キッズリターンと若林と春日
オードリーのオールナイトニッポンが好きです。
若林の話は面白いし、彼のナイーブで、シャイなところ、暴力性を秘めている部分にも共感する。
春日は春日で全然違う性質の人で、そのマイペースさとキャラクターの良さがとても良く、でこぼこでちぐはぐな二人の出す空気が一種の快楽をもたらしてくれている。
個人的な理由としては、私がオードリーの2人と同い年、ということもあると思う。(年がばれる)
若林と春日は中学からの同級生で、高校時代に同じアメフト部だったことから親しくなった二人だ。
彼らを見ていると、私はキッズリターンを思い出す。
1996年公開の、北野武監督の映画だ。
若林と春日は当時高校生で、キッズリターンを観に一緒に映画館へ行ったのだった。マサルとシンジ、主役二人と同じ年頃の若林と春日、優等生とは言えない二人だったから、映画に共感したり感動したりしたのだろうと想像する。
キッズリターンを観たあと、興奮しながら帰っていった高校生だった二人の後ろ姿が見える気がする。
彼らはいまだに、キッズリターンのラストシーンのセリフをよく口にする。「まだ始まっちゃいねえよ」という有名なセリフだ。
彼らが嬉しそうにこのセリフを言うと、私も90年代後半に引き戻されるような錯覚を覚える。
私の中で、彼ら二人は学ランを着た男くさいさえない高校生で、私もその時代の空気に一気に引き戻されていってしまう。
若林は江戸っ子で、その童顔とは不釣り合いな辛辣さや皮肉屋な性格を秘めている。それでいてナイーブでピュアである。そんな彼がビートたけしに惹かれたのは理解できる気がする。
ビートたけし、彼がテレビで輝いていてスターだった時代を知っているのは、我々が最後の世代かもしれない。
たけしの映画なら観に行こうぜ、と若林と春日は映画館へ行ったのだろう。
あの自転車の二人乗りも真似しただろうし、ラストシーンのセリフを二人で嬉しそうに真似しただろう。そんな10代の彼らが目に浮かぶ。
さて、彼らはマサルとシンジではなく、漫才師になった。映画のなかで最終的に成功する地味な二人組と同じである。
そして、来年東京ドームでイベントをすることになった。
野球が好きな二人でもあるので、イベントが決定してから二人はとても楽しそうだ。(野球が好きなのも、もと男の子、という感じがしていいんですよね、オードリーは)
そのイベントのテーマソングを星野源が作成した。その曲が、12月2日のラジオ内で発表された。
オードリーという二人をよく表した曲と歌詞で、感動してしまった。
運命なんてクソだわ
別に好きなわけじゃない
波の数がたまたま合うだけ
という一節があり、「運命」なんてくさいセリフを言ったら「ダセェな!」と言いそうなオードリーをまさに表している歌詞で痺れた。
彼らは別に分かり合えてるわけでもないし、相手が好きなわけでもない。たまたま近くにいて、ウマがあって、ラジオというオモチャで毎週喋っているだけだ。楽しいからやっているだけ。その先の何かをつかもうとか、そんなことはどうでもいいのだ。やりたいからやってるだけなのだ。そういう姿勢がクールなのだ。
歌の中に、
俺らまだ始まってもないんだ 嘘さ
例の映画じゃないんだから
という一節があって、
キッズリターンだ!!と嬉しくなった。
彼らは1996年にダサい学ランを着てふざけてはしゃぐ高校生二人であり、マサルとシンジであり、しかし最後に成功した地味で陰キャなあの漫才師であるのだ。
楽しいからやってるだけ、やりたいからやってるだけ、その姿勢のまま、唯一無二の芸人として歩み続けていってほしい。
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