"chasing rainbows"でも諦めない。

いつも読んでいただき
ありがとうございます。

今回のイディオムは
"chasing rainbows"です。

"chasing rainbows"の意味

意味:非現実的な目標や夢を追いかける。
"Stop chasing rainbows!”/ 
”Quit chasing rainbows!”
で「現実をみなさい!」という意味になるそうです。

”chasing rainbowsでも諦めない”小説風ストーリー

夜風が冷たい。

今何時頃なんだろう
と思いながら
ゴミ捨て場に捨てられた
大量の残飯を眺めながら思う。

ここに捨てられた料理の量は
軽く見積もって
3日間ぐらいの食事の量に相当するのでは
なかろうか。
いや
美優の食事量だったら
1週間ぐらいもつかもしれない。

そんなことを
考えてしまうくらい
自分が空腹なことに
気付いてしまった。

思えば今日の朝
お味噌汁を飲んだきり
何も食べていない。

こんな風に
空腹と闘っている時は
長年勤めていた会社を辞めて得た自由と
資金繰りの不安を
天秤にかけてしまいそうになる瞬間が
あるけれど
なんとか思いとどまる。

ここで諦めてしまったら
一生後悔するのは
分かっているのだ。

分かっているけれど
前に進めない。

プロの通訳者として
フリーで活躍するために
長年勤めていた会社を
今年の春頃に辞めた。

会社員時代にも
休みの日には
ボランティアガイドや
単発の通訳のアルバイトはしていて
少し実績があったため
きっとどこかで
実力を過信していたのだ。

会社を辞めて
それが痛いほどわかった。

決まった日に
当たり前のように振り込まれるお給料だとか
ちんぷんかんぷんでも
スルーして生きてこれた税金のことなど
挙げればきりがない。

美優は滅多に落ちまない。
メンタルは強い方だと思うし
周りからも
楽天家だと言われる方だ。

柄にもなくこんなに落ち込んでいるのは
通訳学校で実施された
小テストの結果が思わしくなかったことに加えて
授業中に習った
”chasing rainbows"
というイディオムが
頭から離れないからだ。

「rainbowsという単語が使われているので
ポジティブな意味にきこえますが
そうではありません。
意味は
非現実的な夢や目標を追いかける
という意味です。
今回の小テストの結果が思わしくない方は
肝に銘じて
この言葉の意味を
しっかり覚えておくようにしてください。」

講師のいい方に
棘があるように響いた。
もちろん
その講師に
悪意があったわけではないことはわかっている。

むしろ
小テストの結果が思わしくないからこそ
気を引き締めて勉強しなければならない
というメッセージなのだと
分かってはいた。

そんなことをぐるぐる考えていると
アルバイト仲間の
三好さんがゴミ捨て場にやってきた。

三好さんは
物静かで
いつもとても冷静にみえる。
年齢不詳で
普段何をしている人なのかも不明で
謎に包まれている。

ゴミを捨てて
即座に立ち去るかと思ったら
三好さんは
煙草に火をつけて
一服し始めた。

リラックスしている三好さんの横顔を見て
美優は思わず
自分の抱えている不安と
”chasing rainbows"
について
ポツリポツリと話し始めた。

話終わっても
三好さんが何も反応をしめさないので
「変な子だと思われたかも。」
と思ってゴミ捨て場を離れようとしたら
ひっそりと
それでもはっきりした声で
「例え誰れかに
自分の一生懸命していることを
"chasing rainbows"だと言われても
最後までやり遂げようって思って決めたことなら
いいんじゃないでしょうか。
チャレンジもせずに諦めて
後悔する方が自分にとっては嫌です。」

そう言われて美優の心が
一気に軽くなった気がした。

「ありがとうございます。」
と笑顔で言うことができた。

ゴミ捨て場の扉を開けて
美優は思った。

アルバイトが終わったら
早く家に帰って
お風呂に入って
一生懸命勉強して
頑張ろう。
そう思えた。

-終-

*このお話はフィクションです。登場人物の名前は実在の人物と一切関係がありません。







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