見出し画像

『@ホームルーム』~あっ!と驚くクラスづくり~

目次

1 子ども達を救いたい!

2 アットホームな「@ホームルーム」

3 居心地のよいクラスづくり

4 あっ!と驚くクラスの挑戦日記

 学級経営では、子ども達の「所属感」を大切です。

 この「所属感」は、「自己有用感」や「自己肯定感」などの¨自尊感情¨を育んでくれるキーセンテンスと言えるでしょう。

 私はこの「所属感」を最重要と考える「@ホームルーム」という学級づくりを目指しています。

 名前の由来は、家庭的で居心地がよいという意味の「at home」と学級の時間という意味の「ホームルーム」を合わせたものです。また、「at」の部分はお洒落な見栄えになるようにアドレスで使われる「@」にしました。(実際にお洒落かどうかはさておき…)

 その「@ホームルーム」について私が担任した6年生のある学級をもとにお話をします。


1 子ども達を救いたい!

 学級の中には、困難な課題を抱えた子どもがいます。低学力や問題行動、不登校やネグレクトなどその課題は多様で複雑です。その子達にとって学校は「行きたくない」「つまらない」場所でしょう。しかし、小学校が義務教育である以上は学校に通うという事実からは逃れられないのです。

 好きでも嫌いでも結局学校に通うことに変わりないのであれば、どうせなら「好きで通いたいと」誰しもが思うはずです。しかし、そうは思えない理由があるから「行きたくない」「つまらない」場所なのです。

 では、学校が心休まる「居心地のよい場所」だったらどうでしょうか。もしそんな学校をつくることができれば、子ども達も自ら進んで「学校に行きたい」と思うのではないでしょうか。

 そんな学校づくり目指して、我々担任が担う最大の使命は子ども達が「行きたい」と思える学級づくり「アットホームな学級=@ホームルーム」をつくることなのです。


2 アットホームな「@ホームルーム」

 それでは、「@ホームルーム」とはどんな学級なのか。それは、「相互理解」と「仲間意識」のある学級です。

 一つ目の「相互理解」とは、お互いの長所や短所を理解しているということです。「@ホームルーム」にとって、まずは子ども達同士がお互いのことを深く理解していることが大前提です。特に、ここでポイントなのは長所だけではなく、短所も理解するということです。

 一般的に学級経営では、一人ひとりに活躍の場を与え、みんなから認めてもらうことで「所属感」を育むことが多いです。しかし、長所より短所が多い子や一つの短所が大きい子にとってはそれは叶わぬ夢です。

 私が目指しているのは、お互いの短所も理解した上で、自分の長所を生かし、他の誰かの短所を支え合える学級づくりです。

「相互理解」の先には「相互作用」があります。さらにその先には、「相乗効果」が期待され、お互いに支え合い切磋琢磨する学級の姿があります。

 二つ目の「仲間意識」とは、学級は「チーム」であり、みんな「仲間」だという意識のことです。

 私は始業式に子ども達に対して「このクラスに居るのは友達じゃなくて仲間だよ。」「みんな仲間だから、仲が良い悪いは関係ない。みんな平等に関わり、助け合うこと。」ということを必ず話します。

 子ども達は「友達」になることは上手だが、「仲間」になることは苦手です。私が思う「友達」とは、趣味一緒で放課後もよく遊ぶ人のことです。しかし、学級にはそういう人ばかりではありません。中には「初めて同じ学級になり、一度も話したことのない子」や「ちょっと苦手な子」も正直いると思います。

 様々な関係の人たちが集まるのが「集団」です。そんな集団の中で「友達付き合い」を認め、続けていると学級の中でいくつかの小グループに分かれてしまい、お互いに避け合ったり、敵対してしまったりもします。また「〇〇さんには優しいけど、××さんには冷たい」という差別も起きます。そうなってしまった学級は「@ホームルーム」ではありません。

 だからこそ大事なのは「仲間意識」なのです。誰とでも協力し合い、助け合い、励まし合える関係をつくり、「チーム」として成長させていくこと。そうすれば、さらに子ども達の「所属感」は高まり、学級が「@ホームルーム」へと変わっていきます。


3 居心地のよいクラスづくり

 「@ホームルーム」はどのようにしてつくられるのか。私が日々実践していることをいくつか紹介します。

<子どもは担任を映す鏡!>

 子ども達はよく担任の言動をチェックしています。「先生はどんなことを話すのかな」「どんな考えを持っているのかな」とアンテナを高く張り、日々観察しています。一緒に学校生活を送っているといつの間にか子ども達の言動が「自分と似てるな」と感じることがあります。それぐらい担任は子ども達にとって影響力のある存在なのです。

 私は春休みに子ども達に会う前に必ずチェックすることがあります。それは、低学力や問題行動など課題のある子です。そういう子は、これまでに集団の中で自然とレッテルを張られ、避けられることがあります。特に、6年生なっても張られているレッテルはより強固なものでしょう。

 始業式の日には、まず真っ先にその子に話かけます。しかも、他人行儀に丁寧に話しかけるのではなく、「ずっと前から大親友だよね」という調子で話しかけます。(もちろん、話しかけた子の反応が薄いこともありますが)しかし、担任とその子が会話したという事実。さらには、凄く仲良さそうに会話してるというインパクト。その出来事を演出することで、「みんな平等だよ」という無言のメッセージを送り、子ども達の中でも「今年は違うぞ」と意識の転換が起こるようにします。

