「ザッツライフ」

 
キャラクター
 
「愛華(あいか・主人公・17)」高校二年生
髪型:髪は染めていない。ロングの黒髪だったが、環奈に髪を切られて短髪になっている。
体つき:痩せ型の153センチで貧乳。
利き手:左手 
目つき:「きゅうくらりん」に出てくる少女をイメージ。
その他特徴:学校にいる時と母親の前ではなるべく笑顔でいるようにするが、たまに消えて
しまう。鏡に笑顔を描いてからは一回も笑顔を崩さない。
 
「母親(ははおや・48)」
髪型:ショートカットで茶髪に染めているが、染まっていない白髪が少し見える。 
体つき:平均体型で156センチ、Dカップ。 
利き手:右手
目つき:吊り目 
 
 
「来未(くるみ・17)」
髪型:髪は染めていない。ロングの黒髪の地毛。 
体つき:165センチ貧乳でスレンダー。
利き手:右手 
目つき:吊り目
その他特徴:クールな性格で、優しく愛華を幸せにしたいと考えている。
 
「環奈(かんな・17)」
髪型:ショートボブで金髪に染めている。
体つき:160センチの巨乳で尻も大きくむちむち。
利き手:右手(ネイルはしておらず、化粧もしていない)
目つき:垂れ目 
その他特徴:ギャル。
 
 
 
 
 
 
「that’s life」
 
   
○真っ黒な空間
   小さい愛華(10)が辛い表情をして丸まっている。
   愛華に不適な笑みを浮かべている母親(48)、来未(17)、環奈(17)。
愛華「どうして私をいじめるの?」
   膝を抱えて俯いている愛華。
環奈、来未「これは虐めじゃないよ」
母親「愛華の幸せの為よ」
 
○二階建ての愛華の家・リビング(朝)
   愛華(17)は父親の仏壇で手を合わせている。
愛華「おはよう、お父さん」
   立ち上がり、母親の元に向かう愛華。
   愛華が笑顔でブランドのバッグを手に持っている。
愛華「お母さんこれ、欲しがってたでしょ?」
愛華「初給料で買ったの」
   愛華は母親に笑顔を見せながらバッグを渡す。
   母親はバッグを手に取り愛華の顔を一度見る。
   不機嫌な顔を浮かべ、優しく怒る。
母親「馬鹿じゃないの? こんなのにお金使って」
母親「バイトばかりしないで友達とも遊びなさい」
   愛華の笑顔が消え、俯く。
愛華「はい」
母親「友達とは絶対に喧嘩しちゃだめ、仲良くね」
   愛華は一度何か言いかけようとして口を開けるが、飲み込んで口を閉じる。
愛華「…はい」
母親「ご飯できてるからね」
愛華「ごめん、私お腹減ってない」
母親「ダメよ、ちゃんと食べなさい」
愛華「…はい」
   朝ご飯を食べる愛華。
  朝ご飯が半分なくなる。
   全部完食する愛華。
愛華「ご馳走様でした」
母親「はい」
 
 
○同・トイレ(朝)
   トイレで食べたものを吐き出す愛華。
   辛そうな顔をしている愛華。
 
○学校の教室。
   窓側の席に座り、漫画を読んでいる愛華。
来未「愛華ちゃんダメだよ、こんなの読んじゃ」
   クールな顔をした来未は、ニヤッとしながら愛華の読んでいる漫画を取り上げる。
環奈「そうだよ、もっと自分磨きしないと」
   愛華の前に楽しげな笑顔で立ち、机に手を置いている環奈。
愛華「漫画家になりたいんだよね」
   引き攣った笑顔の愛華。
来未「愛華ちゃんオタクと思われるよ」
愛華「でも…」
環奈「私たちは愛華ちゃんの幸せを考えてるんだよ?」
   愛華は、来未と環奈の顔を見る。
愛華「…」
愛華「そっか、ありがとう」
   笑顔を二人に向ける。
   担任の男性先生が教室に入ってきて黒板の前に立つ。
先生「大事な話がある、席につけ」
先生「昨日、自殺した生徒がいる」
   淡々と話した後、先生は遺言書を確認する。
黒板に『これが人生。唯一の幸せを』と描く。
先生「お前らに言っとくが、自殺は幸せじゃないからな」
先生「お前らはちゃんと生きろよ」
   話が終わると、颯爽と教室を後にする先生。
   すぐに愛華の元に帰ってくる来未と環奈。
愛華「なんで自殺したんだろ」
   黒板に書かれた文字を眺める愛華。
来未「死んだら辛いことから解放されるからじゃない?」
来未「唯一の幸せって言ってたし」
   綺麗にネイルされた指を眺めている来未。
愛華「唯一の幸せ…」
環奈「あー私も幸せになりたい!」
   愛華の机で脱力し、ため息混じりに話す。
環奈「誰か私を幸せにしてくれないかな」
愛華「今は幸せじゃないの?」
   環奈の顔を見て不思議がる愛華。
環奈「幸せだけど、なんか違うんだよね」
来未「愛華ちゃんは?」
   愛華の横で腕を組んでいる来未。
愛華「私は…」
   下を向く愛華。
環奈「幸せに決まってんじゃん!」
   体を起こす環奈。
環奈「愛華ちゃんの幸せの為に私らが頑張ってるんだから」
   手をグッと握って笑顔を見せる環奈。
愛華「なんで私にこんなことするの?」
   愛華は引き攣った笑顔で環奈の顔を見る。
来未「愛華ちゃんには幸せになってほしいからだよ」
来未「女の幸せは恋することだから」
   愛華は困惑しながら来未のクールな顔を見つめる。
愛華「恋が幸せなの?」
環奈「そうに決まってるじゃん」
環奈「だから女は努力して綺麗に見せようとするんだから」
   環奈はハサミを取り出す。
環奈「ってことで今日は髪を切ろう!」
   環奈はハサミを愛華の前にだし、チョキチョキする。
愛華「え?」
   ハサミを見る愛華。
環奈「今の時代はショートだからね」
愛華「でも私、長い方が…」
   愛華は引き攣った笑顔を環奈に見せる。
環奈「いいや、絶対ショートの方がいいよ!」
   環奈は愛華に笑顔で返す。
愛華「でも…」
来未「これは愛華の幸せの為なんだから」
   来未は愛華の頭に手を置く。
愛華「…わかった」
 
