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【エッセイ】立候補した! 理由

最初に断っておくと、国政でも地方自治でもない。
私が体験した唯一の選挙経験は、中学校の生徒会だ。
目新しいことには何でも飛びついてしまう私は、生徒会選挙に
興味津々だった。
かといって、自分から名乗りを挙げるほどの度胸はない。

ホームルームの議題は、わがクラスからも生徒会役員を出そう! みたいなものだった。
誰か推薦してくれないかなという下心を隠しつつ、臨んでいた。

出ました、出ました、私の名前。
決をとったところ、私に決まった。
「できるかどうかわからないけど、私でいいなら、やります」
とか何とか言ったと思う。
まさか、「待ってました!」というわけにもいかないではないか。

一応、立ち合い演説会も行われた。
私は、その気になって、全校生徒の前で、それらしい演説を行った。

で、本選挙は、落選。
前日、たまたま訪れた職員室で、選管担当の教師が私を見かけると、言った。
「惜しかったな、次点だったよ。あと十数票あればな」
明日、どんな顔をして学校に行けばいいんだろう。
生きていたくな~~~~~い。

とはいえ、死んじゃうわけにも行かず、度胸もない。
朝になったので、しかたなく、とりあえず学校に行った。
慰められるほど、私の心のなかは惨めさが増幅されていた。

当選した子は、カワイイ。少なくとも、私よりずっとカワイイ。
性格もいい。私が勝っていたのは唯一、体重だけだ。

そもそも知名度で負けていた。
その中学校は95%が、1つの小学校の出身者だ。
見た目でも性格でも勝っている当選者は、小学校1年生からの
同窓生が95%いるということだ。
対して、私は、小学校性のとき、他県からやってきた転校生だ。

私だって、私より当選した子のほうに、間違いなく投票する。
それなのに、なぜ、クラスメートは私を立候補者として選んだのか!?
理由は、恋。
私は生徒会長に恋をしていた。
「会長さん、カッコイイ」
誰彼かまわず、吹聴していた。

恋を叶えてやろうなどという健気な動機ではなく、おもしろがって
選んだのだ。
生徒会なんて、まったく興味もなく、個人的欲望のために
生徒会を利用したのだから、落選したのも自業自得なんだけどさ。

しかしだ、大人の選挙、国政とか地方自治選挙でも案外、不純な動機から
立候補している人って、多いんじゃないかしら。
政治なんて興味もなく、まったく知らないのに……。




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