 もちろん、その日だけではなく継続的な関わりも大事です。初日だけの関わりでは、子ども達に「なんだ最初だけか」と思われてしまいます。

 その他の子ども達に定着するまで、担任が関わり方の「お手本」を示すことで学級の意識や思考は劇的に変化し、課題のある子への関わり方も変わり始めます。

<授業は助け合い!>

 子ども達に「授業中にすること」についてアンケートを取った時の話です。回答には、「書く」や「聞く」などの基本的なものもありましたが、一番印象的だったのは「助け合い」と書いてあったことです。

 私はどの授業でも「教え合い」を取り入れています。計算問題の解き方を教え合ったり、開脚前転が上手く回転するコツをアドバイスしたり。

 なぜそんなにも「教え合い」にこだわるのか。そこには、二つの理由があります。

 一つ目は、限定された教科だけ取り入れると、いつも決まった子しか活躍しないからです。子ども達の得意なことは様々です。計算が得意な子もいれば、運動が得意な子、絵が得意な子。しかし、教え合いの活動が仮に算数だけだとしたら、計算が得意な子しか活躍しない学級になっていまします。

 様々な子が活躍できるようにするには、活躍の機会を沢山つくってあげることが大切です。思わず教師が教えてしまいたくなることも、まずは子ども達に任せてみてください。そうすると「我こそは」と活躍の場を求めてやってくる子が必ずいるはずです。

 二つ目は、子ども達がもっている「共通言語」を活用するということです。私は常々、子ども達には独自の「共通言語」があるのではないかと考えています。それは、具体的な言葉ではなく、心と心が通じ合う「以心伝心」のようなものということです。

 これまでにも、私が丁寧に理論立てて説明するよりも、子ども達同士が「共通言語」を通して教え合うことで遥かに効果があると実感した場面が数多くありました。

 また、この「共通言語」は使えば使うほど研磨され、効果があがるという特徴もあります。「教え合い」もやればやるほど、上手に教えられるようになったり、より高度なこと教えられるようになったりもします。

 さらに研磨され「阿吽の呼吸」の域に到達すれば、その学級「@ホームルーム」の完成形とも言える状態です。

 もちろん、最初は失敗することの方が多いです。しかし、繰り返し取り入れていくことで子ども達に浸透し、馴染んでいくことで徐々に効果が発揮されるようになってきます。

「@ホームルーム」のゴールは、一年間という長い道のりの先にあります。すぐに諦めてしまわず、子ども達を信じてゆっくりと歩んでいきましょう。


4 あっ!と驚くクラスの挑戦日記

<おかわりルール改革>

 私は学校のルール以外に学級のルールをあまり作らないようにしています。それは、学級は「子ども達のもの」であり、教師の都合で統治されるものではないと思っているからです。しかし、ルールがないと生活に困ります。困った時に子ども達は初めて「ルールの大切さ」を実感するのです。

 ある日、女の子が「私、いつも食べるの遅いからおかわりができない」と訴えてきました。(おかわりにもルールがなかったので、自然と早い人からおかわりするシステムになっていました。)

 そこで、みんなですぐにクラス会議を開き、話し合った結果「おかわりルール改革」が始まりました。

 子ども達が考えたのは、おかわりを「事前予約制」にし、予約した人は必ずおかわりできるというシステムでした。例えば、ご飯のおかわりが5人だとしたら、残ったご飯を始めに5等分しておきます。一人当たりの量は予約の人数が多くなるほど少なりますが、そうすることで「全員がおかわりできる」という利点が支持され、採用されました。

 「おかわりしたい人全員がおかわりできるように」と始めた改革でしたが、気づくと予約の人数がそれぞれ品目で10人を超え、結果としておかわりする人も増えるという一石二鳥の効果もありました。また、改革のおかげで残飯は毎日のようにゼロになるようにもなりました。

 少数派の困り感もみんなで解決していく。「@ホームルーム」の効果が発揮された出来事でした。


<一人の才能がみんなの役に立つ!>

 冬になると必ずやってくるのが掃除の時の「冷たい水問題」です。しかし、私の学級ではそれも解決してます。なぜかというと、ある女の子が制作した「手作り湯沸かし器」があるからです。

 それは、2リットルのペットボトルに黒色のスプレーで全体をコーティングします。そのペットボトルに水を入れ、半日ほど日光に当てておくと冷たかった水が自動的に温まるという優れものです。

 その子はそれを学年をまたいで使い続けていて、今では他の学年や学級でもシェアされる大ヒット商品になりました。

 その子は、冬の「冷たい水問題」を解決したみんなのヒーローになりました。


<弱い自分に負けるな!>

 6年生になると勉強は何倍も難しくなります。特に、前の学年までの積み残しがある子にとってはとてもついていけるレベルではありません。中には、授業中に無気力になったり、「もう無理」と弱音を吐いてしまう子もいます。

 そんな時、私の学級では必ず誰かが「頑張りなよ」「ちゃんとやって」と愛のむちをを入れてくれるのです。なかなか頑張れない子には、かなり強い激励が飛ぶこともあります。(よく寝てしまう男の子に対して、隣の女の子が「私が寝かせないから」と言っていたは衝撃的でした。)

 しかし、ただ激励するだけではなく、必ず激励した子がサポートに入って、その子ができるようになるまでとことん付き合ってくれます。

 「仲間」に対して親のような愛情を持てるのも「@ホームルーム」の特徴だと思います。


 長々と綴ってきた「@ホームルーム」ですが、まだまだ書きたいことが山ほどあります。

 「@ホームルーム」は進化が止まることはありません。なぜなら、そこには子ども達の「成長したい」という思いや願いがあるからです。

 誰かの思いや願いににみんなでとことん付き合う。その思いや願いが達成されるとその子はもちろん、支えたみんなも成長する。そして、また誰かの新たな挑戦が始まる。

 毎日ワクワク、ドキドキする学級経営。

 皆さんもしてみませんか。

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?