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Vol.59#挑め!Leading Article/モハメドアリへの挑戦?

今日のテーマは”スポーツと比喩”です。これでもかと言わんばかりにスポーツ比喩が出てきますよ。

🔹🔸このコラムでは毎朝その日のLeading Articleから解釈の決め手となる語句を3つ選んで解説していきます。定着させて英語を読む事がどんどん”楽”にしていきましょう🔹🔸

有名フットボールチームのユース組織で比喩(空に飛び立つジェット機のように走れ)を用いて短距離走の指導を行ったところ、全体のパフォーマンスに3%改善が見られたそうです。指導内容を頭で考えて実行しているうちは動きはぎこちないものにとどまりますが、比喩を用いてイメージで身体が動くようになるとパフォーマンスが劇的に向上するという事でしょう。これはアスリートが競技に関係しないものを使った比喩で技能を向上させるという話ですが、我々一般人は逆に彼らが取り組む競技を用いた比喩が大好物です。職場では管理職が部下達にスポーツの比喩を多用し檄をとばし、昨年は政府の高官までもがパンデミックに関する記者会見の場でフットボールの比喩を連発して顰蹙をかいました。

クリケット、ボクシング、競馬とスポーツに関する言い回しがたくさん登場します。確認しながら、読み進めていきましょう。


◎今日のLeading Article:Sprint Like a Jet Plane

“Float like a butterfly, sting like a bee”: Muhammad Ali’s synopsis of his strategy in the boxing ring echoes through the ages as one of the great sporting metaphors. He was on to something. According to a new study, a well chosen analogy can be the key to victory for a competitive athlete.

When coaches used the right kind of analogies with teenage footballers at Tottenham Hotspur’s youth academy, it boosted their sprinting speeds by 3 per cent. “Sprint like you are a jet plane taking off into the sky ahead” is, apparently, the model instruction: the key is to use analogies that tell the athlete what to do by focusing their attention on their external environment, not their body, thereby reinforcing the mental processes for “automatic” movements and avoiding overthinking.

There is an irony in the revelation that athletes improve their performance by using analogies from outside sport, when everyone else has been addicted to using sporting analogies in their own lives. Who has not been told by their manager, when on a sticky wicket, that their job is to take the gloves off and pull no punches, because the competition need to be put out for the count? Is there any more helpful professional advice than to get off the sidelines and get the ball rolling (which is to be done without taking one’s eye off the ball, and certainly without dropping it)?

It is no wonder that Sir Jonathan Van-Tam, then deputy chief medical officer, so often reached for (now notorious) football analogies in pandemic press briefings. The development of the vaccine was like going one goal up at the start of a penalty shoot-out, the success of the vaccine roll-out like scoring an equaliser in the 70th minute, and the arrival of the Omicron variant like getting two yellow cards. He could give Ali a run for his money — and perhaps the coaches of the young jet planes at Tottenham, too.

□解釈のポイント■■■

① synopsis/要旨

長い本や論文の要約の事です。一度に全てを見るというギリシア語が起源だそうです。
モハメドアリのボクシング戦略を蝶と蜂という一言で表現してしまう比喩のパワーですね。そうか蝶のようにか!と言ってできれば苦労しないわけですが。

②be on to something/何か大事なものを掴んでいる

良い点に気がついている、何かを掴んでいるという事です。I think you're onto something.(君はいいところに気がついたと思うよ)の様に使われます。
モハメドアリはボクシングの”何か”を確かに掴んでいたのでしょうね。それを言葉を尽くして説明するのではなく、蝶と蜂という比喩で表現していたのでしょう。

③give someone a run for his money/健闘する、互角に張り合う

格上の相手に対して良い勝負をする、互角に張り合って良い試合をするという意味です。このお金は何かというところですが、起源は競馬にあるようです。競馬の賭け金に見合う良い走りをするという事でアリさんがお金をもらうわけでなく、アリさんに対してベットされたお金に見合う試合をするという事ですね。

当然モハメドアリさんはお亡くなりになって久しいので、ここでは仮定法のcouldが用いられています。サッカーの例え話を多用した政府高官を揶揄して、その素晴らしい比喩はモハメドアリと張り合えたかも?(笑)という感じですね。

■試訳

”蝶のように空を舞い蜂のように刺す”
モハメドアリのボクシングリングにおける戦略を要約したこの言葉は時代を経ても色褪せぬ至高のスポーツメタファーである。彼には大事な何かを掴んでいたのだ。新たな研究によると適切な比喩は競争に身を置くアスリートにとって勝利への鍵となりうるという。コーチ達がTottenham Hotspurユース で10代のサッカー選手達に対して的を得た比喩を使用したところ、彼らのスプリントの速度が3%向上した。典型的な指導の一例としては”空に飛び立つジェット機のように走れ”という言葉がある。重要なのは比喩を使ってアスリートの注意を彼らの身体から外部環境に向けさせ、精神のプロセスを強化する事によって動きを”自動化”し考えすぎるのを回避するという事だ。この発見には皮肉な面もある。アスリートが自らのパフォーマンスを向上にスポーツ以外のものによる比喩を使う一方で、一般人は皆生活の中でスポーツを用いた比喩を使わずにはいられないからだ。
上司達は皆”(クリケット場の)足場が悪い時には、(ボクシングの)本気になって、全力でパンチを打ち込め、相手をダウンさせカウントを獲る事が必要だからだ”など口にする。役にたつ専門家の助言としてはむしろ”自分がコートに出てきて、プレーしてみせろ(ボールから目を離さずに、そしてボールを落とすようなヘマをしないのは当然の事)”である。副主席医務官 のJonathan Van-Tam卿はパンデミックの記者会見でフットボールの比喩を使おうとする事が多い(今のところ評判はよくない)。ワクチン開発はペナルティ戦のはじめに一つゴールが決まった様なもので、ワクチンの投入が成功した事は試合終了15分前での同点シュート、オミクロン株の登場はイエローカード2枚とのこと。アリ氏と張り合うつもりだったのかもしれない。あと、おそらくTottenhamの若きジェット機達のコーチとも。

◇一言コメント:製造ラインとサッカー

私が働く製造業の職場は共同作業の積み重ねで成り立っています。それは同僚との協業はもちろんの事、営業と生管、加工と組立、社内と外注、正社員と派遣社員と実に多様なプレーヤーが存在します。その中で的確にボールをつないだ結果として一つの製品が完成し出荷される事になります。良い製品は良い職場からしか生まれませんので、製造業において協調性が重んじられるのは自然な事です。
あたかも強豪サッカーチームのように連携し、素晴らしいゴールを決めるラインに関わって働く事ができるのは非常に誇らしい事です。

思わずスポーツの比喩を多用してしまう医務官の気持ちは痛いほどわかります。





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