムカメラについて私に尋ねてきた。私から俳優さんやスタッフさんに声をかけたりすることは今回前述の理由もあり控えていたので、逆にちょっと驚きつつも質問にお答えしました。根矢涼香さんはプライベートでフィルムカメラを使っていらっしゃるようで、店頭のカメラに興味津々。お好みのカメラについてお答えしたりアドバイスさせていただきました。
ロケ最終日の撮影が終わった後、根矢涼香さんだけでなくスタイリストさんやメイクさん、ミトちゃん役の田牧そらさんまでフィルムカメラに興味津々で、何台か販売させていただきました。
おしゃれな女性たちにフィルムカメラは流行っているのでしょうか(笑)?
なにしろネットやメディアでは取り上げられるのを見聞きするものの、東京都下の小さな中古フィルムカメラ屋さんをやっていても、実はあまり実感がなかったんですね。都心のカメラ屋さんとかだと若い方が凄く多いとかタレントさんがいらっしゃるとか見てましたけれど。コマーシャルかも?という疑念もあったし(笑)。でも今回の撮影でおしゃれな方々はフィルムカメラを使ってみたいのだなぁと実感できました。
そんなわけでお店としては、襟元をもう一度正し直して商品作りを頑張ろうと思いました。

・キャスト(役者)
そもそも役者さんは、役作りをした状態で現場に入っているから、現場では「素」ではないと思う。
現場入りした段階で各々役に没入している。
普段の自分の上に役を着ている。
そういう緊張感のような空気も感じることができた。

・村山優香さん
音海モア役の村山優香さんは、明るくテンションの高い「ペンタキシアン※」キャラクターを元気よく勢いよく加速させていた。
※ペンタキシアン:PENTAXのカメラが好きすぎてPENTAXに傾倒するヲタク

それにしてもあまりに特殊で(笑)難しいキャラ付け。お店のお客さんにも超絶ペンタックス好きの方はいるけれど、現実にこんなにテンション高く「PENTAX愛」を口にする人は見たことがない(笑)。それも出てくるレンズの長い製品名も超絶に頑張って覚えているのは、リアルなペンタキシアンには涙ものだと思う。現実こんな長い製品名はカメラ店の店員だって口にしないし、覚えている人は少ないんじゃないかな。
HD PENTAX-DA 55-300mmF4.5-6.3ED PLM WR RE
「昨日の晩には言えてたのにー!!!(一同・笑)」という苦渋の叫びで場を和ませながらきっちり言い切る記憶力と演技力に感服致しました!
たまに茨城弁が出ちゃうところもかわいい役者さんでした。

・撮影現場環境
制作会社が道路使用許可を取って、横付けしたトラックからネットワークで操作したり機材を一時的に保管したりする。
撮影現場であるお店は、撮影ロケーションとしても広くはない環境。
カメラアングルなどかなり工夫が必要だったのではないかと思う。
監督などはト書やメモの多い台本を常に携行して書き込んだりして仕事を進めていたけれど、絵コンテは持っていないようだった。スタッフの中に絵コンテをチェックしている人を見かけた、確か紙ではなくスマホでだったと思う、カメラマンと監督の間にチェックする担当がいるのかもしれない。
このへん、全く素人の私には理解できていないので単なる想像予測だ。

・中村守里さん
毒島リン子役中村守里さん、最初に見た印象は、役のコスチュームから篠原ともえさんを連想した。実際、役柄として普段は落ち着いているのだが自分の好きなものの事になると急激にテンションが上がるという推し活体質。
しかし演技を見ているとストイックな感じで安藤サクラさんを連想した。
役柄的には高校生としては線が太いイメージができていたのだけれど、演じていない彼女のイメージは線が細く美しい人だった。
プロフィールではバレエとか体操経験者とのことで、なるほど背筋がスッとしていて綺麗な立ち姿はそこからかな?と思った。
つまり、役作りがすごい。
後半、店内で記念撮影するシーンで他の3人の腕の中に横っ飛びに倒れ込むシーンがある。実際にRICOH GR IIIのセルフタイマーを使って記念撮影のタイミングを合わせていたが、最初の1回はタイミングがずれたけど2回目以降はほぼピッタリに思い切りよく飛び込んでいた。ドラマを見ていると何気にわからないかもしれないけれど、思い切りの良さと体幹の強さが活きていると思う。
※撮影終了後日、お一人で来店されてコンパクトカメラを1台お買い上げいただいた。役の時とは違う落ち着いた美しさがある印象だった。その後、いろいろな映画に出演してる情報がやってくる。今、それだけ評価されている俳優さんなのだ。

