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探求型授業で中学生の学力が壊れ始めている その1

現在中学校の定期テストの結果が返却中である。noteにも書いているが近年1学期の中間テストを廃止している学校が増えているので6月下旬にある期末テストが年度最初の中学校が多い。1年生は初めての定期テストの結果を知ることになる。

今回、塾では2番目に多い中学校の1年生の平均点に度肝を抜かれた。

5教科合計の平均点231.0点

5教科平均231.0点。つまり1教科あたり46点程度である。全教科50点を取れば真ん中より上になる。中2後半から中3前半の学習内容が難しくなり中だるみしやすい時期でもない。それなりに緊張感をもって取り組む中1の1学期でこの数字にはさすがに驚いてしまう。最も低かった社会の平均点は36.3点。128人の生徒で70点以上を取ったのが12人という状況である。

各教科&5教科合計の得点分布表

私が塾を開業した2011年は2つの中学から1年生が通っていた。その時の同じ時期の定期テストの平均点は386.8点と347.7点であった。今のテストの方が難しくなったのは確かではあるが、それでも平均点が100点以上の差が付くようなものではない。明らかにペーパーテストに対する学力が著しく下がっているといえる。また一点、ここで押さえておいてほしいのはこの地域の小学校から私立中学校に進んだ生徒は4人程度である事実だ。

さすがに一部の保護者の方がこの現状に危機感を覚えるようで、先日の保護者会でこのようなやり取りがあったと伺った。固有名詞を削った形で以下に引用する。

保護者様からのLINEの一部

本当に平均点が低くて驚いております。
本人もテスト返却時はガッカリしていましたが思ったよりも順位が高くて、気持ちは幾分盛り返したようです。2学期中間はもっと頑張りたいと言っていますので引き続きよろしくお願いいたします。
あと、子の中学独特の授業形式が気になっています。どの教科もグループで授業というのかプリントををやって分からない問題は生徒同士で教え合って終わるみたいです。
(ほとんど教科書も使わないそうです)
その後に先生が全体に教える事もしないみたいで、今は大丈夫と本人は言っていましたが自分で個別で聞きに行ったりしないと、この先分からないまま終わる事もあるのかなと思いました。
今日が懇談会で気になって聞いてみましたが「うちの中学は学び合いを高めようとしているのでそのような授業を進めていきます」と即答され、不安しか感じませんでした。

保護者様から頂いたLINE全文(一部固有名詞を無くした)

私がnoteで繰り返し訴えている「学び合い」である。なぜかこの効果が出ているとは思えない授業形式が一気に小中学校に導入されている。そして今回のこの保護者懇談ではっきりしたのは、ここまで定期テストが壊滅状態になっていても現場の教員は今の手法を続けていく気持ちが満々だということである。

Xやその他SNSでも昨年くらいからこの「学び合い」とか「タブレット偏重の授業」には疑問の声が少しずつ上がりはじめた。主に学習塾や予備校関係者と一部の保護者である。しかし教員からこの問題に言及する方が非常に少ない。それよりも圧倒的に「働き方改革」に関する発信が多い。

また一部の教育評論家みたいな人たちが妙に「従来の教師が教える教育は古い。インクルーシブで学び合うことが大切だ。知識や技能はいらない。それよりも表現力や発想力が大切」のような発信をする。しかし紫式部も清少納言も藤原道長も知らない子たちに「国風文化について話し合いなさい」とした所で何も生まれないのである。「これからの時代はティーチングではない。コーチングだ。ファシリテーターだ」こんな戯言をいう人も同業者でもいる。これらはあくまでも高等教育でされるべき手法である。公立の義務教育で行われるべきではない。

とにかく私が恐れていたことが一気に顕在化してきたように思う。今の「探求型授業」と「生徒の能力を削ってでも推進される働き方改革」が止まらない限り5教科200点割れも現実のものになるだろう。「義務教育」と言いながら子どもたちに何も身につけさせてあげられない時代がどんどん現実化している。

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