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北欧8-2 B&Bのご主人から頂い小さな缶とロシア男性合唱団アカペラ

B&Bのご主人から頂いたパンと、小さな缶。
その小さな缶が、何だかわからなかった。
臭いを嗅ぐと、刺激的な臭いがしていた。
食べるものではなさそうだし・・・と3人で推測が、弾んでいた。
だが結論が出ず、ユースホステルの受付の女性に見せて訊ねた。
すると、それは噛みタバコだった。絶対に食べてはダメと言われた。
ご主人が自分のためのタバコも買い、それを入れ忘れたまま、わたしたちに下さったようだ。
そのご主人は、小柄で誠実さが全体から溢れ、なによりはにかみ屋さんだった。
しっかりものの奥さんと、素敵なバランスを感じさせていた。
 
わたしたちは夕食にワインを飲み、噛みタバコの件で盛り上がり、気分上々だった。
その気分が更に盛り上がっていった。
食堂は満杯だった。
テーブルは20個以上あったが、家族ずれや若いグループ、カップルとそれぞれでいっぱいだった。
込み合っていたので、早々に引き上げリビングにいくと、素敵な歌声が聞こえてきた。
リビングの奥には、朝食用の部屋があるのだが、どうやらそこから歌声が聞こえてきていた。
歌声に引かれるように行ってみると、20人位の男性が歌っていた。
指揮者らしき人が、歌い終わるとアドバイスしていた。
20代から60代の男性で普段着のままだった。
作業着的な人、ジーパンの人、ネルシャツの人、ネクタイの人もいた。
銘々が個性を発揮していたが、地方色が濃かった。
曲目にロシア曲が多くあり、その風貌からもロシア人と感じた。
気がつくと、後ろには多くの人が聞き入っていた。
老若男女、世界各国の旅人がいた。
外には夕焼けが広がっていた。
その中で聴く、素晴らしい生のアカペラ。
どんなに素晴らしいコンサートホールで聞くより、こころは和んだ。
心地よい酔いが、さらに美しい世界へと連れて行ってくれた。
歌の世界に遊びながら、世界中の人種の中で、そこにはまぎれもなく平和があった。

翌朝はバスに乗り、市内に行った。
お目当ては、ユネスコ世界遺産のブリッゲンだ。
中世の建物が、今まさにそこで生活しているように、燦然と建っていた。
まるで映画のセットに迷い込んだようだった。
観光客がいっぱいで、新宿の歌舞伎町を歩いているようだった。
細い路地が連なり、小さな店が延々と続いていた。
中世の建物に現代の店が出店し、客を呼んでいた。
その込み合いに辟易し、早々に退散した。
大通りに出ると、K子がカメラがないと慌てていた。
背負っていたリュックのサイドポケットに入れていたデジカメが、無くなっていた。
入れ違いではと、リュックのあちこちを探した。でもなかった。
細い路地で、男性が異様に近づいていたと言い、その人が盗んだのだと言っていた。
3人の中でK子が、撮影の担当をしていた。
もう一人の友人は、カメラさえ所持していなかった。
彼女は世界中の世界遺産を見て歩いており、多いときには1年間で5,6回も海外旅行をしていた。
わたしもあまり写真は撮らない。余程の場所で感動が深い場所でないと撮らなかった。
必然的にK子が、撮影担当になっていた。
この日は、ほぼ最終日程で、ここが最後の観光地であった。
デジカメも娘さんからプレゼントされた高級品でもあり、彼女はガッカリしていた。
そのガッカリが、更に重なった。
昼時になり、市場で昼食をとることにした。

ノルウェー世界遺産 ブュリゲン


その前にトイレタイム。
トイレは有料だった。
コインがなかったこともあり、ヅルをした。
トイレを終え、出るときに、ドアを閉めずに次の人が入ったのだ。
一つのコインで3人が、用をなした。
周りを見ていると、そのやり方は普通のようだった。
みなグループで来て、同じ手口を使っていた。
人間、考えることは世界共通のようだ。

昨日、見て廻ったときに大きなロブスターが、氷の上に並べてあった。
本当に新鮮に見えた。
その大きなロブスターを食べることにした。
だが長蛇の列をなしていた。
ロブスターをその場で焼いてくれる店では、みな列をなしていた。
私たちも並ぶことにした。
どうにかケースの前に辿り着くと、注文が始まった。
英語がほとんどわからない店員に向かって、指差しやジェスチャーで伝えた。
ロブスターと貝を選び、付けあわせも他の人が注文していたものを、見よう見まねで伝えた。
それが終わると名前を聞かれ、その名前が書かれた紙を渡された。
だがその名前も発音が聞き取れなかったり、外国語であるため変な名前になった。
名前を呼ばれると、笑いが起こった。
わたしたちも変な名前になった。日本語にない名前だった。
次は、席の確保だ。
屋台なので、大きなテントが張ってあり、テント内やその周辺にテーブルがあった。
何とかテント内の席を、確保した。
その席の長いテーブルには、アジア人家族が座っていた。
わたしたちも座ると、そのテーブルはアジア人専用になった。
周りを見ていると、注文したロブスターを何かを言いながら店員に返していた。
何だか、嫌な予感がした。
ようやくロブスターがきた。
大皿に大きなロブスターが半分にカットされ、
その横には付け合せのポテトや野菜がたっぷり載っていた。
ロブスターを口に入れると、冷たかった。
というよりまだ解凍が取れていない状態だった。
このロブスターは冷凍品だったのだ。
市場だから、生のロブスターと勘違いしていた。
炭火で焼いている風景は、新鮮そのもののように見えていた。
再度、焼いてくれるように頼んだ。
隣の家族連れは、帰った。
待っている間に、雨が降ってきた。
外のテーブルに座っていた人たちが、慌てて移動していた。
雨が本降りになり、寒い中、焼きあがるロブスターを待った。
 

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