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”らしくない”ドイツ人と停滞する経済

ドイツ人の勤勉さ、激務を厭わない気質は戦後復興、経済発展を支えるものでした。ところがパンデミック以来仕事と生活のバランスを見直す風潮が強まる中で、欧州最大にして最強の工業国ドイツの様子が少しおかしいようです。

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◎”Clocking Off”(退勤したその後に)

ドイツ人にとって長らく勤勉は美徳とされ、市民の義務とされてきました。余暇を楽しむなどどこ吹く風、長時間かつ生産性の高い労働によって(①be predicated on)戦後復興、経済成長を実現し東西統合や欧州債務危機などの窮地を乗り越えてきました。

ところが、昨年の平均的なドイツ人の労働時間は1343時間にとどまりました。週5日制で休暇が5週間とすると1日6時間にしかなりません。一体どうしてしまったのでしょうか。しかも、平均19.4日の傷病休暇を取得しており、その少なくとも4分の1が仮病という分析まであります。こんな事をしているうち経済成長率は無きに等しく(②nugatory)0.1%見込という事になってしまいました。

こうしたドイツ人の労働観念が変化した背景にはパンデミックを契機に労働と生活のバランスについて見直しをしたからだとされています。しかし、その効果も芳しいものではないようです。幸福度ランキングをみるとドイツは昨今の休暇への目移り(③flirtation)にも関わらず、前回の17位から24位に順位を落としてしまっています。休みはドイツ人を幸せにしなかったのでしょう。

どうやら休暇をとり幸せを感じる事はドイツ人の得意とする所ではないようです。お隣のイタリア人たちはその点については卓越した能力を発揮します(明らかに仕事以上に)。誰しも得意な事をするが一番です。休暇は他の国に任せて、ドイツ人は”らしく”あるべきなのかもしれません。

□本日のポイント■■■

①be predicated on/〜による

be based onと同じ意味になります。文法用語でpredicateは述語ですが、これとは異なる語源で意味が違う感じになっています。

🔳 German prosperity and commercial success was predicated on the willingness of its workforce to put in a long, dedicated, productive shift.

(試訳)ドイツの繁栄と商業的な成功は長く献身的にかつ生産性の高いシフトをこなす気概に満ちた労働者があってこそのものであった。

②nugatory/無きに等しい

ラテン語で冗談にしかならないという意味の言葉がルーツです。無価値だという事です。同じ様な言葉にtrivialというのがありますがこちらはより口語的、一般的です。

🔳 And indeed, the German economy has been notably sluggish since the pandemic, with growth this year forecast at a nugatory 0.1 per cent.

(試訳)そして、実際にドイツ経済はパンデミック以来停滞が顕著であり、今年の成長予測は0.1%と無いに等しい水準にとどまっている。

③flirtation/目移り

異性に対してちゃらつく事をflirtingというそうです。姿勢としては親密なものですが、あまり本気ではないというのがflirtingでナンパほど成果にとらわれず口説きほど真剣でないという訳にこまる単語です。ドイツ人もそこまで真剣に休暇を大事にしようとは決めているわけでなく、一時的に気持ちが向いているという感じでしょうか。

🔳In the latest World Happiness Report, despite their new-found flirtation with downtime, Germany had slipped to 24th place, down from 17th five years ago.

(試訳)最新世界幸福度調査によれば、ドイツ人たちが昨今休暇に目移りしているにも関わらず、5年前の17位から24位に転落しているのだ。

◇一言コメント

Clocking offという言葉はタイムカードを押して退勤処理をする事ですが、イギリスの工場を舞台にしたドラマ話題作のタイトルでもあります。2000年から2003年の間、4シーズンに渡って放映された作品で英国の工場を舞台に仕事とプライベートの間で悩む登場人物を描いています。退勤した後にあまり幸せを感じられていないドイツ人、心は工場にあるのかもしれませんね。
国民性に関する固定観念(stereotype)は欧州人の大好物ですが、案外一理あるんじゃないの?という話でした。こういうドイツ人への冷やかしもまた英国人の典型的な言説ではあります。

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