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どうにもならないことがあるという話

お気に入りのパン屋さんが閉店した。

若いご夫婦で経営されてるとても小さなお店で、5人も入ると身動きが取りづらく目当てのパンにたどり着くのがやっとのそんなお店だけれど、町で美味しいパン屋さんと言えば必ず名前が挙がり行列が出来ることもしばしば。
ハードパン、中でもミルクフランスが人気でいつも売り切れでなかなかお目にかかれない。
私が好きなのは入ってすぐ右側にあるコロッケバーガー。ゴマが上にのったバンズ、トロトロにとろけそうなポテトコロッケ、千切りキャベツ、そして甘さと酸味のバランスが絶妙なソースで、こうして思い出すだけでも顔がにやけてくる。

このパン屋さんの近くにちょっと有名な神社があって、お願い事があったり気持ちを切り替えたいと思ったときに訪れる「行きつけ」の神社なのだが、お参りした後にこのパン屋さんに寄るのがささやかな楽しみだった。
中途半端な時間に行くとコロッケバーガーも売り切れのときがあって、心配性でせっかちな私は先にパンを買って袋をぶらぶらさせながらお参りに行くようになった。(そうでもしないと「コロッケバーガーがありますように」とお願いをしかねなかった笑)

そんなお店がなくなってしまったのだ。

あとから知った所によると年明けから臨時休業が続いていて、そのまま閉店になったらしい。冬は冬眠していて神社に行かなかったから、もし知らずに行って閉店の張り紙を見たらどんなにショックだったろう。
経営不振はありえないのでご家庭の事情か何かなのだろうか。

この年になると、どんなにがんばってもどうにもならないことがあるということに気付かされる。
「努力は必ず報われる」
努力することは大事だけど、報われないことのほうが多いのだよ。(口に出しては言わんけど)
それでも、と奮い立ち踏ん張るのがいいのか、流れに任せて気持ちに折り合いつけて生きていくのがいいのか。


せめて最後にもう一度訪れたかった。
SNSでも「残念」っていうお客さんの書き込みが何件かあった。
でも店主さんが一番無念だろう。
ぜひまたどこかでお店をオープンしてほしい。
私は店の前で足をバタバタさせる訳にもいかないし、また会える日を待つしかない。

でも、その日までよそでコロッケバーガーは食べないでおこう、とちょっとだけ抗うことにする。

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