・手島実優さん
印象は、クールビューティー。主人公が憧れる人物・綿矢チサトとしてのルックスに申し分ない配役だと思いました。
実際、演技もスマートでリテイクが少なかった。
昭和生まれの私の印象だとごく仕事できそうな丸の内のOLさんみたいなイメージもあり、しかしそんな装いの内面に好きな写真の道に向かう過程での迷いなどを持ったキャラクター。それを全体でどのように演じているのか? まだカメラのヤマヤでのロケのシーンしか観ていない私としてはとても興味深い。
※後日オンエアを観た印象では、役として精神的な振れ幅が広い演技と雰囲気が素敵な方だなと思いました。手島さんはシンガーでもあり、そういった面も演技に色合いを持たせられるのかなぁと感じました。

・現場の空気
撮影現場の外で活躍する制作スタッフさんたち
最初にオファーをいただいた制作担当の方のほか、撮影中屋外での警備や物の搬入搬出、結局見ることがなかったがメイクルームや控え室、スタッフ全員の食事の手配やタイムスケジュール管理、撮影以外にも大勢の人が滞りなく完璧じゃないか、と思える働きをしていた。
よく映画なんかだと監督さんの撮影スタッフ全員を監督の名前を冠してXX組と呼ぶと聞きます。
例えば堤幸彦監督の堤組とか。
堤監督のエキストラで参加した時にいろんな現場に趣味で参加しているエキストラ界隈の人が「堤組はすごく現場の雰囲気がいい」と話してたのを聞いたことがありました。
今回の場合は、筆頭の監督が上村奈帆監督だから上村組(カミムラグミ)。
とても優秀なスタッフが雰囲気良く動いていた、という感想でした。
特にロケ弁が美味しかった! 近所のお弁当屋さんで手配したのは食べつけていて美味しいのは知っていたけれど、4日間のロケ中もいろんなお弁当を毎食選べるように何種類も手配されて、どれも美味しかった。
ロケ弁が美味しい現場は良い現場だと思う絶対!(個人的感想)。
※堤組のロケ弁も美味しかったですw。

・根矢涼香さん
両親が営むカメラ店で旅の合間に働く娘、八重樫ナギ。
原作ではバックパッカーでサバサバしたおねぇさん。
それを演じるのが根矢涼香さん。
原作のナギさん役のキャスティングによくぞ探した!と思うくらい人柄が合っているように感じました。
役者さんの中ではすごくいい現場のムードメーカーで、気軽に話しかけて緊張した場をほぐして和やかな空気を作る。役者さんだけでなく監督、スタッフだけでなく傍観者の私にも。撮影の合間にカメラのことを聞いてくる。
実際に割と気軽に海外などに旅に出るらしい。店内美術に展示していた写真は彼女自身が海外で撮ってきたもの。写真家としても素晴らしいと思う。
彼女は普段もフィルムカメラを使っているという。
フィルムカメラで撮っていても今回の役のような店員に求められるエンジニアリング的な知識が必要とは限らない。セリフのなかで主人公にフィルムの特性について説明する難しいシーンがあったのだけれど、その場で飲み込むように理解して言葉にしていたのには彼女の中の「役者」を見た感想。
撮影の合間に、今まで使っていた一眼レフが壊れて探しているというお話を伺った。気に入ったカメラを見つけて撮影最終日にお買い上げいただいた。
その後、彼女が出ている映画が上映されているとのことで下北沢で観た。
まんま「根矢さん」だった(笑)。すごく感じのいい映画俳優さんだと思う。因みに撮影中、スタッフさん皆「根矢さん」と呼ぶ。
そんな親しみやすさも備えている方でした。

・天候
撮影期間中、前半天気に恵まれなかったという。
特にオープニングの屋外シーンは、壮大なイメージだったようだけど曇天。撮影期間がないので結構苦労されたらしい。
カメラのヤマヤロケーションの4日間は半日ほど雨天が合ったけれど概ねそれほど荒れずに済んで予定もスムーズに行うことができた。
映画などの撮影期間が長いものならいざ知らず、オンエアが決定して制作期間の短いTV番組は、とにかくなんとかして撮るのが宿命のようで大変そうだった。因みに後半は屋外ロケはなんとか好天でできたようだ。

