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モノを大切にするということ

 私は俗にいう「物持ちのいい人」です。つい1年前までは、小学生の時に母親から温泉旅行のお土産を大事に飾っていましたし、進学して全寮制の学校に入学した時に揃えた爪切りが今年まで現役でした。20年以上活用されたこの爪切り、流石にテコの原理になる支点の部分がすり減って切りづらくなっていました。

 そんな私ですから気に入ったモノを買うと大切に使います。ですが問題は気に入りすぎたモノの扱いです。過ぎる想いは何事も本来あるべき道をはずしやすく、そのためお互いに幸せではありません。何故なら大切過ぎて活用は愚か、仕舞い込んで手にもるのも1年にあるかないかの状態になるからです。それぞれモノには役割があり、活用してもらうことで持ち主に色々な意味での『悦び』を与える目的もあります。しかし私の様に仕舞い込んでは、この世に生まれ出たモノが役割を果たせません。また持ち主もお気に入りのもので『悦び』を得るはずだったのに、活用しない為に『悦び』の他使い心地や楽しさなど様々な恩恵を感じることができません。そういう意味でどちらも幸せではないのです。

 手放して来たからこそ分かるのですが、これはモノに限った事ではないと感じる様になりました。先日それを痛感する出来事を体験しました。
 占星術では昨年まで『地』の時代と呼ばれていました。あくまでも私の感覚ですが、人と違う生き方は良しとせず、皆と同じが正しい道という考えたかだった様に思います。しかし今年からは『風』の時代へと移行し、社会全体的な概念が変化し始めました。多様性…それぞれのカテゴリーの中で、様々な方向性や捉え方があり、互いを尊重しつつ自分を表現する生き方、とでもいうのでしょうか。それを争いなく実現するには、まずお互いの違いを認めることから始まります。そこが出来なければ、ただ不毛に争うだけとなり、いつまで経っても交わることはできません。先日の出来事がまさにそれでした。

 ある事柄を処理せねばならず、今までの慣例で処理できないねと言う事に話はまとまっていました。しかし私は何かモヤモヤとしたものがあり、期日の数日前ですが『慣例の期日で処理しませんか』と自分の考えを伝えたのです。意表をつく提案に相手が驚くのは無理もありません。突然の翻意は良くないと言われました。言われていることはその通りですし、私もその気持ちはわかります。立場が反対なら当然私も同じ事を言ったに違いありません。しかしこれからの時代は、何かを成し遂げるために誰かが我慢する時代ではありません。お互いの意見を交換し、納得して前に進む時代へと移行したのです。意見があるのに伝えない事は、逆に社会貢献をしない事になります。
 ここで大切なのは、私は自分の意見を必ず通そうとは思っていない事なのです。ただ自分に偽りなく、意見として自分の思いや考えを伝えたかっただけなのです。私が経験して来た職場は、議論をすることが多かったので、反対意見が出ても割と冷静に聞く訓練はできていました。しかし相手はそう言う経験が少なかった様で、決定した内容とは異なる意見を一度考えてみてはもらえないだろうか、と言う提案さえ『突然言われても返事はできない』と言う結論でした。

 目に見えるものも、見えないものも、どちらもずっと手放さずに手元に置いておくことは『大切にする』事なのだろうか? 結論として、ただ手元に置いておく事=大切にするではないと言う事です。目に見えるものはもちろん、見えないものも手放して行かなければ、心の中に溜まって腐り始めてしまいます。楽しい思い出はそのまま手元に置いておいても、時間と共に昇華し澱のように心の奥底にたまる事はありません。しかし後悔や悲しさなど楽しくない思い出などは、手放していかないと心の中にどんどん溜まって腐敗して行くのです。

 先日の出来事は、決行直前にスタート地点に戻される不快感はあったと思います。しかし結果はどうであれ、一度相手の意見を受け止め、熟考しても問題はなかったのではないかと思います。再考してもやはり以前決定していた方が良いと言う判断であれば、それを素直に伝えれば円滑に行くのではないでしょうか?時間も手間もかかりますが、これからはこの様な手間暇を惜しまず丁寧に生きる事が大切になると感じます。今までは何事も波風立てず、同調して生きて行くと言う生き方でしたが、これからはそれぞれの個性で補い助け合う生き方です。自分の意見だけや今までのやり方に囚われていると、どんどん世間が狭くなって行き取り残される可能性が高くなります。

 これからの時代のスタートラインに立つために、目に見えるもの、見えないもの全てに置いて、整理整頓は定期的にする必要があるのです。まぁそもそもは、招き入れる前の段階で査定を始め、受け取るのか否かを決めるのが肝心なのですけどね。
 さぁ時間は有限ですから、今から一緒に訓練して行きましょうね。そして『お気に入り』は沢山活用してお互いに悦びを掴みましょう。それが『大切にする』という事なのですから。

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