○愛華の家(夕方)
   辛い表情をしている愛華。
   玄関で一度ため息を吐いて無理やり笑顔を作る。
   愛華は笑顔でリビングのドアを開ける。
愛華「ただいま」
母親「おかえりなさい」
母親「髪切ったの?」
愛華「うん、友達が切ったの」
愛華「私の幸せの為なんだって」
母親「よかったわね、いい友達を持って」
母親「あなたは幸せ者ね」
   愛華は母親の言葉に笑顔が一度消える。
母親「聞いたわよ自殺した子がいるって」
   愛華は母親の顔を見て、笑顔をもう一度作る。
愛華「その子、自殺が幸せなんだって」
母親「変わってるわね」
愛華「でも、死んだら辛いこと無くなるよ?」
母親「そうかもね」
   愛華は母親が自分の思う幸せに賛成してくれたと思い、嬉しくて笑みを浮かべる。
母親「でも自殺って、結局は現実から逃げただけだからね」
愛華「逃げちゃダメなの? 現実って辛いでしょ?」
愛華「やりたいこともできなくて、辛いことばっかだよ?」
母親「辛いことの終わりには幸せがくるものよ」
   愛華は笑顔のまま唇を強く噛む。
母親「愛華も勉強してたら将来幸せになれるからね」
愛華「お母さんは今、辛くないの?」
母親「うーん、辛いことばっかりだけど…」
愛華「…私勉強してくる(少し怒っている)」
   笑顔を崩さない愛華。
母親「あ、愛華」
愛華「ん?」
母親「愛華はお母さんより先に死なないでね」
   愛華は母親の言った言葉が信じられず怒りを感じ、驚いた表情になる。
愛華「…うん」
 
○同・愛華の部屋
   部屋のドアを閉め、ドアにもたれかかる愛華。
   2階にある八畳程の部屋は片付いており、窓から夕陽が差し込み部屋がオレンジ色に染まっている。
愛華「私は幸せ者」
   机に置いていた漫画をゴミ箱に捨てる。
愛華「私は幸せなんだ」
   自分で描いた漫画ノートをゴミ箱に捨てる
愛華「私は幸せな環境にいるんだ」
   机から赤ペンを取り、部屋に置かれた等身大の鏡の前に立つ。
愛華「私は幸せ」
   辛い顔をしている愛華。
   自分の顔が写っている鏡。鏡に映る自分の顔に、幸せそうな笑顔の絵を自分の顔をなぞって描く。
   一度笑顔を作る。
 
○同・リビング(朝)
愛華「お母さん、おはよう」
   愛華は制服を着ており手に通学バッグを持ち、笑顔を浮かべている。
   母親はその笑顔をみて不思議がっている。
母親「おはよう、なんかあったの?」
愛華「いいや、何もないよ」
母親「朝ご飯できてるわよ」
愛華「ありがとう、でもごめん」
愛華「今日、日直なの忘れてたからもう行かないと」
母親「でもご飯は」
   食器を洗うのを止める母親。
愛華「ごめん、もう行くね」
   笑顔を作り続け、母親に背中を見せる。
母親「愛華、朝ごはんは食べ」
   ローファーを履き、玄関のドアを開ける。
愛華「行ってきます!」
   愛華は母親の話を聞かず、すぐ外に出る。
   初めて愛華が母親の言うことを聞かないことに、困惑した表情のお母さん。
 
