症例: 慢性経過の皮疹と下肢の痺れ

症例: 50歳台の中年男性. 主訴は下肢の痺れ

紹介までの経過
 2ヶ月ほど前より右足裏の痺れを自覚した. 足裏全体にジンジンとする持続的な痺れであった. その後左足指先にも同様の痺れが出現し始めた.
 近隣病院での精査にて糖尿病やビタミン欠乏は認められず. 腰椎にも異常は認められなかった. 筋力低下は認められない.
 体幹の赤褐色の皮疹が認められたが, これは少なくとも4年前には認められていた. 範囲や数は増えていたとのこと.
 また, 同時期(4年前)よりじん麻疹も頻繁に生じるようになった. ストレスや疲労時に生じ, 特定の食事や環境には関連しなかった.

皮疹の例(画像は論文から

近医での血液検査では,
・CRP 1.2mg/dL程度の持続的上昇を認め, TP 9.6g/dL, Alb 3.4g/dLとTP/Alb解離も認められた. 
・貧血や血小板減少などの血球減少, 腎障害, 肝障害は認められず.
・一通りの自己抗体検査も全て陰性であった.


当院紹介後の検査

身体所見
・身体所見からは上記皮疹以外に特記すべきものは認められず. 肝脾腫や末梢リンパ節腫大も認められなかった.
・下肢の痺れの範囲は右足裏全体と左母趾に限局しており, 増悪は認めなかった.
・皮疹は楕円形の褐色, 赤褐色の皮斑であり, 一部で隆起, 浸潤を触れた.
・皮疹周囲を擦過すると, その後発赤, 腫脹し瘙痒感を認めた(Darier徴候)

検査所見
・血液検査では, IgG 4200mg/dL, IgA 370mg/dL, IgM 56mg/dLとIgGの上昇を認め, 免疫蛋白電気泳動の評価にてPolyclonalであった.
 また, CRP 1mg/dL前後で推移していた.
・胸腹部CT検査ではリンパ節腫大や骨病変, 肝脾腫など認められず.


診断検査

・皮斑部の皮膚生検を行ったところ, 真皮層において血管周囲, 神経周囲に顕著な形質細胞の増生が認められた. 一部血管壁への浸潤, 血管炎所見も認められた.
・形質細胞の形態は明らかな異常は認めず, κ/λにも偏りは正常範囲であった.
形質細胞集塊のなかには肥満細胞も認められ, 著明とは言い難いが軽度の増加が観察された.
・骨髄検査では異常形質細胞の増加は認められなかった. 

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診断名と解説は以下

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