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『グレイス・イヤー』 

『グレイス・イヤー』 キム・リゲット 早川書房

 読み始めるまで少し寝かせておいたのだけれど、読み始めたら止まらなくなって、一気に読んでしまった。
 ガーナー郡という架空の土地が舞台。そこでは、女は男を惑わせる魔力を持っていると信じられていて、16歳になった女の子たちは、人里離れたキャンプ地(湖の真ん中にある島!)に1年間送り込まれる。
 もちろん毎年女の子たちは行って、帰ってくるわけだけれども、全員が帰ってはこないし、相当ぼろぼろになって、中には体の一部を失って帰ってくるものもいる。
 読んでいて、映画の「ミッドサマー」みたいだな、と思う。あの映画では外部から来た人間が村の風習にからめとられていくけれども、この小説では村の中で育った視点から書かれているみたい。慣習とか、出来上がっている儀式やら、透けて見えるのはだれかにとって都合のいいこと、だ。
 「少女、赤いリボン、花々」が描かれている、と聞いて想像する表紙は
ほわんとしたものかもしれないが、実際の表紙に描かれた少女の目は鋭く、こぶしは固く握られている。背景は漆黒の闇だ。女たちが少なからず通ってきた闇。
 それでも希望はある、と思わせてくれる小説だった。

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