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Vol.41#挑め!Leading Article/”ひげ”を継ぐ者達

今日のテーマは”ひげの流行”です。英国人達の顔面トレンドをチェックしていきます。

🔹🔸このコラムでは毎朝その日のLeading Articleから解釈の決め手となる語句を3つ選んで解説していきます。定着させて英語を読む事がどんどん”楽”にしていきましょう🔹🔸

日本語で”ひげ”というひらがなで表記する場合、どこに生えるかはさておき顔面に生える毛全般を指します。そこには口髭(moustache)だけでなく、あご鬚(beard)、ほお髯(whisker)、もみあげ(sideburns)も含まれます。
調査会社YouGovの調べによれば、英国ではこの広い意味での”ひげ”をたしなんでいる男性が過半数に達する事がわかりました。ここ10年なかった事だそうです。新石器時代から流行っては廃れてを繰り返してきた”ひげ”の流行の24年度版という趣です。

虎の尾と並んで触ってはいけないのが龍の髭ですが、ひげに触れずして人の歴史を語れず。毛深い語彙を身につけ、読み進めていきましょう。


◎今日のLeading Article:Humperdinck’s Heirs

Whatever the day’s fashion, pogonophobic bias has long kept the beard out of public life. In 2013, Jeremy Paxman was ridiculed for attempting to present Newsnight in a beard. Regarding facial hair as a disturbing symptom of non-conformism, Margaret Thatcher required her cabinet ministers to be clean-shaven. No prime minister since Lord Salisbury has sported a full set of whiskers.

But might facial hair, be it untamed or carefully manicured, finally be breaking back into public life? James Cleverly, the home secretary, has long sported a full face of hair, and Michael Gove, the levelling-up secretary, has recently attracted attention on the floor of the House of Commons for a noticeably levelled-down pair of sideburns.

Long a side-show in facial fashion, the sideburn is being rolled out across the political landscape, from Emmanuel Macron’s conservatively-curated sideburns, to the more outré stylings of Argentina’s president, Javier Milei. It seems politics’ hairiest days may yet be ahead of it.

□解釈のポイント■■■

①sported a full set of whiskers /ほお髯をたくわえる

sportは他動詞で使うと目立つ服や装飾品を着こなすという意味になります。sportの語源が気晴らしや楽しむを意味するラテン語であるというのは知られていますが、オシャレも気晴らしなのですね。

そんなほお髯の似合う Salisbury卿以降首相は連綿と”剃る派”が続いているという事になります。日英同盟締結時の英国首相でした。

こいつは見事なwhiskerですね

②manicure/丹念に刈り込む

手の手入れをするという意味ですが、丹念に芝生などを刈り込むという意味でも使われます。この他にもひげの手入れをする語彙がたくさんありますね。groomingは動物の毛を手入れする意味ですが、これもひげの手入れを指します。clean-shaven(綺麗に剃る)しないとなると、こうした面倒事を抱え込むわけですが、それも嗜みです。ガジェットの類も髭の形を固める口髭蜜蝋(moustache wax)、就寝時などに髭の形を整えて崩れないようにするムスタッシュ・ネット(snood ともいう)、口髭用のブラシ、口髭用の櫛、口髭用の鋏と申し分ないラインナップです。

level-up secretaryとは地方の水準を都市部に合わせる、つまり地域格差解消を任務とする大臣ですが、その役職についているMichael Goveさんのもみあげは長く下方向に伸びており、それじゃlevel-downなもみあげだと揶揄しているわけです。こういう悪ふざけも英国文化ですかね。

③outré stylings/常軌を逸したスタイル

フランス語でおーとれいと読み、普通じゃないという意味です。way-outやweirdなどと同じように否定的な意味を含みます。

アルゼンチンの大統領のもみあげはすごいらしいです。ラテン系の大胆さですかね。これは思わず画像検索してしまいます。

長い。確かに長い。。。

■試訳

各時代の流行に関わらず、髭を嫌う偏見によってあご髭は公共の場から追いやられてきた。
2013年にはJeremy Paxmanがあご髭を生やした顔で”Newsnight”に出演しようとして非難を浴びた。
Margaret Thatcher はひげを周囲との同調を拒む気持ちの表れだとして、閣僚達に綺麗に剃っておく事を要求していた。英国首相にはSalisbury卿を最後にひげをたくわえたものはいない。
しかし、もしかするとひげが公の場で復活するのかもしれない。のばしっぱなしであれ、丁寧に手入れされているものであれ。James Cleverlyはこれまで長い間顔いっぱいにひげをはやしてきた。また、地方の水準向上担当大臣のMichael Goveも最近もみあげで注目を集めた。もみあげの水準の方は逆に下方向に向かっており、よく目立つ。
顔の流行についての余興が長くなったが、もみあげは政界で広がりつつある。Emmanuel Macronの保守的に手入れされたもみあげからアルゼンチン大統領Javier Mileiの常軌を逸したスタイルまで。政界にかつてない程ひげの多い時代が間近に迫っているようだ。

◇一言コメント:

タイトルに出てくるEngelbert Humperdinckは英国の国民的な人気を誇る歌手で、自身の立派なもみあげはロックの始祖エルヴィスプレスリーへの憧れに由来を持つとしました。近年増加している”ひげ”派の若者達はその正統な後継者(heir)だというわけですね。また、このheirに毛のhairがかけられている事は言うまでもありません。

引用しなかった部分ですが、書き出しはThe unpredictable tide of fashion has a tendency to put men in some hairy situations.と始まります。予測し難い流行の波は男性達を”毛の多い”状況に導く傾向があるという文ですが、hairy conditionは通常は苦境を指します。

個人的には”剃る派”です。楽ですもん。

ちなみに連綿たるひげの歴史については以下がおすすめです。おそらくひげは人間の最も歴史あるお洒落です。


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