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のほほん双六 #026 おはなし ブゥ家の三兄弟 07

第七話「ちりぢりばらばら」


老フクロウに化けていた【災い】が、ブゥブを連れ去って行ってしまった。

「なんで?」
ブゥブブが【災い】とブゥブが行ってしまった方向を見ながら何度も問うている。

ツキカゲが立ち上がる気配がした。
振り向こうとした時、景色がぐるりと回転して僕は地べたに倒れてしまった。
あれ?なんだか気が遠くなってきたぞ。
ツキカゲが石を手にブゥブブの方へ駆け出して行くのが見える。
「なんで?」
僕は気を失った。

『僕たちに何かあってもブゥブブブ、お前だけは生き抜くんだ。』
『そんな怖いこといわないでよ。』
『妖精たちには優先してブゥブブブを守るように言ってあるから。』
『嫌だよ!僕だけが助かったって、兄さんたちも一緒じゃなくちゃ…』

「兄さんっ!」
ぐぅぅ…まだめまいがする。イテテッ何これ?たんこぶ??

『まだ横になっていたほうがいいよ。』
妖精が食事の準備をしていた。いい匂い。
「えっ!」
あたりはすっかり日が暮れて、夜になっていた。

気分はまだ悪いけど、気になどしていられない。
「ブゥブ!ブゥブは?【災い】が連れ去っていっちゃったよね?あぁ、こんな悠長にしている場合じゃない、ブゥブブ!どうする?ってあれ?」
焚き火の近くには妖精ふたりと、カゴに入れられたヨツユしかいなかった。

「ブゥブブはどこ?ツキカゲは?」
『ここにはいない。オオカミはブゥブブを連れてどこかに行ってしまったよ。』
ヨツユが悲しい声で鳴く。

いろいろなことがいっぺんに起こって、わけがわからない。
ツキカゲはブゥブブとどこへ行ったのだろう?
【災い】の泉で待っていると言っていた声を思い出す。

相談をしたくても兄さんたちはここにいない。
涙がポロポロこぼれてきた。考えないと、どうするか決めないと…。
グゥーーー。僕のお腹が鳴った。こんな時に!

『食べて、キノコスープ好きでしょ。』
「ありがとう。」
心細くて悲しくて涙が止まらないけれど、こんな時でもご飯は食べられるんだ…って、ん?

どうして【災い】は僕たち3匹をいっぺんに喰わなかったんだろう。不老不死になれるチャンスだったのに。それに、

「君たち妖精の力で僕らのことは【災い】に見つからないって言ってたよね。」
妖精たちは僕の問いかけを無視し、自分たちが作ったスープを黙々と食べている。

返事はカゴの中から聞こえた。
「この妖精たち、まだ力が弱い見習いなのよ。そう老フクロウが言っていたもの。」
妖精が怒ってカゴを叩く。
「わっ、ダメだよ、そんなことしたら!」
「ピーーーーッ!」ヨツユが抗議の声をあげる。
「ねぇ妖精さんたち、なにか知っているのなら教えてよ。言えない、言いたくないことでもあるの?でもこの状況で黙っているなんてあまりにもひどいよ。」

チリンッ

どこからか鈴の音が聞こえた。
妖精たちが驚いて音がした方向を見ている。
誰かがこっちに来る?

僕は立ち上がり、近くにあったオタマを手に取った。何かされようものなら反撃するつもりで力を、震えて力なんて出てきやしないけれど、たとえボコボコにされたって僕は負けないぞ。兄さんたちを助けに行くんだから。 ーつづくー

イラスト(挿絵)

あーわわわっ

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