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星空のロマン

小学生の時、一冊の本が目に止まり、読書嫌いだった私が食い入るように何度も何度も読んだ本がありました。

関 勉氏著 「星空の狩人」


関さんは知る人ぞ知るコメットハンターであり、1960年台に6個の新彗星発見、その後、周期彗星の再発見23個、小惑星発見223個という成果を出された伝説の方です。

その関さんの彗星発見物語を書き留めた一冊です。

彗星は果てしない宇宙のどこからか旅して、たまたま太陽の引力に引き寄せられた宇宙の旅人である。

時には太陽系が気に入ったのか、周期彗星となり、何十年という周期で太陽を回るものもいれば、放物線を描いて、また果てしない旅に出るものもいる。


なんてロマンチックな話ではないか!

幼い心に響き、完全に魅せられてしまったことを覚えている。

彗星は、どこからやって来て、どこにいるかもわからない、いつ来るかもわからない。

その彗星を、毎日早朝に眼視でサーベイしていくコメットハンターの物語が描かれているのが、この一冊である。

彗星捜索用の望遠鏡の話や師匠であるレジェンド本田実氏、ライバルであった池谷薫氏の話、そして発見時のドタバタ劇など引き込まれずにはおれない内容でした。

小学生だった私は見つかるわけもないのに、6cmの小さな望遠鏡で薄明前の早朝から捜索の真似事をしたものだ。

今となってはかわいらしい頃もあったんだなと思う。笑


そんな夜空ばかり見上げていた少年は、ある日、白鳥座の形がおかしいことに気づいた。
「ん?これはもしや新星?」

大急ぎで位置を調べて、いざ東京天文台に電話しようと受話器を握ったその時である。

テレビのニュースで同じく小学生が
「白鳥座に新星発見!」と報じられた。

当時はネットも携帯もない時代。情報収集はテレビとラジオしかない。

「あー、昨日星見ておけば!」と地団駄踏んだことは今でも新鮮に蘇る。


彗星ではないがロマンに溢れているではないか。
これが彗星なら何10倍も興奮したことだろう。

今でも天体観測は続けているが、やはり彗星となると最も心が躍る。

21世紀になり新彗星捜索は個人で眼視捜索している人はほとんどおらず、公的機関が撮影した画像が公開され、望遠鏡を覗く代わりに、PC画面でぬくぬくと捜索できる時代になってしまった。

なんとも夢のないお話しである。

しかし、彗星はやっぱりロマンの塊だ。
「君はどこから来て、どこに行くんだい?」
思わず声をかけたくなる。

彗星の正体は「汚れた雪だるま」と呼ばれ、脆いものです。中には、太陽の熱でバラバラに破壊されるものもいます。

これもまた、儚さがあり、無事に太陽を回ってくれと願ってしまいます。

私を彗星好きにした名著「星空の狩人」は、今では絶版となりました。
残念ですが、幼い頃にこういう夢のある著書に巡り会えたことが、私に興味と幸せを与えてくれました。

関さんは89歳にしてまだまだご健在なようです。
たくさんの夢をありがとうございます。