・田牧そらさん
主人公・池田ミトは、ちょっとコンプレックスを抱えた高校生。
自分のルックスにも自信がなく内気で引っ込み思案な性格で教室でも周りの「友達」とも気軽に話せない。そんな彼女は高校生で一人暮らしを始めた。
アパートの隣室に住んでいた駆け出しのカメラマン綿矢チサトと出会い、写真を撮られ撮ることで今まで見えなかった自分を見つける物語。
それに対して田牧そらさん自身について周りのスタッフの会話から受ける印象は明るい陽キャ。
しかし現場入りして初めて間近で観た時の印象はちょっと陰がある感じ。
撮影中見ていて、それはたぶん役作りだろうと感じる。
言い方が正しいかは分からないが、田牧そらさんは、すごく真面目な感じ。台本を現場で読み直して解らないところは素直に監督に質問する。質問は簡潔で短く的確だから監督も答えやすい。
台詞もほぼ間違うことなく頭に入っている感じで、現場で変更になってもすぐに対応できている。この辺は役者スキルとして当たり前なのかもしれないけれど目の前で見るとやっぱりすごいなと思いました。
あとでちょっとだけプロフィールを覗くと、生まれたての頃からずっと役者をしているようなので実年齢が高校生でもキャリアの長さは現場でトップクラスだったと思う。しかし、人はどんどん成長していき、その年齢に合わせて演技も変わっていくことが求められてもいることもあり、20代以降の安定した年齢層とは違い、常に演技も変化成長していかなければならないのがこの年齢の役者さんだと思う。

にわか雨にあたって風邪をひいてくしゃみをするシーンがあって、どうしてもくしゃみの演技が上手くできないことがあった。同じシーンで演技する根矢涼香さんがくしゃみの演技を田牧さんに教えていて、なんとか完成できたのだけれど、そのくしゃみが昭和世代おなじみ、ザ・ドリフターズの加藤茶のような「へっ、クション!」という感じで、なんか上から盥が落ちて来そうでみんな笑ってた。しかし16歳の女の子がやる加藤茶のくしゃみはすごくかわいいから合格だ(笑)。次回は「へっ」の部分をやめた方が自然にかわいいかも(笑)。可能ならばオンエアを再チェックしてみてください。

後日、彼女の出演していた2015年発売のデジタル一眼レフNikon D5500のCMを観た。俳優小栗旬さんの子供役だったがほんとにかわいらしい子供で、こりゃ撮りたくなるわ、特におじいちゃんとか!という感想。にしても人間の子供の成長はすごい。因みに前職のお店でこのカメラを販売していました。
私はあの頃とあんまり変わっていませんw。

・放映が終わって
あの時目の前で起こっていた撮影が実を結んだカタチがこうなったのか、と5月初旬の撮影から7月頭からのオンエアから9月後半に迎えた最終回を見終わって。少しだけ霞始めたロケの記憶が最終回のシーンで蘇る。
脚本の構造は、台本をもらって読んで知ってはいたものの、いざオンエアになってみると各話の監督の演出調整で多少変更があり、かつ台本から想像したイメージとは少し違ってセリフや物語の流れが全体として息が吹き込まれたように走り始めた。
物語には伏線回収という構造があって、そこが解り難くかったり、回収できていないエンディングだと、見てる方としてスッキリせず、その物語全体のインパクトが薄まってしまって印象に残らないことも多い。過去に見た昔の邦画なんかで中盤までインパクトは強いがエンディングで訳わからないとかつまらなかったために広告で使うインパクトの強い部分しか思い出に残らなかったり、時にはタイトルすら忘却する残念な作品も多く見てきた。
今回のドラマ「カメラ、はじめてもいいですか?」については伏線回収をきれいに明るく落としていたのがまず好感が持てた。主人公の内向的な性格やその原因とみられる家族関係で最初の方はこの先どうなるのか心配なくらいちょっと暗めな展開もあったので、SNSのコメントを見ていると最初の展開は見ていて辛かったとの感想もあったけれど、後半に差し掛かって主人公・池田ミトが勇気を出して現状を変えていく一歩を踏み出したあたりから物語は好転し始める。
引っ込み思案で自分の世界に閉じこもっていることに安息を得ていた主人公が一人暮らしを始めて学校ですら引きこもり始めた時、偶然の隣人との出会いをきっかけに出会いが連鎖していく。
そして自分自身を徐々に客観視することができ始める。そうすると周りの人の視点にも気を配るようになり、好きな人のために自分の殻を破って出なければならないという強い意志が初めて生まれた。
そんな主人公の成長によって、複雑な家庭環境を作ってしまった家族をも主人公の前向きな若さに救われる。
偶然に出会った隣人もまた社会の中で主人公と同じように自分の殻に閉塞しがちな状況を主人公と関係を持ったことにより救われる。その出会いの中で知り合った友人たちもコミュニケーションの幅を広げ刺激を受けていく。
そのきっかけの軸に「カメラ」という道具が大切な役目を果たした。
そして最終回のオチに綺麗に昇華していく。
こういう物語を見ると脚本の上村奈帆さんのこれからの作品も楽しみだ。
もちろん、関わった他の監督さん、俳優さん、スタッフの皆様の今後の活躍も楽しみだ。

作品に関わった全ての皆様、貴重な経験をありがとうございました。
あらためて御礼申し上げます。

2024年1月3日校了 
カメラのヤマヤ 店主:浅野 毅











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