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世界一の調味料

私は料理が苦手だ。
31年生きてきて自分の料理が美味しいと思えたのは片手でおさまるくらいしかない。
それでも、夫氏は毎回「美味しい」と最後まで食べてくれる。
夫氏が食べてくれるから私は料理が作れる。自分のためにしようとは思わないタイプだ。

だからパン学校で学び始めて、色んな料理を目にしたり、外食に出かけたりする様になって、自分がその世界に足を踏み入れたことにずっと違和感があった。
自分に美味しいパンが作れるのだろうか、納得するパンを作れる日が来るのだろうか。
更にパンに合うお惣菜を作ろうとしているなんて、自分の能力を過信しすぎてやしないか。

美味しいものを食べれば食べるほど、差を感じる日々。
それを埋めるように、色んなパン屋のパンを口にしたり、本を読んだり、
漁るようにしてレシピを見ては試し、料理教室に行き、薬膳を学んでみたりした。
それは全然無駄ではなくて、もちろんレベルアップできていたと思う。
パンは焼き色が安定してきたし、味の変化もわかる様になった。
毎日のご飯は盛り付けを意識できる様になったし、味付けがシンプルになった。食材にも気を使える様になった。
それでも、心の中からは「〇〇点だな〜」なんていう声が聞こえてくる。
いつももう一味、何かが足りなかった。

ある日考え事をしていた時にふと、
美味しいご飯を作る人はみんな、料理が好きな人だな〜と思った。
ものづくりに共通している「いいもの」
これには作り手の「楽しい」「好き」が詰まっている。
自分が自分の一番のファンであるということだ。失敗も成功も全部愛おしいと思うこと。それが全力で伝わってくる。

多分、私に足りない"もう一味"はこれだということに気がついた。
いくら勉強をして、いくら技術を身に付けても使えない調味料。
自分が作った料理が、この世でいちばん美味いと思うこと。

人間の脳は簡単に騙すことができるから
ひとまず、毎日目にする冷蔵庫に
「今日も私のご飯がいっちばん美味い!世界でいちばん美味い!」と書いた紙を掲げた。
ご飯を食べながら「いやいや、天才かよ!」と大絶賛してみた。

世界一の調味料を使い始めて1週間。
夫氏が「味付け、美味しくなったよね」と言った。
えええ〜??と言いながら顔はデレデレ。
でもぶっちゃけ、味付けはそんなに変えてない。
変わったことといえば、食材を丁寧に扱う様になったことだ。
これから自分の口に入る食材をどうしたら一番美味しい状態で食べてあげられるのか、そう思える様になって、焼き方や切り方など細かい部分を大切にできる様になった。特性を活かして調和させたいと思ったら、自然とそうなった。
どこか人間関係と似てるよな〜、なんて思う様になってからは段々と料理が家事から趣味に変わって行く感じがした。

人の想いって形にするとこんなにも変化する。
特に料理は、味覚を通して身体全体に影響するものだ。
だからこそ、いいエネルギーを注ぎたい。
この調味料には、いいエネルギーをたっぷり注げる魔法がかかっている。
使いこなせるように、日々練習あるのみ〜!

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