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⑤ 満開のアーモンドの花が友人と引き合わせた

モロッコの名産には、アーモンドの他に5月には満開になるという薔薇栽培もあった。
そして世界的に有名なアルガンオイル、皮製品、バラの水やその加工品、アンモナイト、
ミントティー、真鍮製品、 からすみ、絵皿など・・
行く先々でその土産物店に連れて行かれたり、両手いっぱいに売り歩く人に付きまとわれた。

モロッコに行こうと思ったのは、友人の1人が「是非、アーモンドの満開の花を見たいから2月に行く」
と聞いたことにもあった。
アーモンドの花は、桜にそっくりだという。
満開の桜には、華やかさともろさが同居している。
その桜のような花が、砂漠地帯のなかでどんな風に咲いているのか興味があった。
モロッコには季節感はあまりない。
アーモンドの花が満開になると、春が近づいてくる。

2日目からピンクのアーモンド花が、あちこちに見えていた。
それもそのはずで、アーモンドはモロッコが産地だった。
個人の庭先にも、日本人の桜を愛でる感覚で、同じように植えられており、
畑にも、道端にも植えられていた。
日数が進むにつれて、ピンクは増し、満開度も上がっていった。
アトラス山系の渓谷地帯からトドラ、ダデス渓谷、カスバ街道一帯が薄いピンクの色をしたアーモンドの花で包まれいった。


トドラ渓谷


ガイドに、満開の場所で写真を撮りたいと、伝えてあった。
カスバ街道に入ると、見事なアーモンドが道路両サイドに広がっていた。
それらはアーモンド畑でもあった。
その日も晴天だった。
青空にひときわピンクが映えている場所があった。
そこにバスは止まった。
20本以上の大きなアーモンド木が、盛りを迎えていた。
本当に桜の花見に来たようだった。
なかでも 威風堂々としていたアーモンドは、地面すれすれにも花をつけていた。 
花びらに顔を近づけると、ほんわかとしたやさしい香りがした。
柔らかな土に立ち、満開のピンクの下に兄妹全員が並んだ。
すると、そこにいた現地の少年3人が近づいてきた。
外国人は珍しいそうだった。
手招きすると、そばに来て彼らも写真に加わった。

デジカメの写真をみると、彼らが笑顔でピースサインをしていた。
帰国後、引き伸ばした写真には
真っ青な空に、ピンクが広がり、そのピンクに包み込まれるように、笑顔のみんながいた。
そこには土色の塔も、荒涼とした砂漠もなかった。
 
最後のランチに、奇跡が待っていた。
アーモンドの花が見たいと言った友人は、他の旅行社ツアーで来ていた。
わたしたちより数日早くに出発し、帰国も数日遅い予定だった。
レストランでトイレに行った。
トイレは、長い列ができていた。
トイレを出て、席に行こうとしたら彼女の姿があった。
思わず二人で歓声をあげて、抱きあっていた。
冗談で、「モロッコで逢うかもね。」と話したが、まさか逢うとは思えなかった。
朝に満開のアーモンドを愛でた後のランチで逢うなんて、偶然にしては出来すぎている。

ケバブのランチ

彼女の言葉がなかったら、このモロッコには来ていなかっただろう。彼女は、私の姉妹とも顔なじみだった。以前に行った姉妹旅行に一緒に参加していたし、兄妹が住んでいる福井にも遊びに来ていた。レストランの民族衣装の演奏者たちのステージ前で、兄妹と彼女が入った写真を撮った。もう一枚素敵な写真が、加わった。


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