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小学校の思い出5 笑わせたいと心の底から思った

小学校2年生だったと思う。仲良くなった友達がいた。
私は毎日のようにそのHちゃんの家の前の公園に遊びに行った。

ある日その子が妹を連れてきていいかと聞く。
私はいいよと答えた。

当時は兄弟姉妹の面倒は見るのは普通だったし、私はどうせあんまり気にしないので全く問題なかった。

家から妹のKちゃんが出てきた。
カクカクしながら階段を降りてきた。どうも歩くのが苦手なようだった。話している言葉もわかりにくかった。

私たちを見つけて近寄るのも不安定。
それでも移動すると必ずついてきた。
そして何か話しかけてきていた。
何か一所懸命話してくれるのだがよくわからない。

するとHちゃんが説明してくれる。すごいな、わかるんだ、とちょっと尊敬した。

私とKちゃんはすんなりとは会話ができないけれど、Kちゃんが笑うとなんだかとても嬉しくなった。
元から細い目をさらに細めて笑う。
嬉しく嬉しくて、何度も同じことをして笑わせた。
草を引っ張ってずでーん、と言ってみたりのような他愛もないこと。
ドリフターズのギャグなんかも言ってたと思う。
Kちゃんもずっと同じことで笑ってくれていた。

ある日いつものように遊んでいると、Hちゃんが妹のKちゃんに、「ダメだって。それは。」と何度か言っていた。

「どうしたの?」
と聞くと、

「おんぶしてほしいって言うのよ。Kが。」

どうも私におんぶをしてもらいたいらしい。

私は俄然張り切った。
おんぶをしようとしゃがんだ。
背中にもたれてきたので、よし!と持ち上げると、とても軽かった。
軽すぎて斜め前に落としてしまった。

幸いケガもなかったが慌ててごめんねとあやまった。
どうしようと思っているとKちゃんはまた背中に回ってきた。
暗黙の了解で許してもらえた。

今度は落とさないようにとゆっくり立ち上がった。
無事おんぶができた。

Kちゃんはその日ずっと私の背中でご機嫌に笑っていた。

それから一年も経たないうちに、2人は引越して行った。

ちゃんとお別れをしたのか、まるで覚えていない。
ただHちゃんが目を伏せながら引っ越すことを伝えてくれたことだけ覚えている。

あの頃は純粋にKちゃんが何を伝えたいのかを知りたかった。
単なる言葉の聞き取りではなく。
そして私はあの笑顔をずっと見ていたかったんだと思う。

もうじゅうぶん大人になったけれど相手が本当に何を伝えたいのかをちゃんと聞くことができているだろうか。

Kちゃん、今でもあの頃みたいに笑ってくれますか?

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