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Vol.67#挑め!Leading Article/どぶねずみの街

今日のテーマは”どぶねずみの再評価”です。

🔹🔸このコラムでは毎朝その日のLeading Articleから解釈の決め手となる語句を3つ選んで解説していきます。定着させて英語を読む事がどんどん”楽”にしていきましょう🔹🔸

茶ねずみ(学名Rattus norvegicus)は湿った場所を好み、都市の裏路地や地下に生息することからどぶねずみと呼ばれています。繁殖力が強く、病気や人に有害なバクテリアを保有している事もあった為か、旧約聖書からオーウェルに至るまでの文学作品において人間を害するものとして冷遇されてきました。また、ねずみを用いた言い回しも数多く存在しますが、どれもネガティブなものばかりです。そんな嫌われ者のねずみですが、近年の研究ではそうした通説を覆す肯定的な内容が報告されているようです。通説が積もり重なって形成されたイメージには思いのほか科学的な根拠がなかったという事は少なくないようです。

ねずみが嫌いな人には少し我慢頂いて、読み進めていきましょう。

◎今日のLeading Article:Rat Pack

Rattus norvegicus, the brown rat, has suffered a bad press since before the press was invented. Considered to be dirty, diseased and dangerous, vilified in literature from Leviticus to 1984, these multitudinous creatures exist in the shadows, forever leaving a sinking ship, joining the rat race, ratting out their pals or simply smelling suspicious. Yet now Maite van Gerwen, a Dutch scientist, says that humans have got rats all wrong.

She wants her capital to embrace its furry subterranean population and become a “rat city”, complete with feeding areas in parks and rat-friendly cavities in new-build homes.

Beavers, birds of prey, wolves and even sharks have benefited from sympathetic revisionist scholarship in recent decades. Are rats the next formerly feared species in line for an unlikely makeover? Van Gerwen and her fellow apologists certainly make a compelling case.

For a start, whatever James Cagney might have once alleged, rats are not dirty, but rather clean, thanks to a fastidious grooming regimen. While they do carry some bacteria harmful to humans, they prefer to avoid us, making infection unlikely.

What’s more, rats spread seeds, aerate soil and tidy up rotting food and carrion.

One reason rats are so suitable for laboratory testing is their brain structure shares similarities to our own. In some experiments rats solved problems quicker than humans. This intelligence is evident in those rats trained to detect tuberculosis (in saliva), gunshot residue and landmines. It also makes rats highly adaptable, the only species to have occupied more land than humans.

Accepting that rats deserve a rethink, however, does not necessarily mean adopting the proposals suggested in Amsterdam. There are about 80 million rats in the UK. They seem to be doing pretty well without any more help from us.

□解釈のポイント■■■

① suffer a bad press/悪評を博す、マスコミに悪く報道される

新聞で悪く書かれることから転じて悪評が立つ、非難されるという意味になっています。

ねずみの場合、古くは旧約聖書のレビ記(Leviticus)の時代からディスられています。活版印刷は近代の発明品ですので、pressが発明される以前からbad pressに甘んじてきたという言い回しになるわけですね。最近の文学作品として言及されているのが”1984”はジョージオーウェルによるディストピア小説です。クライマックスの拷問シーンにねずみが登場し主人公の心を折ります。

②like rats leaving a sinking ship/なりふりかまわず逃げ出す

ねずみの知覚能力は鋭敏なもので、病気や銃火器の探知に利用されるほどです。船が沈みそうな状況では自らの危機を察知する能力の高いねずみが一番先に逃げ出すという事から危険からなりふり構わず逃げ出す様子を表現する言葉になっています。

ここでは他にもねずみに関するフレーズをこれでもかと紹介しています。
join the rat race 出世競争に参加する
ratt out their pals 仲間を密告する、裏切る
smell a rat うさんくさい
どれもネガティブなものばかりですね。いかにねずみが文化的に忌み嫌われているかがよくわかります。

③ regimen /治療計画、養生法

ラテン語の方針という単語から転じて治療や食生活の方針を意味します。

塩分控えめの食事といった食事の習慣についての方針もregimenですし、正規の医療行為にも使われ、がんの化学療法も一種のregimenです。丁寧に毛繕いは清潔とは言い難い環境で生き抜くためにねずみが実践するregimenなわけですね。

■試訳

悪者とされてきたねずみの評価を見なおすべきだ。ドブネズミ、通称茶ネズミは報道など存在しない大昔から悪いものとして報道されてきた。不潔で病原菌を保有しており危険であると考えられ、旧約聖書レビ記からオーウェルの1984年に至るまでの文学作品でも悪役にされ続けてきた。この個体数の多い生き物は常に日陰の存在だった。沈みゆく船から逃げ出し(rat leaves a sinking ship)、出世競争(rat race)に参加し、同僚を見捨て(rat out)はたまた単純にうさんくさい(smell a rat)。
ところが、オランダの科学者Maite van Gerwen氏は人間がねずみを誤解しているとの主張をしている。彼女はオランダの首都がこの毛深く地下に生息する生き物を受け入れて、”rat city”となってほしいとまで言っている。そこでは公園にねずみを餌付けする場所が備えてあり、新築住宅にはねずみに優しい空洞が設けられる。ビーバー、猛禽類、狼、鮫でさえもこの10年の間に共感を伴う学術的再評価がなされ、その恩恵を受けてきた。これらはかつて恐れられていた生物が想像しなかった再評価をうけた例だが、次はねずみの番が回ってきたのだろうか。Van Gerwenと彼女を支持する同僚は説得力のある議論をしている。第一に、 James Cagneyの主張はさておき、ねずみは不潔な生き物ではない。むしろ丁寧に毛繕いをする習慣のおかげで清潔なのだ。確かに人に有害なバクテリアを保有しているが、ねずみは人をさける習性があるため感染する可能性は低い。さらにねずみは種子を拡散され、土に風を通し腐敗した食べ物や動物の死骸を片付けてくれる。ねずみが研究目的の実験に適している理由の一つは彼らの脳構造が我々のものと似ている事がある。いくつかの実験ではねずみが人間よりもすばやく問題を解決している。この賢さは唾液中の結核や射撃残渣、地雷を発見するよう調教されたねずみ達に明らかである。ねずみは適応能力が高い生物であり、人間よりも広範囲で生息する唯一の生物である。ねずみをうけいれる事は検討の価値があるが、かならずしもアムステルダムで提案されている内容を採用することにはならない。英国には8000万匹ものねずみが生息しており、あえて我々から支援するまでもなくよろしくやっているように思われる。

◇一言コメント:

タイトルのrat packもまたねずみ関連の言い回しで不良少年のグループを意味します。割と最近の事例ですがフランクシナトラが結成したグループの名前にもなっています。

ねずみの賢さや清潔さを科学的に再評価したオランダの科学者ですが、ねずみを受け入れアムステルダムをねずみにやさしい”rat city”化する事を提案している行き過ぎっぷりです。既に英国には大勢のねずみが不自由なく暮らしているので、特別支援するのは必要ないというオチになっています。

我が国日本でもねずみは貴重な米を貯蔵する際に邪魔な存在として忌み嫌われてきました。ねずみの生息範囲は広く、それに対する嫌悪も世界規模なわけです。ただ、そんな中でどぶねずみ(rat)とはつかねずみ(mouse)の違いこそあれ大成功収めている方がいらっしゃる事も指摘すべきでしょう。

この方です

そして、どぶねずみの美しさをイントロにもってきた日本のロックバンドの先見の明も科学的な実証により裏付けを得たという事になるわけですね。

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