コロナ陽性者とツイートと大黒摩季の歌
私はプロレスを観るのが好きだ。中でも新日本プロレスを一番よく観ている。
その新日本プロレスのレスラーにコロナ陽性者が出た。
新日本プロレスではコロナ禍においても感染対策を万全に行いながら地方巡業も含めて興行を続けてきた。(移動も公共交通機関を使わず、鹿児島であっても巡業バスで移動されていた)
オフの日の行動も含めてよほど徹底されていたのであろう、レスラー、スタッフ含めて1人も陽性者を出していなかった。地方も周り、コンタクトスポーツでもあり、身体も鍛えている人達である中で、これは凄いことだと思う。
しかし、先日とうとう陽性者が出てしまった。
長い地方巡業の最終日を迎える日であったから、レスラーの疲れも溜まっていたであろうし、丁度全国的に感染者数や感染力の強い変異株が増加していた時期。色んなタイミングが重なってしまいここに来て、といったところなのかもしれない。
感染の疑いのある選手と濃厚接触者にあたる選手は当日急遽試合が無くなった。そして無くなった試合はタイトルマッチだった。
すると、この陽性者に関してTwitterがプチ炎上した。
陽性者の名前は公表されなかったのであるが、それについて「隠してるのはよくない」とかいったコメントがあがる。
そんな中、"陽性者かもしれない"枠に入っていた選手が、試合が出来なかったことに対するツイートをした。
誰か陽性者かわからない中での渦中の人からの沈黙を破るツイート。そこからみんなの憶測合戦でリプライが盛り上がりボヤがおこる。
続いて、人々の陽性者を特定しようとすることに対して、上記の選手が「犯人探し」とツイートしたことによって今度は火事が起きる。
数ヶ月前も違うことで、とあるレスラーへの誹謗中傷がTwitterはじめネットで凄かったこともあり、もうツイートしないで〜鎮火してくれ〜と思っていたら、それ以上の燃料投下はなくなったのでまずは良かった。
今回の火事で思ったことは、同じモノでも人それぞれの立ち位置によって見え方が違うのに、それを自分の位置からの見え方だけで言い放ったことが原因だっのかな、ということ。
陽性者のレスラーの名前を知りたい人の理由としては、①ゴシップ的に知りたい、②名前を知ってそのレスラーにケチつけたい、③推しレスラーが陽性者だったら…と心配だしもし陽性者だったら励ましたい、 とかが考えられる。
②は悪意があるが、①は善意も悪意もない。③に至っては善意というか応援の一貫だと思う。
だから、③の理由で知りたいというのは別に問題ないのではないか。
そして『"犯人"探し』って言葉。"犯人"ではないでしょ、って思う。
もし、ルール破って夜に大人数で居酒屋でうぇーいって宴会していたのだとしたら、まぁ…"犯人"って言われる要素はあるのかもしれない。しかし、今回は感染予防を徹底してたのに感染してしまったとか。
そしたらいったい何の罪に対する"犯人"なのだろうか。
感染したこと?タイトルマッチが急遽キャンセルになったこと?
どちらも罪では無いよね。
③の理由で知りたかった人は「"犯人"探し」とか言われてびっくりしてると思う。反対に「"犯人"探し」と言った人に対して、『え?あなたの中では今回の感染者は犯人という扱いなの?』と思ってしまう。まぁ、このタイトルマッチを楽しみにしていた人達にとっては心情的に「楽しみを奪った"犯人"」なのかもしれないけど…
陽性者の発表を聞いて『本人は感染しただけでも不安だろうに、タイトルマッチも中止になって、責任感じて精神的にもキツイだろうなぁ…』と思っていたので、突如現れた"犯人"という言葉にびっくりしたし、違和感を感じた。
私がそう思ったのは、陽性者の可能性があるレスラーが、みんな好きな選手だったから。私がそういう立ち位置だったからであろう。
これがもし、めちゃめちゃ嫌いで憎悪を感じるレスラーだったり(そんな人今のところいないけど)、東京から高い旅費を使ってそのタイトルマッチの為に観に行っていた状況であったなら、私は「"犯人"探し」をして、「②名前を知ってその人にケチつけたい」の側の人だったかもしれない。
(まぁ、色々な立ち位置があったとしても、「陽性者=悪者」とするのはやめましょうという世間の風潮もある中で、「陽性者=犯人」と文字化してしまうのはどうだったのであろうか、とは思うが…)
どんなことでも、自分がいる位置からの見え方だけではなく、隣からの見え方、向こうからの見え方、はたまた上から下から、斜めからの見え方、実際にその位置に立つことは難しくても、その位置からの見え方を想像する努力はしていきたいな、と思った出来事であった。
大黒摩季さんの「あぁ」という歌に以下の歌詞がある。
《人はどちらにつくかで、見方が変わってしまう あれは身を引いたのか、それとも逃げ出したのか》
自分の見え方と違う見え方をされて悔しい思いをした時に、この歌を思い出して「見え方は人それぞれだからしょうがない」と自分に言い聞かせている。ただ、自分は相手にそう思わせないようにしていきたいとも思う。なるべく想像力を膨らませて、色々な方向からの見え方を想像して。
今回中止になったタイトルマッチは、延期扱いになり、いずれどこかでまた行われるらしい。
ちょうど"ビッグマッチ"として扱われている5/29の東京ドーム戦が控えているので、そこでやってくれたらいいのにな。まずはそこまでに、新日本プロレス内でのコロナの鎮火と、世間のコロナが少し落ち着いてきていることを祈るばかりである。
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