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スコーン

家にいることが多くなった。
外の、いわゆる飲食店だとかデパートだとかはすべて閉まっていた頃。
ふと、スコーンが食べたくなった。
元々特別スコーンが好きなわけでもないのだが、急に食べたくなったのだ。
とは言っても飲食店は閉まっているし、不要不急の外出は避けるようにも言われている。
ようし。いっちょ自分で作ってみるか。
そう思い立った。

そうは決めながらも重たい腰はなかなか上がらなかった。
スコーン食べたいようと思いながら3~4日行動に移さないでいた。

でもやっぱり、スコーンが食べたい。
うん、この気持ちは嘘じゃない。そう確信した私は今度こそ、スコーンを作るべく材料を用意した。
ホットケーキミックス、バター、牛乳。
これを混ぜて焼くだけ。
正直、こんな少ない材料でおいしいスコーンが作れるのかと半信半疑だった。

とある日の午後、私はついにスコーンを作り始めた。
家にある適当なボウルに適当なザルでホットケーキミックスをふるいにかける。
ザルのチョイスを間違えたのか、なかなか思ったように粉が下へ落ちていかない。
頑張ってふるうのだけど、頑張りすぎて用意したボウルからちょいちょいホットケーキミックスがこぼれてしまった。
そして、私のルームウェアにまで粉がついてしまう始末。
しまった、エプロンすれば良かった。そう後悔しながらもひたすら粉をふるった。
150gを終えたところで残りの50gはふるうのを諦めてそのままボウルにぶち込んだ。
分量があってりゃいいのさ。

バターを入れて、混ぜて。
牛乳を入れて、ひたすらこねた。

結構粉っぽさが消えなくて、あれ、失敗したかな。
そもそもスコーンなんて作ったことないしな。
美味しくできなくて両親に笑われたらレシピをネットに上げた人のせいにしよう、などと言い訳まがいのことを考えながらひたすらこねていた。

すると、生地はだんだんまとまるようになった。
しかも手でこねているとすごく気持ちがいい。
さっき考えていた言い訳なんてすぐどこかへ消えて、材料が混ざった、少し甘いにおいと、もちもちした生地の感触であぁ、楽しいな。なんて思うようになっていた。

オーブンを予熱にかけて、まとまった記事を8等分しているときに母がこんなことを言ってきた。
え?三角形なの?
私も思ったよ。想像していたのは丸い、アフタヌーンティーで、あのお皿が三段のおしゃれな感じで出てくるスコーン。
でも、ホットケーキミックスで作るスコーンは皆三角形で作っていたんだもの。
そういうところ、レシピ通りじゃないと美味しくならないんじゃないかとかよくわからない融通の利かなさが出てしまうのが私だ。
スタバのスコーンは皆三角形だよ。
なぜかわからないけれど、スタバの名前を出せば納得してくれると思った。
私はスコーンがおいしく出来上がればそれでいいのだ。
後は焼くだけ。ゆっくり待ちましょう。

私がスコーンづくりに没頭している間、風呂に入っていた父が出てきた。
ミニクロワッサン作ってるの?
どっからミニクロワッサンを想像したのだろう。
ミニクロワッサンじゃなくて、スコーン!!
そう答えると
お父さんスコーンなんて知らないよ。と少ししょんぼりされた。
どうやら父はパンが食べたかったらしい。
焼きあがったスコーンは予想以上に美味しく焼きあがっていた。
焼きたて、夕飯前、寝る前に一つずつ食べた。
うんうん。初めてにしては上出来。

人生初スコーンを食べた父は一言、
生地の味しかしないね。と言った。

次に作るときは、チョコレートでも入れてあげよう。

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