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Vol.53#挑め!Leading Article/時速20マイル規制の何が悪いのか

今日のテーマは”新しい交通規制”の話です。

🔹🔸このコラムでは毎朝その日のLeading Articleから解釈の決め手となる語句を3つ選んで解説していきます。定着させて英語を読む事がどんどん”楽”にしていきましょう🔹🔸

走行速度が時速20マイルの車に衝突された場合に死亡する確率は時速30マイルの車の場合に比べ格段に低くなるという研究があるそうです。それうけて英国では法定速度を時速20マイルに下げた地域が拡大しています。一見良い事づくめのように思えますが、この法律実は議会で充分な議論をする機会がないまま制定されたものでした。
とは言っても、一度規則と罰金が施行されてしまえば違反者はCCDカメラやナンバープレートの自動読取等の最新鋭の仕組で漏れなく罰金を取られる事になります。実際に時速20マイル規制の取締り件数は23年だけで216000件にも上り、資金不足に喘ぐ地方自治体にとっては願ってもない歳入増となりました。
少しづつ、ただし確実に世の中は私たちの自由を制限する方向に進んでいます。今回はこうして忍び寄る監視社会に対して他ならぬ市民が声をあげる事の重要性を呼びかける内容となっています。

最新鋭の監視ツールの名称と合わせ、読み進めてみましょう。


◎今日のLeading Article:Boiling Frog

Britain may be bad at making things that people in other countries want to buy but it cannot be faulted when it comes to making rules. There is a neverending supply of new restrictions on daily life, many imposed without recourse to the democratic process and enforced by surveillance infrastructure that would not disgrace Orwell’s Airstrip One. These restrictions sometimes emanate from ministers anxious to be seen to be “doing something” to combat evils real or imagined, otiose and poorly drafted legislation that rarely improves on traditional offences honed over centuries.
The real growth area, however, is in the local arena where traffic and other restrictions offer new income streams for councils starved of central government funding. These restrictions are justified on the basis of so-called consultations, mysterious exercises beloved of rule-makers that lend a spurious air of democratic legitimacy to petty forms of oppression. Thus it is with the 20mph zone, a moneymaking bonanza for certain councils that no one has voted for. Rishi Sunak promised to end this “war on motorists”. The result: 216,000 fines for exceeding 20mph last year.
(中略)
Some may think this regime, and the burgeoning surveillance network behind it, an inevitable part of modern life. And so it will be if the public does nothing to challenge its legitimacy. CCTV, ANPR, LTNs: perhaps the majority of Britons are happy with this set-up. But no one knows because no one asked. Thomas Jefferson argued that “government which governs best governs least”. Britain is awash with government, with laws, rules, fines and Peeping Tom officialdom. The British have grown lazy in defence of their liberty. They would do well to remember the boiling frog.

□解釈のポイント■■■

①cannot be faulted/非の打ち所がない

faultは責めるという言葉ですが、それができようもないという事で非の打ち所がないという意味になります。

英国人はものづくりは苦手だけど、ルール作りに関しては非の打ち所がないとしています。自虐ですね。

②ANPR/自動ナンバープレート認識装置

Automatic Number Plate Recognitionの略です。自動で車のナンバーを読み取ってしまう仕組みですね。CCTV(Closed Circuit Television、閉鎖回路TV)と一緒に用いられ、もれなく違反者を検挙します。

一旦法律は決まってしまえば最新のテクノロジーで監視されるディストピアが待っています。

③Peeping Tom/のぞき見野郎

のぞき見をする人の蔑称です。市民を監視する役所や警察を指しますが、非難が込められた言葉選びですね。

昔々大変慈悲深い公爵夫人のGodivaさんが夫に厳しい税金を民に課すのをやめるようお願いした所、裸で馬にのって街を一回りするという条件を出されてしまいました。ところが、Godiva夫人はそこで挫けず条件をのみ民衆を救いました。町の人々は夫人のあられもない姿を見ないように言われたわけですが、一人このTomさんだけが言いつけを破って夫人の裸を見てしまい、その報いで視力を失ったとされています。

Tom氏 いかにもすけべそうなやつです

ただ歴史家によるこの言い伝えの検証は盛んに行われており、慈悲深いGodiva夫人は実在したものの裸行列のくだり、Tomさんの失明は創作であるとの説が有力だそうです。

■試訳

英国は他国の人々が買いたくなるような製品を生産するのが上手くないが、ルール作りに関してはそつが無い。際限なく日常生活に新しい規制が導入されるが、民主的なプロセスを経ないで押し付けられるものも少なくない。そして、それらはオーウェルの作中に出てくるAirstrip oneと比べても恥じない監視インフラによって実施される。これらの規制の大元はは実在するか悪あるいは想像上の悪と戦うため何かをしていると見られたい閣僚たちだ。何の意味もなく、書き方もお粗末な立法課程なのだ。何百年もの間伝統のように批判されてきてはいるものの、ほぼ改善する事がない。

一方で実際に数字を伸ばしているのは、交通規制や他の規制が導入される事で政府からの資金が欠乏する地方自治体に新しい収入の流れが発生した地域だ。これらの規制はいわゆる諮問という手続きで正当化されるが、この謎の行為は規制を制定する人が好んで用いる方法で、抑圧にあたかも民主主義的な正当性があるかのような雰囲気を持たせる事ができる。かくして、時速20マイル区域が導入により特定の地方自治体は金になる鉱脈を得たが、これは決して投票で支持を得たものではない。Rishi Sunakはこうした”運転者をねらった戦い”を終わらせると公約したが、結果は昨年時速20マイルを超過し罰金を課された人の数は216000件に上る。

この体制とその背後にあり急激に拡大する監視ネットワークは現代生活の必然と考える人もいるだろうし、人々がその正当性を問わなければ現実のものとなっていくであろう。CCTV、ANPR、LTN、英国人の大半はこの組み合わせに不満を言わないだろう。しかし、誰も聞かなければ、誰も知らないままだ。トーマスジェファーソンは”最良の統治は最小限の統治である”とした。英国は統治、法律、規制、罰金、政府による監視にあふれている。英国人は自分たちの自由を守ることに怠惰になっている。茹でガエルの話を思い出すと良いだろう。

◇一言コメント:

Airstrip oneはジョージオーウェルのディストピアSF小説”1984年”に登場する英国がモデルの国家です。監視カメラや顔の見えない支配者等気持ち悪いくらいに現代を言い当てているとして、この手の話には良く出てきます。

茹でガエル、という題名のごとく最初は誰も否定しないような良いルールをこっそりと制定するという所から始まっていつの間にか生活丸ごと監視され、管理されているという怖さを訴えています。誰も聞かない、誰も知らない。これが一番恐ろしいというわけです。



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