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VARに物申す!フットボールにドラマと公平さを取り戻すには

サッカーで誤審防止のため導入された映像判定専門の副審、VAR(Video Assitant Referee)。観客がシラけてしまう、逆に誤審の原因とと避難轟々です。審判に信頼を、ゲームにドラマを取り戻す方法とは?


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◎”Checks, Lies and Videotape(チェックと嘘とビデオテープ)”

VARはビデオを使った審判補助の仕組みで、「ゴール」「PK判定」「一発退場」「選手誤認」に限定してビデオで試合を監視する補助審判が主審への介入を許す制度です。イギリスのプレミアリーグでは2019年から導入されていますが、介入から審判までのプロセスが不明瞭であり、主審とVARが相談をしている間は試合の進行を止めてしまう事からファンからは不満の声が絶えません。何かを改善するために導入した仕組みも運用を誤れば逆に悪化を招きかねませんが、VARはその典型例(①glaring example)となってしまった感があります。
VARで論争(②contretemps )が起きてしまった直近の事例は今週日曜に行われたノッティンガムフォレストの試合でした。降格戦すれすれのチームがVARによる誤審で敗北を喫する事態にクラブもカンカンです。審判記録の内容は行き当たりばったりなもので、これではミスが発生しておかしくないというものです。こんなものやめてしまえとなりそうな所ですが、その前に改善できる方法はありそうです。その一つがVARの介入から判定までのやりとりをリアルタイムで中継するという方法です。これならば透明性を確保する事ができますし、観客はただ判定を待つ事を強いられずにすみます。また、公開する事により審判の質を改善する動機づけにもなるでしょう。観客を仲間はずれにしない(③let in on the action)事がポイントですね。

□本日のポイント■■■

①glaring example /典型例

glareはぎらぎらと光るという意味の言葉ですが、何か悪いものについて使う場合その悪さが明らかだ、目に見えているという事が強調されます。似たような言葉にblatantというのがあり、blatant lie(みえすいた嘘)などと言います。

🔳The controversy surrounding the use of video assistant referees (VAR) in the Premier League is a glaring example.
(試訳)プレミアリーグにおけるVAR使用を取り巻く論争はその典型例である。

②contretemps /論争

”時に反した”というフランス語の言葉が大元ですが、フェンシングで間違ったタイミングで突きを繰り出してしまう失敗を指す言葉として使われました。そこから、社交ダンスでリズムを外す事を指すようになり、リズムを外した後に生じる小競り合いから論争の意味が派生しました。
どれも”あ、やっちゃった。。。”という感じですね。こんとれたーん、とフランス語風に発音します。文中の使われ方は最後の論争ですね。

🔳The latest VAR-inspired contretemps took place on Sunday
(試訳)直近のVARによる論争が起きたのは先週日曜日だった。

③let in on the action /仲間に入れる

特定の人の間で秘密裏に進めている事(the action/act)があって、そこに誰かを参加させるという状況を指す言い回しです。VAR審判は主審とVAR担当の密室での決定プロセスで、その間観客は仲間はずれなわけです。プロサッカーは興行であり、贔屓のチームを応援する熱量の高いお国柄ですので反発は当然の成り行きでしょう。提案されているように中継でもされれば多少気持ちもおさまるかもしれませんが、今度はなんてVARだと別の怒りをかう可能性も否めません。

🔳To restore lost drama and a sense of fair play, spectators must be** let in on the action**.

(試訳)失われたドラマと試合の公平感を取り戻すには観客を仲間はずれにしてはならない。

◇一言コメント

タイトルは1989年の映画”Sex, Lies, and Videotape”をもじったものですね。checks(監視)を複数形にする事で似た音にしています。密室での決議ですので、どこかに嘘が入っているのではないかと勘ぐりたくなるのは人間の心境ですね。
VARの過程を公開するというのは妙案ですが、審議の材料となるビデオもまた公開せざるを得なくなりますので審判としてはやりにくいでしょうね。ビデオを材料にして後から好き放題いう人がでてくるのは目に見えています。
判定を下す審判の重責とプレッシャーは大変なものと思われますが、VARを中継などすればその重さは更に増す事が予想されます。
選手と一緒にフィールドを駆け回る審判は選手と同等の露出をするわけですので中継するアイディアと一緒に審判の立場、あるいは審判自身を守るような方策も実施されなければならないでしょう。

