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取材日記 人を呪わば穴二つ

 バブルが弾けた後の話です。経営不振で倒産寸前の不動産会社が「呪い3点セット」」という商品を通販に出して大儲けしていたんです。それには藁人形、五寸釘、木槌が入っていて、呪いの手引書まで添付してありました。値段は19800円。

 とにかく、毎日のようにそれは飛ぶように売れて、社長が奥様とお子さんを使い、毎晩徹夜に近い状態で発送したそうです。なんと、年間数千万円の利益を出していたのでした。これで味をしめた社長は「呪い代行」を始めます。呪いたい相手の名前を教えてもらえば、深夜の2時に藁人形に釘を打ち込んでくれるというサービスでした。もちろん、忙しい社長がそんなことをするわけもなく、何もせずに代行料金2万円を受け取っていたのです。

 取材中にも事務所には、依頼者からひっきりなしに問い合わせの電話がかかってきました。 そのたびに彼は対談を中断し「今必死に呪っています。もうすぐ結果出るので、お待ちください」と何度も同じことを言って…。

 僕は世の中にこれほど人を呪う日本人がいるのかと驚きました。社長に聞いたところ、呪いセットと代行、両方とも購入者の9割が女性だとか。内容としては、二股かけられていた、恋愛感情絶頂期でフラれた、遊ばれて捨てられたなど、恋愛絡みの恨み。その他では義理父に犯されたなどの性被害、だんなに生命保険をかけている奥様もいました。

 だけど、呪うのはよくないことです。恨みのエネルギーが強いと、どんどん運は逃げて不幸になってしまうんです。やはり、「人を呪わば穴二つ」という言葉は本当なのでしょう。誰かを恨んでいるときの顔を鏡で見たとき、きっと美しい表情にはなっていないはずです。怒りや不幸オーラを出している人に、いい人は寄って来ないものです。

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