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Vol.55#挑め!Leading Article/英国風悪ガキ化現象

今日のテーマは”PeppaPigの影響力”です。

🔹🔸このコラムでは毎朝その日のLeading Articleから解釈の決め手となる語句を3つ選んで解説していきます。定着させて英語を読む事がどんどん”楽”にしていきましょう🔹🔸

幼少期に視聴するテレビ番組が人格や言語の特徴に持つ影響は無視できないものです。子供は登場人物の行動を模倣し、話されている言葉を吸収します。”PeppaPig”は英国が誇る人気子供向けテレビ番組ですが、その影響力がアメリカをはじめとする海外で問題視されているという内容です。
タイトルに出てくる”Brat”は悪ガキという意味の言葉ですが、PeppaPigを見て育つと自分たちの可愛い子供が影響をうけて英国風の悪ガキになってしまうというのです。

アメリカに関する語彙も多く登場します。確認しながら読み進めていきましょう。


◎今日のLeading Article:Brit Brats

Britain’s great exports once included steel from Sheffield, cotton from Lancashire, ceramics from Staffordshire and ships from the Clyde and Tyne. As any parent or grandparent will know, their modern equivalent is one Peppa Pig, the cartoon porker whose eponymous TV show graces screens in 118 countries and has earned £6 billion for the UK. Her global dominance of toddlers’ screens is such that theme parks have sprung up in her honour in both China and the US. Not since Beatlemania has Britain exerted such cultural clout.

Now, predictably enough, comes the backlash. At the height of the pandemic, with toddlers shackled to their screens and enthralled by Peppa, US families reported an alarming phenomenon.

Children as American as apple pie were speaking of biscuits, petrol stations and tellies, as if they had been reared in the home counties. But this insidious anglicisation does not stop there.

Now, exhausted parents from all corners of the US have complained to The Wall Street Journal that the impudent little Peppa, never slow to express her displeasure, is turning their offspring into Brit brats. “Peppa is rude and impatient,” moaned Kayla Tychsen of Houston. “The show teaches kids that this is who she is and that it’s OK.” Like the solemn evangelicals who burnt Beatles LPs in the 1960s, some American —and Canadian — parents have resorted to boycotts. “We don’t need her nasty behaviours in our house,” fumed Melissa McIntosh from Ontario.

They are not wrong. Peppa bullies her brother and is decidedly unsympathetic to her hapless father’s all-too-relatable struggles to tame his bulging belly. She is bossy, demanding and prone to unpredictable fits of pique. Not at all the saccharin heroine of white picket fence lore. But for British parents long forced to endure gangster rap and other atrocities, revenge is sweet.

□解釈のポイント■■■

①eponymous/名前と同じタイトルの

PeppaPigが出てくるPeppaPigという番組という事ですね。日本語には冠番組という表現もあります。

Peppaは子豚(porker)。日本でも放映されているようですがあまり見たことはないです。

豚なので泥遊びをするというリアルな設定

②as American as apple pie/典型的なアメリカ風である

アメリカの国民的スイーツアップルパイ。それになぞらえられる程にアメリカ的であるという事ですね。

開拓時代の痩せた土地には麦が育たなかった為にやむを得ずりんごを植えたのに始まり、文学作品あるいは日常生活においてアメリカ人はアップルパイを好んできました。アップルパイの香りが漂うのが理想の家庭とされていますが、そんな環境で育った子供たちがある日突如として英国訛りで行儀の悪い子豚の真似を始めるわけです。親たちも気が気でありません。同じ光景であっても日本であれば親たちは早期英語教育が成功したと喜ぶ場面となるかもしれませんが。

あとで出てくるwhite picket fenceも同様にアメリカを象徴するアイテムです。白い柵とは郊外の一軒家によく見られる柵の形であり、そうした一軒家を購入する事ができる中流階級の成功を体現しています。

③ fits of pique/癇癪

fitはもともと衝突の意味ですが、そこから感情の一時的な昂りを意味する言葉になりました。in a fit of angerと言えば、怒りでかっとなっているという事です。piqueはフランス語で怒りで、angerと同じような意味ですね。

すぐかってなり怒る子豚をみて、子供たちはそうやって怒っていいのだと思い親を困らせることになるわけです。親も親でそうなると悪いのは可愛い我が子ではなく、害悪に満ちた異国のアニメだと考えるようになります。


■試訳

英国の偉大な輸出産品といえばシェフィールドの鉄やランカシャーの綿、スタフォードシャーのセラミック、クライド川とタイン川の船舶などであった。子供や孫のいる人ならばご存知と思うが、それらの現代版がPeppaPigである。この子豚の漫画は同名のテレビ番組が118カ国で放映され英国に60億ポンドもの収入をもたらしている。世界中の幼児が見るテレビ画面における存在感は大きなもので、中国とアメリカの両方にPappaPigを讃えるテーマパークが建造された。ビートルズの大人気以来これほどまでの文化的影響力をもった存在は登場しなかった。
今その反動が起きているのも不思議ではない。パンデミックの最盛期幼児たちはテレビ画面に張り付いてPeppaの姿に心を躍らせたわけだが、アメリカの家族は警告すべき現象を報告している。典型的なアメリカ人の子供たちが、biscuits(ビスケット)だとかpetrol stations(給油所)だとかtelliy(テレビ)などの言葉を口にしているのだ。それはあたかもPeppaPigの本国で育ったかのようである。
しかし、由々しき英国化現象はこれにとどまらない。辟易したアメリカ中の親たちはWall Strreet Journalに対して、このPeppaという厚かましい子豚は躊躇なく不満を口に出すので自分たちの子供が英国風の悪ガキに変貌させていると文句を言っている。”Peppaは行儀が悪く短気だが、この番組は子供たちにそれがPeppaという人となりで許容されるものだと教えているんだ”とヒューストンに住むKayla Tychsenは述べている。1960年代にビートルズのLPを焼き捨てた厳格な福音派のように、アメリカ人とカナダ人の親たちには不買運動にでる人もいる。”うちには彼女のやんちゃな行動はいらない”とOntario在住のMelissa McIntoshは語る。
彼らは間違っていない。Peppaは兄弟をいじめる。また、太鼓腹をなんとかしようとする父親の奮闘というよくある場面でも明らかに非情な態度を取る。また彼女は偉そうに振る舞い、わがままで、いつ怒り出すかも予測できない。アメリカの上流家庭でよくみられるような中毒性の人工甘味料とはまったく異なる。しかし英国の親たちはながらく不良ラップをはじめとする残虐行為に耐え忍んできたのだ。反撃としてはかわいいものだ。

◇一言コメント:

オチの部分が秀逸ですね。これまで散々アメリカ発の不良ラップは流行で英国の可愛い子供たちに悪い影響を与えてきているわけで、それに耐え忍んできた英国の親たちにとって仕返しは甘美なものだそうです(revenge is sweet)。好気味だ、という感じです。

gangstaとはこういう人たちですね

福音派(evangelicals)はプロテスタントの一派で、福音すなわち聖書を信仰の中心に据る考え方のキリスト教徒です。ジョンレノンが神を侮る発言をしたとしてLPを焼き捨てる抗議運動が展開されました。同様に英国発のPeppaPigに抗議するアメリカ人を揶揄しているわけですね。





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