過激な事で有名な英国のフットボールファンですし、サッカークジなどでお金を投じている人も少なくありません。そのあたりのケアを怠れば審判が攻撃されるような事件につながりかねないと思います。

■全文&試訳

VAR’s lack of transparency is costing the Premier League the confidence of fans
透明性に欠けるVAR(ビデオ判定)により揺らぐプレミアリーグファンの信頼

Technological remedies to problems of human error can prove to be a cure worse than the original disease if they are not administered intelligently. The controversy surrounding the use of video assistant referees (VAR) in the Premier League is a glaring example. In theory, the ability to relay decisions to an all-seeing assistant referee promised to do away with verdicts that were manifestly arbitrary or illogical. In practice, bizarrely, it has routinely had the opposite effect.
人的エラーの問題をテクノロジーで解決しようとする場合、やり方を間違えると問題は悪化しかねない。プレミアリーグにおけるVAR使用を取り巻く論争はその典型例である。理屈では全てを見通す補助審判に判断を代行してもらう事ができるようになれば、明らかに恣意的で非論理的な判定はなくなる事が期待される。しかし実際の所は不思議なことだが、逆効果となる事が当たり前のようになっている。

The latest VAR-inspired contretemps took place on Sunday when Nottingham Forest were left hovering above the relegation zone after suffering a 2-0 defeat at Everton, in the course of which three potentially decisive decisions to deny them a penalty were made. Within minutes of play concluding, Nottingham Forest’s social media account released an intemperate statement complaining that the use of VAR had been responsible for “extremely poor decisions” and insinuating that human bias lay at the root of the problem.

直近のVARがらみの論争が起きたのは先週日曜日だ。ノッティンガムフォレストがEvertonで2-0で敗北を喫し。降格をかけた入れ替え戦を戦う事になった。この試合では決め手となりうる反則判定が3回行われた。ゲームが終わって数分の間もしない間に、ノッティンガムフォレストの公式ソーシャルメディアアカウントが発表したコメントは怒りに満ちていた。VARを使用した事で”判定が極めてお粗末なもの”となったと物言いをつけたのだ。そして、問題の根っこにあるのは人的なバイアスである事がほのめかされた。

It is worth recalling that VAR was introduced as a check on only the gravest refereeing oversights, not to re-referee every decision. Its increasing use outside this remit risks entrenching a sense of unfairness among fans. Added to this, transcripts of VAR conferrals — most notably, that which led to Liverpool’s goal against Spurs being mistakenly disallowed earlier this season — reveal a haphazard process that is worryingly open to error. Despite this, data suggest VAR has improved the accuracy of decisions by 14 percentage points.

VARは最も深刻な審判の見落としを監視するのを目的として導入されたものであり、全ての審判を再検討するためものではなかった。この事は思い出す価値があるだろう。この範囲を超えてVARが使用されれば、ファンの間での不公平感が常態化してしまいかねない。加えて、VARの審判記録をみると、そのプロセスは行き当たりばったりで間違いが起きかねない内容だ。特にひどかったのは、今シーズン前半にLiverpoolがSpursに決めたゴールを誤って無効にしてしまったVAR審判だ。それにも関わらず、データ上はVARの精度は14パーセント改善したということになっている。

The solution, then, is not to abolish VAR, but to use it sparingly and increase transparency by broadcasting conferrals. The halting way VAR is employed causes confusion in the stands and stasis on the pitch, while its opacity fuels baseless conspiracy. To restore lost drama and a sense of fair play, spectators must be** let in on the action**.

解決策はVARを廃止することではなく、ここぞという時にのみ使用するようにする事と審判の過程を中継して透明性を確保する事だ。手探りでVARを使用する今のやり方では、スタンドの観客は困惑し試合も止まってしまう。また透明性が保たれない状態では根拠のない陰謀論が蔓延る。失われたドラマと試合の公平感を取り戻すには観客を仲間はずれにしてはならない。

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