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Vol.39#挑め!Leading Article/盛り過ぎた脱炭素プラン

その日のLeading Articleから解釈の決め手となった語彙を記録していきます。身につけば読む事がどんどん”楽”になります。

2年前の2021年党大会で労働党は280億ポンドの大規模な脱炭素産業への投資を公約に掲げました。”脱炭素と繁栄のプラン”と銘打たれた一連の政策は労働党の環境問題に対する決意の現れとして有権者に強く訴求するものでした。ところが直近の労働党はこの公約の更新をおこなっており、規模もいつの間にか3割近く減額された237億ポンドにすり替わってしまいました。

次の政権与党は労働党と目されていますが、その信頼性が疑われる振る舞いだと言えるでしょう。

脱炭素に関するキーワードもおさらいしながら、読み進めていきましょう。


◎今日のLeading Article:盛り過ぎた脱炭素プラン

Just over two years ago, Labour’s pledge to invest £28 billion a year in the “green economy” was the biggest jewel in its policy crown. The sum was first announced to great fanfare by Rachel Reeves, the shadow chancellor, at the party’s 2021 conference. There was talk of generous investment in gigafactories for electric vehicles and batteries, the hydrogen industry and offshore wind turbines. Above all, Ms Reeves said, there would be “no dither, no delay” in tackling the climate crisis.
(中略)
Was it ever necessary, for example, to attach such a decisive figure to a range of relatively unformed green schemes in 2021? By pledging what was then a sum equivalent to over half the annual defence budget, Labour perhaps hoped to impress the electorate with the weight of its commitment. If so, it has backfired spectacularly.
(中略)
Discipline, clarity and consistency matter. Labour has benefited in the polls from the fact that these qualities have often been absent in the Tory party. Sir Keir has developed a reputation for policy U-turns. But even by his standards this is a screeching reversal, one he should beware of repeating. He will not have the luxury of time for such a drawn-out fiasco if he is in government.

□解釈のポイント■■■

①dither /ためらい

決められずに何もできないできる事です。イギリス人はけっこうこのditherを使います。be all of a ditherやbe in ditherという形で頻繁に見かけます。

Reeve女史の”no dither, no delay”というフレーズは綺麗に頭韻を踏んでいて耳で聞いても気持ち良いですね。まさに当時の労働党政策の目玉(the biggest jwel in the crown)だったわけです。

ところが、2年を経てその威勢の良さが裏目にでてしまうという展開が待ち構えています。良いこと言えば言うほどそれを撤回する時のばつのわるさは大きくなります。

②backfire/裏目に出る

銃の不具合で高圧の発射ガスが銃を撃つ人に向かって噴射されてしまう現象がbackfireです。ここから攻めの姿勢で発言した内容が後々立場を悪くしてしまうと言う意味で使われています。裏目にでるは期待したサイコロの目と逆の目がでるという言葉です。若干穏やかかもしれませんね。

③screeching/キーっと音のなる

乗り物やタイヤが急に方向を変える時高い音がでますが、それを指す言葉です。キキーッ、みたいな感じです。急ハンドルでの方針転換ということですね。

あれだけ威勢よく脱炭素投資を語っていた労働党が急に投資額の3割減です。これはいくらなんでも急転回だよねという流れです。他の政策でもよくUターンするKeir卿だけど、その感覚からしても流石に酷いんじゃない?という皮肉たっぷり書き方ですね。

■試訳

ちょうど2年前労働党は年間280億ポンドを”脱炭素経済”に投資するという公約を掲げた。目玉政策であった。この金額は2021年の党大会において影の大臣でったRachel Reevesにより鳴物入りで発表された。電気自動車とバッテリーの大規模生産施設、水素産業、洋上風力発電などに多額の投資が行われるとされた。何よりも、Reeves女史は気候変動の危機への取り組みに”とまどいも、遅れもない”と発言している。
(中略)
はたして2021年時点で形を成していない一連の脱炭素スキームにあのような決定的な数値をつける必要はあったのだろうか?当時の年間防衛予算の半分に相当を提示し有権者に公約の重さを訴えられればと思っのだろうか。それならば、今その発言が盛大に裏目にでている。
(中略)
大事なのは自制、明確さ、一貫性。労働党は世論調査において、これらの資質が保守党にかけていたことで得をしたわけだが、Keir卿は今や政策のUターンで名を馳せてしまっている。そんなKeir卿基準でもこの変節は急展開であり、再発に注意すべきものだ。政権についた暁には、このような混乱を長引かせる時間の余裕はない。

◇一言コメント:

タイトルのThe Long Good byeは労働党が最初は年間280億ポンドだった公約を237億に修正してみたり、やっぱりゆくゆくは年間280億ポンドになるとか、やっぱりそこまでいかないとかぐだぐたと時間をかけて撤回している様子を表現していますが、このフレーズは認知症の意味もあります。

認知症を患うと徐々に記憶を失っていくので時間をかけた死別という意味合いです。言った事を忘れてうやむやにしてしまう政治家への批判がこめられていますね。

政治家は掲げた公約を支持される事で当選し権力を得るわけですので、そこに曖昧さや嘘があるのは問題です。Discipline, clarity and consistency matter(大事なのは自制、明確さ、一貫性)、これに尽きるという事ですね。


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