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ロンドンの新人警察官が”ヤバい”理由

市民の安全を守る警察官が実は”安全”でないとしたら?英国の警察官スキャンダルに垣間見える採用活動の闇とは

🔹🔸イギリスの日刊紙から新鮮なニュース&トピックスをお届けします。国内メディアが扱わないニッチな情報や一癖も二癖もある英国目線を気軽に日本語で楽しみましょう。ポイントとなる単語は深掘りして解説してゆきますので、いつの間にか語彙力もアップしちゃうおまけ付です🔹🔸


◎”Bad Apples(腐ったリンゴ)”

英国では一般的な警察官は警棒のみを所持しており、銃を携帯しているのは認定された一部の警察官に限定されています。そうした特別な警察官なのだから、それなりの身元調査(①vetting)がある事を市民が期待する事は当然の事でしょう。
それだけに拳銃所持認定をうけた警察官のWayne Couzens and David Carrickの2名が凶悪な性犯罪の常習犯であった事が明らかになったスキャンダルの衝撃は大きなものでした。

かつての警察官採用時の身元調査は長時間にわたる面接、家庭訪問、友人や親族へのインタビューを行う徹底したものでした。ところがパンデミックを契機にZOOMを用いた面接だけで選考を行う簡易なものに改悪されてしまいました。

長らく警察組織で採用を担当したTom Winsor氏は対面で面接をする事、そしてその応募者が同僚とやり取りをする姿を観察する事の重要性を強調しており、対面で面接は最低限すべき事(②bare minimum)だと言えます。

それにも関わらず、採用制度を決める警察幹部達にはその考え方が欠落しているようです。武装を許可する警察官の採用です。他の要職と同様に対面を含む身元の調査は必須(③de rigueur)なのです。

改悪が行われた当時は警察官の人員を補充するという政府の公約があり、その達成が優先事項となってしまっていたという事情もあったのでしょう。今の優先事項はそうしたゆるい選考プロセスで採用してしまった警察官を再点検し”安心”を確実なものとする事です。

また、身元調査は採用時だけでなく警察官の在職中は継続的に実施しなければなりません。人間は変わっていくものだからです。
何より当の警察官達には同僚の危険な兆候を見逃さない姿勢が求めらます。

□本日のポイント■■■

①vetting/身元調査

元々はveterinarian(獣医)が由来の単語です。競馬に出る競走馬に不正がないかを獣医が検査していたところから転じて身元調査の意味となりました。

🔳Rigorous and continuing** vetting** is essential to maintaining public trust in the police
(試訳)厳しく、継続的な身元調査は世間の警察に対する信頼を維持するには不可欠だ。

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