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Vol.33#挑め!Leading Article/当たらぬ経済予測

その日のLeading Articleから解釈の決め手となった語彙を記録していきます。身につけば読む事がどんどん”楽”になります。

経済学を”惨めな科学(dismal science)”とディスったのは歴史家トーマス・カーライルさんでした。そんなヴィクトリア朝時代のディスそのままに、ちっとも当たらない昨今の経済予測の話です。

我らが日本国には当たるも八卦当たらぬも八卦という金言がありますが、経済予測に関する語彙と一緒に見ていきましょう。


◎今日のLeading Article:当たらぬ経済予測

Among leading economies, however, British forecasters have distinguished themselves as the least prescient of the lot. On not a single occasion last year did the consensus inflation projections of UK economists match the measure eventually recorded by the Office for National Statistics: the worst record in the G7.

Predictions issued by policymakers and lenders have proved similarly erratic. In 2022 the Bank of England prophesied that the following year would bring the deepest downturn since the 1920s. Following suit, the International Monetary Fund (IMF) warned that Britain alone among its neighbours would fall into recession. Instead, the UK economy grew by 0.5 per cent. In fact, of the 24 successive UK growth forecasts issued by the IMF since 2015, all have been wide of the mark.

Amusing though the sheer consistency of forecasters’ errors may be, bad modelling lays the ground for bad policymaking, affecting investment strategy and monetary policy. The Bank of England has now commissioned a report by the veteran economist Ben Bernanke into its dire track record, due to be published this year. Till then, it pays to stay wise to the limited predictive power of macroeconomic modelling. The only evidence-based prediction that seems justified is that such models are likely to turn out to be wrong.

The Times 2024/2/3

□解釈のポイント■■■

① consensus inflation projection /インフレのコンセンサス予測

何のconsensus?というところですが、複数の有識者の見解を集め平均化して予測にしたものをconsensus forecastとかconsensus projectionといいます。なので、コンセンサス予測として、そのまま訳にするのが良いと思います。

そうやって外れないように様々な見解を盛り込んで出しても外れちゃうインフレ予測なんですね。良いものにしようと様々な意見を反映させた結果、何か残念なものになっちゃうのは会社でも良くある事です。熟練した職人みたいな人は独断と偏見でやったほうが打率はいいのもかもしれません。

②wide of the mark/間違っている

言ってる事や書いたものが間違っているという意味です。beside the markとかoff the markという形もあります。また野球などの暴投をwide ballなどと言いますが、同じ使われ方のwideでしょう。

英国中央銀行も、それにならった(follow suit)IMFも大外れだったという、まさに惨めな状況です。

③stay wise to/留意する

toは対象を示す前置詞ですね。誰かが秘密にしていた事に気が付くという意味です。この対象を表すtoと一緒に使うwiseには、動詞として使うwise up toというのがあります。最初はこっちだと思っちゃいました。

唯一エビデンスを備え、正しいと言えるような予測は予測というものは当たらない事だというオチですね。はい、座布団一枚。
タイトルのPredictable Mistakes、予測できる事はないけど外れるのは予測できるという所に繋がるんですね。

■試訳

かたや、英国の経済予測は他の経済大国と一線を画している。抜群に当たらないのである。英国経済学者達によるインフレについてのコンセンサス予測は国家統計局の実測値と照合されるが、これが昨年は一度たりとも当たらなかったのだ。これはG7中最低の成績である。

政治家や金融機関も同じように予測を外す事がわかっている。2022年に英国中央銀行は次の年が1920年以来最悪の不況になると予言した。IMFもそれに倣い近隣諸国と異なり英国だけが不況に陥ると警告を発した。ところが実際の所、英国は不況に陥るどころか0.5%の成長という結果となった。実際のところ2015年以来IMFが発表している英国の成長予測は24回連続の大外れだ。

これだけ一貫して予測が外れると笑えてくる所だが、質の悪いモデリングが土台となると政策立案の質までも悪いものとなり、投資戦略や金融政策が影響を受ける事になる。英国中央銀行は熟練の経済学者Ben Bernankeによる報告書をこの悲惨な実績に追加し、今年発表する事になっている。それまではマクロ経済モデリングの予測能力が限定的であるという事に留意しておいて損はない。証拠を備えており、正しいと言えそうな唯一の予測は、こうしたモデルというものはどうも当たらないようだという事だ。

◇一言コメント:

最初のとこででてきたトーマスカーライルさんは大英帝国時代の歴史家ですが、"雄弁は銀、沈黙は金(Speech is silver, silence is golden)"という諺が初めて使われた英語の文献は彼の小説”衣装哲学”だったとされています。

彼自身はこの諺をスイスで見つけた碑文だったとしているそうですが、その起源については諸説あり有力なのはアラビア文化圏で使われていたのがドイツで流行したというものです。

経済学の見込や予測はあくまで科学、シュミレーションの域ですが、事業会社の場合は着地点の意思表示に他なりません。あたるも八卦当たらぬも、と開き直ると怒られます。

☆2024年2月3日の出来事

・腐食性薬品を顔などにかける悪質な犯罪急増。アフガニスタン難民として英国に来たAbdul Ezediの再犯事例。キリスト教への改宗を隠れ蓑に使っていた疑惑。
・他国に遅れをとる英国の癌患者生存率。”Cancer is a word, not a sentence” 癌は癌というwordであって、sentence(宣告/文の掛け言葉)ではありません。


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