○学校の教室(朝)
   愛華は席に座り、背筋を伸ばして綺麗な姿勢で無抵抗なまま笑顔を作っている。
   愛華は環奈に化粧されている。
   ちぎれそうになっている紐(愛華の精神状況を表したもの)
 
○愛華の家(朝)
愛華が笑顔を作り、朝食を食べている。
 
○同・トイレ
   食べた朝食を吐き出している愛華。
   紐が少しずつ切れている。
   
○学校の教室(朝)
笑顔で授業を聞いている愛華。
   紐がプツンと切れる。
   愛華は座ったまま横に倒れる。
 
○真っ黒な世界
   真っ黒な空間に小さく丸まっている少女。
   消えそうになっており、その少女を愛華が立って見ている。
愛華「私…なの?」
   愛華は立ち尽くし、手にナイフを握っている。
    愛華は自分が握っているナイフを見る。
愛華「え? ナイフ?」
   少女は辛い表情をして涙を流している。
   少女の周りには母親と環奈、来未が、少女に不適な笑みを浮かべ、虐めている。
少女「もう辛いよ、死にたいよ」
少女「なんでみんな私を否定するの?」
少女「なんで誰も理解してくれないの?」
少女「なんで幸せになっちゃいけないの?」
少女「なんで私は生きてるの?」
少女「なんで、みんな私をいじめるの?」
少女「なんで私は私をいじめるの?」
   三人は少女を笑顔で蹴っている。
母親「お母さんは愛華の幸せの為に…」
来未、環奈「私は愛華ちゃんの幸せのために…」
愛華は笑顔の母親と環奈、来未の顔を見る。
   愛華は握っているナイフを辛そうな表情でナイフを見る。
   愛華は少女にナイフを刺そうと近づく。
少女「助けてよ」
   その場で固まる愛華。
母親、環奈、来未「私は幸せのために」
   これまで三人が、愛華に幸せを押し付けていたことを理解した愛華は一瞬口を開ける。
愛華「…そっか」
   愛華は無表情で笑顔の三人を見る。
愛華「みんな幸せを押し付けてたんだ」
   少女は愛華の顔を見る。
少女「幸せになりたいよ」
愛華「うん、幸せになりたいよね」
   愛華はナイフを強く握り、母親と二人を切り、ナイフを捨てる。
   愛華は優しく微笑みながら少女に抱きつく。
愛華「ごめんね、もう大丈夫だよ」
   涙を流し始める愛華。
愛華「すぐ幸せにしてあげるからね」
 
○病院の病室(昼)
   十階建ての病院。
   病室のベッドの上で眠っている愛華。
   横には母親が椅子に座っている。
母親「夫が亡くなってから」
母親「本当辛いことばっかり」
   母親がハンカチで涙を拭っている。
   愛華の手を握っている母親。
   愛華は目を覚ます。
愛華「お母さん…」
   椅子から立ち上がり愛華の顔を心配そうにみる母親。
母親「愛華!」
   愛華も心配げな顔で母親を見返す。
愛華「辛いの…?」
母親「辛いわよ、愛華まで死んだらって思うと」
   出てきた涙を拭う母親。
   ゆっくりと起き上がる愛華は口につけられている酸素マスクを外す。
   愛華はこれまでの感謝を込めた笑顔を見せる。
愛華「今までありがとう、お母さん」
   母親は涙が流れながら困惑した表情。
母親「どうしたの急に?」
   愛華は腕につけられた点滴、指に心拍を測る機械を全て外す。
愛華「私がお母さんを幸せにしてあげる」
愛華「辛いことなんかもう無いように」
   愛華はベッドから起き上がり母親に近づく。
母親「愛華?」
   愛華は笑顔で母親の首を強く絞める。
母親「さ…ち」
   母親は涙を流し、その場に倒れる。
来未「愛華ちゃん…」
   その光景を見ていた環奈と来未。
   環奈は声を出さず、驚きながら口に手を当てている。
来未「何…してるの」
   来未は理解できておらず、困惑している。
愛華「母さんを幸せにしたんだよ」
   来未が母親の元に近寄る。
愛華「二人も幸せにしてあげる」
   愛華は環奈の首を思いっきり握り締める。
   未だに固まっている環奈。
愛華「幸せになりたいって言ってたよね?」
来未「さち…ちゃ…」
   涙を流しながら苦しんでいる来未。
環奈「やめて…」
   環奈は硬直が解け、来未を助けようと足が前に一歩出る。
環奈「やめて‼︎」
   環奈が大声で叫びながら走り、愛華を思いっきり腕で押し飛ばす。
   愛華は来未の首を放し、窓に突っ込む。
   愛華はそのまま窓ガラスを割り、外に放り出される。
愛華「やっと幸せになれる」
   窓ガラスの破片が太陽に反射され、星のように見える。
愛華「綺麗…」
   愛華は幸せになれると感じ、初めて心の底から笑顔になる。
   ドンッ‼︎と音がして地面に叩きつけられる。

#創作大賞2024

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