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短波ラジオを聞く趣味 BCL

BCLってご存知だろうか?
海外の放送を聞くことだ。
各国の局が日本語でも放送してくれていた。
今なら簡単にネットで聞くことができるだろうが50年くらい前は短波ラジオというものを使って聞いていた。
そのラジオで聞くこと自体を楽しむだけなのだがそのことをBCL(broadcast listening)と言っていた。
私は小学生でこの趣味にハマった。
当時は雑誌まであって、どの周波数でどの局が聞けるのかも出ていたし、人気のある局の紹介もされていた。
当時のラジオはデジタルではないので手で回して合わせる。
ほんのわずかなズレで聞こえなくなる。
雑誌には比較的受信の簡単な局とそうでない局などのリストも出ていた。
ロシアの放送局はいつも綺麗に聞こえていて、ケーキのコマーシャルで流れていたパルナスの曲を頭の中でうたいながら低めの女性の声を聞いていた。
難しいのはエクアドルの放送局。
雑誌にもなかなか聞くことができないと書いてあった。
ミラクルに聞けた時は体が一瞬冷えて震えたくらいだ。
とても小さな声で、わずかに日本語がかぼそく聞こえる程度だったが、確かに『エクアドルのキトからお送りしています』と聞こえてきた。
「入った…」
大きく騒げば振動でチューニングがズレるので顔だけでニヤリと感動していた。
イギリスはビックベンの鐘の音で始まっていた。
毎晩同じ時間にその響きを黙って聞いていたのを今でも覚えている。聞いているだけでイギリスへ行った気分になっていた。
オーストラリアはワライカワセミの鳴き声だったと思う。
ドイツ、ベトナム…たくさん聞いた。
聞くだけではない。
聞いたらそのラジオ局にレポートを送るのだ。
小学生でどの程度のものが書けたのか全く記憶にないがちゃんと返信が来た。
ベリカードと呼ばれる受信の証明書が届く。
その土地の絵葉書みたいなものが多かった。サインもされていたし、小さなプレゼントまでついている局もあった。
とにかく海外へ送ったり、海外から何か送られてくること自体が楽しかった。時間がかかるので待ち遠しくて郵便受けを毎日のぞいていた。

今はラジオの声が遠のいたり揺らいだりするなんてことはほぼないだろう。
スマホがあれば綺麗な音で聞けるし、簡単に世界と繋がれる。

小さな団地の一室から世界に思いを馳せてドキドキしていたことが懐かしい。

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