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母校(小学校)校歌を耳コピしよう

昨日、地元議会の選挙投票日だったので、母校の体育館まで投票に行ってきました。今は支援学校になっていますが、数年間は廃校でした。体育館の壁に、旧・小学校の校歌が今も掲げられているのにちょっとじんときましたが撮影していたら係員からやんわりととがめられてしまいました。「投票所での撮影は禁じられています」

この校歌、先日亡くなられた著名音楽家が小5より高3まで作曲の個人レッスンを受けていた方によるものです。松本民之助といいます。この名前は「Avec Piano」というピアノ曲集で知りました。作曲者略歴のなかにあった名前です。「松本に作曲を師事した」と。

その後、何かの機会で母校の校歌の作曲誰それにこの名前があってびっくりでした。在籍の6年間、そういうことは何にも気に留めないままこの歌を歌っていました。

夜中にこの校歌をうろ覚えで弾いてみました。調はへ長調だと思います。ホ長調だと思い出しながら考えたのですが黒鍵を四つも使うので弾きにくいのです。へ長調なら黒鍵はひとつで済むので、たぶんこっちだろうと判断して、この調で弾いていきました。

楽曲の分析脳を、おとなになってから自己流で鍛えてきたので、作曲者がどういう計算でこの曲を作ったのか、曲を再現しながらなんとなく読み取れます。メロディの基本は「ド・ミ・ソ」で、「ラ」をピークにして「ド」に戻ってくる作りです。「シ」まで上がらないのは、おそらく「シ」まで上がると「ド」まで行かないとメロディが収まらない、納得してくれないので「シ」には行かせないで「ラ」をピークに「ド」に降りてくるようにしてあるのです。

「シ」はいちおう鳴るのですが、「ド」より一つ下で鳴ります。これなら主役の「ド」を一つに絞れるからです。この「ド」よりもっと上に「シ」を鳴らすと、そのさらにもうひとつ上の「ド」まで駆け上がってしまって、「ド」がふたつになって収まりが悪くなるのです。

和音は、トニック和音「ド・ミ・ソ」とドミナント和音「ソ・シ・レ・ファ」のふたつを、ピッチャーとキャッチャーのように背骨に据えています。叙情的に盛り上がるところではサブドミナント和音「ファ・ラ・ド・ミ」を使って叙情的に盛り上げています。この三つの和音、メジャー和音です。マイナー和音はこの校歌ではおそらく意図的に外されています。校歌、それも小学校校歌の基本は、①歯切れがいい、②前向きである、③空に向かって歌い上げながらも地面に戻ってくる なので、メジャー和音全面依拠の作りなのでしょう。

ただメジャー和音一本やりだと、ご陽気BAKAになってしまいます。特撮ヒーローの主題歌でも、ひたすら前向き強さアピールではよくなくて、途中にさりげなくヒーローの孤独を混ぜないといけません。といって校歌でマイナー和音は使いたくないので、増四度音程の和声を代わりに使っています。これは弾いていて気がつきました。ああなるほどーって。

この音程は、長調とも短調ともつかない、少々不安げな響きです。しかしアイスクリームに醤油をたらして食べると甘味がひきたつ(昭和の食卓!)ように、私の母校校歌でも実に効果的に使われていると、弾きながら気づいて少し感動しました。

在校中、合唱していて「ああここは気持ちいいな~」といつも感じていた部分は、作曲者がちゃんと考えてそういう音を選んでいたことに、今になって気づいたのでした。

民之助先生、素晴らしい歌を作曲してくださったこと、この場を借りてお礼申し上げます。あなたの高弟のひとりがそちらに旅立たれので、どうか笑顔で迎え入れてあげてください。

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