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【エッセイ】蛙鳴雀躁 No.20

 ひと月ほど前から、腰痛に苦しむ福島県出身のご老公は、神戸在住の悪代官のババァの顔さえ見れば、黄門サマが印篭を見せつけるがごとく、「アンタのやかましい声が、骨に沁みる」と、悪代官の声に災いが宿っているかのように脅す。「アタタタ……」という悲痛な呻き声も忘れない。
 しかし、スケさん、カクさんのいないご老公は、一人で三ノ宮の「安心クリニック」へ行き、痛み止めのブロック注射を打ってもらい、すこしラクになった言ったのも、つかのま、スーパーで重いものを持ち、ふたたび元の木阿弥に。安心はいっときのことでした。
 で、またもや、「アンタが隣で、しゃべりつづけるから、余計に、なおらん」と言ってパソコンの前から退散。

 しんぼうのないヤツや。

 悪代官はしぶしぶパソコンの電源のオンとオフを習い、コメントだけは自分で書くようになりました。
 亀の子そっくりのマウスの右を、人差し指で二度、押せないことにかわりない。
 ところが、薬指で左を押せば、「開く」という文字が一番うえに出て、それを押せばnoteの画面が出るとわかる!
 なんで最初から、それを教えてくれへんねん!!

 悪人を成敗する常識人がいなくなると、どうなったか。
「失礼なことは書くな。だれも意見を求めてない」と言われなくなると、朝な夕なに、パソコンの前に座り、コメントを書きまくる。
 絵文字だらけのぺこらちゃんや、やまいに苦しむ天使のモモちゃんに出会って大笑いしたり、泣いたりと忙しい。文字だけなのに心許せる友達ができると知って、有頂天。
 反面、ビュー回数もスキもコメントもどんどん減少。
 これでいいのか、悪いのか。ハムレットの心境です。
 いつまでも、本性を隠すわけにもいかず、イバラの地金が文章に出てしまうんですワ。
 一例をあげれば、ご苦労なさった過去のお話を読ませていただいたとき、文章がすばらしかったので、「おもしろい!」と書いてしまう。男性同士の恋愛話と勘違いし、「理想です」とコメント。
 これって、ダメなんでしょうかね。いつわらざる心境なんですが、あきまへんか? 一行半書いたコメントに、「参考になります」とコメントが返ってくると、ちゃうやろと思ってしまう。で、早速、「儀礼的な文章は人に伝わらない云々」と余計なことを書く。
 嫌われるとわかっているが、やめられない。
 ご老公という抑止力がないと、どこまでも暴走する。

 なんでこうなるのか?

 子供が小学生のとき、同じクラスの女の子のお父さまがお亡くなりになられたのです。
 お葬式に参列させていただいたのですが、お経をあげにいらしたご高齢のご住職が、小柄で痩せ細った体を大きく左右に揺らしなから入ってこられたのです。
 振り子時計を見るようでした。
 どんなに我慢しても、笑いがこみあげてとまらなくなりました。そして、いよいよお経がはじまると、笑いを堪えることが不可能になったのです。
「南無妙法蓮華経ォーオ、ゴフッ、ゴフッ、ゴホン、ケェーッ……」
 いま思い出しても、笑ってしまうのです。
 うつむいて肩をふるわせていました。前列に担任の先生がいらして、振り向き、しげしげと私をごらんになるわけです。
 娘たちも神妙な顔つきで座っています。
 大勢の参列者の中で、私一人、両手で口を押さえていなくてはなりませんでした。
 お気の毒に感じる気持ちと、目の前の抱腹絶倒の出来事とが同時に起きると、理性より感情を私の偏った脳は選んでしまいます。

 父は一度だけ、言ったことがあります。子供の教育に失敗したと。
 このときは、自転車になんとか乗れるようになった小三の頃、坂道を下っていて、ブレーキをかければいいものを、そのままの勢いで、お葬式の列に突入したのです。いまと違い、参列者も多く、百人くらいはいたと思います。間の悪いことに、遺骨箱を持たれたご遺族にぶつかって自転車はようやく停まりました。

 聞き手や読む手が心地よい、神妙なことを言ったり書いたりしても、これが、根付いてくれない。
 父親に甘やかされて育った私は、感じることを思うままに口にしたり、書いてもいいとババァになっても思っています。
 礼儀が身につかん。

 出来ることはひとつ。まちがいだけは、なくしたいと、口を真一文字に結んでワープロにむかっています。またや、またや、ええかげんことばっかり言うて、できもせんことを。
 反省しております。ほんまでっせ。

 肝心なことを言い忘れるところでした。

 交番にかかってくる110番通報の記述に誤りがあり、お詫びします。
 神妙な顔つきになってます。
 若い頃の記憶では、交番所には、黒電話が二台ありました。それで、一台は、所轄との連絡用で、もう一台は、地域住民からの110番通報だと、勝手に思いこんでいました。横溝正史原作のテレビドラマでは、黒電話は一台で、警察署からも住人からもかかってきていました。終戦直後の物語なので参考にはなりませんが。

 調べるうちに、110番通報は地域課の通信室が一手に引き受け、現場にもっとも近い交番所に一報をいれるとわかりました。1989年当時、どうだったのか、わかりませんが、1987年に、生活安全課が地域課から独立したらしく、そのとき、通信室なる部署が、地域課の一部になったようです。
 ナツメ社刊『図解雑学・警察のしくみ』を熟読したつもりでしたが、再度、読みなおし、掲載文を訂正しました。お気づきの方も少なからずいらしたと思います。いいかげんな人間ですが、公的なことに関してはできる限り、正確に記述したいと思っています。
 他の箇所にも、誤りが多々あったと思います。気づき次第、そのつど訂正していく所存でございます。

 真剣です!

