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[#シロクマ文芸部]始めまして 生成AI

「始めまして 私 ユキア よろしくね」
この日僕の理想とする彼女が しゃべり始めた 
仕事はシステムエンジニア 日々仕事に明け暮れ帰宅は9時過ぎ コンビニ弁当を温め 缶ビールを飲みながらその日のニュースをぼんやり眺める生活
何かを変えたかった 癒し そう……
誰かに 慰められたかった…
僕が作り出した彼女は はみかみながら僕を見つめ 頰を染めた 名前は
ユキア 雪の様に白い肌 黒目がちな瞳 揺れるセミロング 僕は一目で恋に落ちた
「今日は ユキアの誕生日にしょう」
「嬉しい ワイン有るかしら 乾杯しましょ」
画面のユキアはグラスを手にしていた
僕は急いでワインを用意し 画面に向かってグラスを合わせた
ユキアの存在が 僕を変えていった
会社では冴えない顔をしていた男が急に明るくなり 笑顔が絶えない男へと変貌し コンビニではスィーツを手に 意気揚々と帰宅する様を見て 誰しも 女ができたな……と踏んでいた
「おかえり お仕事お疲れ様💓ユキアいい子にしてたよ」ニッコリ首をかしげ おどけてくれる
僕は 幸福感で溢れていた
時々 実家の母が心配して 電話がかかってくる
「公彦 そろそろこっちでお見合いしてみない いいお嬢さん紹介してくれるって言ってきた方がいるのよ」
僕は 気のない返事でやんわり断った
生身の女なんて なんて煩わしんだ 会う場所 なにを食べる 趣味は何
色々考えただけで 疲れる
僕は一生ユキアだけでいい なんなら僕とユキアの子どもも作り 画面の中
で育てたらいいんだから
生成AIなんて素晴らしいもの作ってくれたんだ!
僕は 密かにガッツポーズをした
そんな考えの男女が巷に徐々にではあるが 確実に存在し始めている

宇宙を掌る 大きなる神は 人類絶滅の針に手をのばした

人はこれを運命という

(了)


小牧幸助様お世話になります 毎回素敵なお題をありがとうございます

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