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歌舞伎 戦国天正合戦絵巻「野田城の戦い」第二幕「信玄終焉の地の場」前半


野田城城主「菅沼定盈」の家臣 今泉四郎兵衛 

元亀四年、三方ヶ原で徳川軍を蹴散らし一か月にわたり野田城を取り囲んだ武田軍は、野田城の井戸の水源を断ち降伏を促す矢文を放った。矢文を持ち定盈に知らせるため家臣今泉四郎兵衛が花道から登場。

矢文を読み思案する野田城主「菅沼定盈」
矢文を読む定盈の奥方「専徳」

武田軍からの降伏条件「定盈一人の首を差し出せば、城兵の命を助ける」を読み、定盈は自分の命と引き換えに、妻と子供を助けようとする

今生の別れにと琴を弾く専徳 定盈は感極まり言葉を詰まらす

家臣今泉は「むざむざと殿を失い城を明け渡すのは悔しい、せめて一矢報いたい」と自分の策を定盈に申し出る。

信玄を野田城西の座頭崖に誘い出すという今泉の作戦に心躍らす定盈、専徳

今泉の作戦は、敵の言う通りに城明け渡しの段取りを整えたのち、信玄が毎夜毎夜龍淵(堀)の向こう側の勝頼の陣地にて笛の名人村松芳休の笛の音を聞きに来ているという場所に、昼間のうちに鉄砲の狙いを定め、笛の音で信玄を誘い出し、鉄砲を放つというものであった。

鉄砲の名人「鳥居三左衛門」


笛の名人「村松芳休」

「この作戦で戦の流れがが変わるかもしれない。わしは良い家臣をもった」と笑う定盈

信玄を誘い出す為に笛を吹く村松芳休
笛の音に誘われ、信玄登場

信玄は笛を聴き、芳休の笛を絶賛、この夜の笛は敵も味方をも癒し戦に明け暮れた我がをも包み込むような優しい音色だと言いながら、足元をみると足元に傷ついた子キツネがうずくまっているのを見つける。
家来に、手厚く介抱するように指示する。
優しい一面を褒めたたえる家臣に、無益な殺生はせぬものぞ、と諭す。

手負い狐が傷の手当てをしてもらう

早く塒に帰るように信玄に言われた狐は何度も頭を下げながら花道を去っていく。

子キツネ役は小学生

信玄は、家臣にそろそろ陣屋に戻るよう勧められ、所業は無常である。この世はいかなる時も静謐であらねばならぬ、と見得を切る!

鉄砲で狙われていることを知らない信玄


鉄砲に狙い定める鳥居三左衛門

いざ、殿の願い、わが想いのせ、種子島よ!信玄のもとに行くがよい!
太鼓連打と共に鉄砲が放たれる!

信玄が、野田城西、座頭崖で鉄砲に撃たれたという話は、地元には伝わっているが、信玄の死が鉄砲傷の為なのか、持病なのか判っていない。
歌舞伎はこの後、信玄が鉄砲で撃たれたか撃たれなかったかを伏せたまま舞台転換となり、後半に続く。