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Vol.75#挑め!Leading Article/もりでいちばんつよいもの

今日のテーマは”大ヒット絵本25周年”です。

🔹🔸このコラムでは毎朝その日のLeading Articleから解釈の決め手となる語句を3つ選んで解説していきます。定着させて英語を読む事がどんどん”楽”にしていきましょう🔹🔸

”The Gruffalo”は英国の作家ジュリア・ドナルドソンによる大ヒット絵本作品です。邦題は”もりでいちばんつよいもの”で、子供に読んであげた事がある方も少なくないでしょう。
作品は弱者ながらも小賢しいねずみが窮地を切り抜けようと口をついた怪物が実際に現れてしまうという意表をついたストーリー展開でベッドタイムの子供達を惹きつけます。
そんなストーリーもさることながら韻を多用する文体は読み聞かせる親も楽しめるものです。シェイクスピアからOasisに至るまで韻文は英国人の大好物なわけですが、口に出して読み上げてみると感じられる音の楽しさは文化に限定されない楽しさがあるのでしょう。ややもすると面倒に感じる子供への読み聞かせを楽しいものに変えてくれる素晴らしい作品です。

恐怖のグラファロさんです

ネタバレに注意しながら、読み進めていきましょう。


◎今日のLeading Article:Beauty of the Beast

A much-loved storybook monster is celebrating its silver jubilee

“The Gruffalo? What’s a Gruffalo?” “The Gruffalo? Why didn’t you know? Everyone’s read the Gruffalo!” Well, maybe not quite everyone but even so, the addictive cadences of Julia Donaldson’s blockbuster children’s book are familiar to millions the world over. First published 25 years ago, The Gruffalo, illustrated by Axel Scheffler, has sold almost 12 million copies worldwide and appeared in 107 languages, including renderings as Gharfoul in Arabic, Morko in Finnish and An Garbhan in Irish. Despite totalling only 700 words, Donaldson’s masterpiece has led to a film, a musical, a game, woodland trails and theme park rides.

One in eight parents say The Gruffalo was the first book they read to their child. And, no doubt, reread many times, not just for the entertainment it provides to the youngster under the duvet, but also for the pleasure the hypnotic rhyming couplets give to the reader. Bedtime recitals can (whisper it) sometimes be a chore for mums and dads, eager to unwind in adult company. When The Gruffalo is requested, however, the ritual is anything but onerous. Rarely has dactylic tetrameter been so thrilling, and yet so pleasantly soporific. A classic (spoiler alert!) triumph of the underdog twist, inspired by an ancient Chinese folk tale.

Donaldson’s 210 titles have sold 45 million print copies, making her personally worth an estimated £85 million and earning a small fortune for British exports and the exchequer. She is, in both senses, a national treasure, an author whose domination of the children’s picture book market has been likened to the pre-eminence of the Beatles in their era, not just for her popularity and brand recognition but for the way she continues to experiment and develop her craft.

Donaldson took two weeks to write her fable, a fortnight well spent. We wish her most famous creation a very happy 25th birthday.

□解釈のポイント■■■

①blockbuster/大ヒット作

元々は高性能爆弾で街の一区画(block)を吹き飛ばす威力を示す恐ろしい言葉でしたが、映画業界の用語になり大ヒット作品の意味となりました。

1200万部というのもすごいですが、25年間売れ続けるという息の長さも驚愕に値します。

②dactylic tetrameter/強弱弱四歩格

1行に4つの詩脚がある詩を四歩格といいます。具体例としてはビートルズのLucy in the sky with diamondsです。Picture your // self in a // boat on a // river with この特徴を持つ詩は読み上げるとワルツのようなリズムとなるとのこと。

可愛い子供たちへの読み聞かせなわけですが、時間帯の事もあり親にとってはしんどい日課の一つだったりします。それを韻文の力で親も楽しめるものに変えるという画期的な絵本だったのですね。詩は声に出して読み上げてなんぼですから、読み聞かせというのは詩文にふれる一つの良い機会なのかもしれません。

③spoiler alert! /ネタバレ注意

物語や映画の結末を読む前から言われちゃったら面白くなくなります。物語をspoilする(だいなしにする)ものだと警告しますよ!という言い回しです。

ねずみの大逆転は初めてこの話を聞く子供にとってははらはらどきどきの展開なわけですね。文中の中国の民話に発想を得てというくだりは”虎の威を借る狐”でしょう。

■試訳

広く愛される絵本のモンスター、生誕25周年を迎える
”グラファロ?何だろ。グラファロ?”
”グラファロ?知らぬ事なかろ。皆読んだろ、あのグラファロ”

皆とは言わないまでもJulia Donaldsonの大ヒット絵本の癖になるリズムは世界中の何百万人もの人に知られている。25年前が初版で、Axel Schefflerによるイラストが載ったグラファロは世界中で約1200万部を売り上げてきた。107の言語に翻訳され、アラビア語ではGharfoulmフィンランド後ではMorko、アイルランド語ではGarbhanと呼び名を変えている。合計700語であるにも関わらず、Donaldsonの傑作は映画、ミュージカル、ゲーム、林道、テーマーパークの乗り物になっている。8人に1人の親がグラファロが子供に読んだ最初の本だと回答している。そして、疑いないのは何度も読んだという事だ。小さい子供たちにとって羽布団をかけられてからの楽しみであるだけでなく、読む親の方も催眠効果のある韻が用いられた対句で楽しむ事ができる。就寝時の朗読会は父親、母親にとっても面倒な仕事(こっそり言う)となる場合がある。大人どうしゆっくりしたいのだ。ところがグラファロがリクエストされると、その儀式は途端悪くないものになる。 強弱弱四歩格にこれほどまでスリルがあり、心地よい眠気を誘うものであった事はなかった。ネタバレ注意だが、弱者が急変し勝利を収める古典的な話は古代中国の民話に発想を得たものである。Donaldsonの210本の作品売り上げは4500万部に達した。これにより彼女の個人資産は8500万ポンドとなり、英国の輸出と国庫にとってちょっとした収入をもたらした。彼女は英国にとって名実ともに宝であり、この子供絵本市場を独占する作家は往時の卓越したビートルズになぞらえる。彼女は人気がありブランドとして認知されているからだけではなく、実験し技能を開発しつづける様による。Donaldsonは物語を執筆するのに2週間をかけたわけだが、この時間は実に有益なものとなった。有名な創作に生誕25周年にお祝いを言わせて頂く。

◇一言コメント:

グラファロには続編の”グラファロのおじょうちゃん”というのがあるそうです。大きなヒット作に満足する事なく、ドナルドソンさんはこの25年間継続的に新作を発表しつづけています。冒頭にでてくるwoodland trails(林道)の名前になったという部分はそんな続編のひとつ”stick man(邦題:こえだのとうさん)”の名前にちなむ林道、stickman trailのことです。
このように継続して取り組むものに出会い、創作物が多くの人に愛されるというのは幸せな事と思います。
同じく韻文の巧者、Oasisも未だに歌い続けています。若さや流行というものに後押しされるだけでない芸の文化こそが英国の至宝なのかもしれません。

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