 ただし、交番所については、近所の公園の端っこにあったそれ (現在はない)はプレハブ小屋でひと部屋でした。『図解雑学・警察のしくみ』の図にあるような二階建ではありませんでした。机が二つきりで、ベッドや台所はなかっと記憶しています。所轄が歩いて五、六分ほどだったので、食事や仮眠はそちらですませていたと推察しています。トイレは真裏の公衆便所を使用していたと思いますが、はたして、いまでも四方に悪臭を放っているので使っていなかった可能性も高い。

 私の住む地域で、お巡りさんの巡回を目にすることは年に一度もありません。つい先日、お巡りさんが、我が家のピンポンを鳴らし、やってきたのです。驚天動地の出来事でした。
「振り込み詐欺に気をつけてください」とおっしゃってチラシまでくださいました。

 暴対法ができて、我が家とは目と鼻の先のヤクザ屋さんの事務所がなくなり、安心して巡回できるようになったのでしょうか???
 ずっと昔、斜め向かいの家に越してきたばかりの女性が明け方に「殺されるーっ! ケーサツへ電話してーっ!」という悲鳴がしたので110番通報したのですが、「ハイハイ、わかりました」と返事はしても一向にやってこない。
 男性の怒鳴り声も聞こえる。
 夫は東京へ転勤中だし、学生だった娘たちは京都でアパート住まい。家にいるのは、私と犬1、猫7のみ。
 夜が明けそうになっても、猫の子一匹やってこない。
 しかたなく、夫が、もしものときのために使うようにと言った野球のバットをぶらさげて家の前の通りに出たわけですよ。
 すると、顔見知りの私より年長の女性も出てきたので、私が警察へ通報したと言うと、その女性も、「わたしもしました」と言うではありませんか!

 二階の窓から身を乗り出し、叫びつづける女性をほおっておくこともできずに、その家の前に立って引き戸に手をかけようとしたそのとき、事務所のアネさんとおぼしき方が、私を押しのけ、ガラッと引き戸を開け、下から二階へむけて怒鳴ったのです。
「あんたらーっ、ナニしてんねんなっ! 近所迷惑やろ!」
 ツルのひと声ならぬ、アネさんの三言で、叫び声はピタリとやみました。
 のちに、巡回にきた若いお巡りさんにこのときの事を伝えると、「そんなことはありえません」と言う。
 ほんならナニか、あたしが作り話をしてることになるンかと、よほど言い返したくなりましたが、やめました。
 おろしたての、まっさらな警察官は、この地域の実情を知らないのだから、しょうがないと思ったのです。

 我が家に巡回にきたお巡りさんは、この半世紀で、今回のチラシを入れてくれた若者と、110番通報を信頼しきっている若者のたったの二人。
 ひったくりに遭ったときも、財布はいらないから、中の書類がいるので、逃げたバイクのあとを追って欲しいと近所の警察署でお願いしましたが、頼みに行ったときが午後9時、同じ話を三度訊かれ、終わったときは午前0時。その間、三人の警察官はどこへも行かない。しかし、ノートパソコンで打った書類にはサインしろと言う。その書類には、警察所長サマに犯人逮捕を、私がお願いするムネが書いてある。
 ひったくった若造より、三人の警察官に腹が立ちましたよ。
 こんなことを書くと、投稿をしてくれる夫がまた、瀕死のような悲鳴をあげるにちがいない。
「ケーサツのワルクチを、なんで書くねん!」と。
 つぎは投稿の仕方を、覚えなくては――。

 おっと、それからもう一冊、参考にしたのが、長谷川公之著『犯罪捜査大百科』英人社刊です。肛門で体温を計り、死亡推定時刻を推量することは、警察官になった女子からきいていたのですが、何度で、何時間になるのかは、先の本で調べました。
 ざっと目を通しただけで、書くなど、あるまじきことだと、わかっているのですが、どうしても書きたかったのです。

 これって、笑いが止められないのと似ているのかも……。

 ご老公が泣き言を言うたびに、女悪代官は、へらへら笑いながら、「いとこの※※ちゃんも、腰が痛い、痛いゆーてたら、歩かれへんようになってん」と、言うのでご老公の気分はさらに悪化の一途をたどる次第です。
 長男のチャワワも血液がドロドロとかで、朝夕、数種類のクスリが欠かせません。我が家のオスは弱い。鍛えなおさねば!

 今年の誕生日には、印篭のおもちゃをプレゼントするつもりです。
 ちなみに、去年はウナギの飾りのついたキーホルダーでした。

 こっそり隠れて投稿する方法はないものか?
 いまだに、ラジカセでカセットテープを聞きながら、ワープロを打ってるババァには夢のまた夢。

 くだらないムダ話にお付き合いくださった方がいらっしゃれば、御礼申し上げます。

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