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トヨタ カローラ アクシオ

出会いは突然に。

久々の遠出の途中で、我が家の愛車は、よもやよもやのワーニングメッセージとエンジンチェックランプの点灯、積車上のクルマとなってしまった。

そして、中央道中津川インターチェンジ前のパーキングでご対面となった、突然の代車が岐阜ナンバーを付けた2年物のトヨタカローラ・アクシオだった。

カローラと言えば最近モデルチェンジした、TNGA 新プラットフォーム採用のカローラスポーツをベースにしたモデルをよく見かける様になってきたが、このアクシオは先々代の肥大化を反省してBプラットフォームに格下げ?されて開発された旧世代の生き残りモデルだ。かつてのベストセラー車カローラの名を付けながら、このモデルは地味で、正直なところ、企業の社用車か不動産屋さんの営業車のイメージしか無い。

エンジンはダイハツが社運を賭ける想いで、因縁のNZ型エンジンの後継としてトヨタと共同開発したNR型エンジンだ。トランスミッションはトヨタ-アイシンAWのCVTである。

ご存知の通りエクステリアのデザインは地味のひとこと。しかし、よく見ると車両アレンジに誠実な質実剛健なデザインであることが理解できる。特に2BOX車ベースのセダンでは冗長になりがちなAピラーからリアフェンダーにかけてのサイドビューは、この車では良くまとまっており好感が持てるものだ。もっとも、その中で必死に個性を主張しようとするかの様な、アグリーなフロントデザインはチグハグでで好きになれなかったが。

質実剛健といえば、この車の車両パッケージングは流石トヨタの看板車種らしく、とても優秀で、昨今のB-Cセグメントの車は欧州車も含め前席を重視する一方、後席はヘッドクリアランスとニースペースは何とか確保されているものの、ドア開口が狭く乗降性が悪かったり、視界が狭く穴倉みたいだったりするケースが多く見られるが、この車に関してはその様なストレスは皆無だ。

また、なにより驚いたのが、Eセグメントワゴンの荷室で、ラゲッジカバーの下にほぼ一杯に収まっていた荷物をそっくりトランクに飲み込んでしまったことだ。真面目に設計された3ボックスセダンの実力恐るべし。デザイン的に難しいハイトの高いトランクリッドも然もありなん。もし2ボックス車のレンタカーがあてがわれていたら、後部座席を畳まないとこの荷物は収まらなかっただろうと思われる。

では乗ってみるとどうか? まず第一印象は真っ黒でテカテカしたプラスチッキーな空間だ。一応シボは打ってあるものの光沢のあるダッシュボード、触るまでも無く硬質感を感じるドアトリム。まあ、安い車であるのは確かだが、この内装だけで買う気を削がれてしまう。そのため、この圧倒的な印象の質感の前には造形がどうであったかなどは記憶に残っていない。この時代のカローラのセールスが思わしくなかったのは、この様なところのコストのかけ方に大きな原因があると思うのだが、いかがであろうか。

一方、各部の操作性は違和感なく扱い良く、吟味されている事が分かるし、以前マツダ車の課題として指摘した、右Aピラーの視界も巧みな断面の処理により(恐らく)十分な強度を確保しながら視界を遮るストレスが無いのは、やはり真面目なトヨタの車造りが伺える。シートの掛け心地は大きな問題点は無いもののシート前後長が短く、筆者の好みからすると、もっと太ももをサポートして欲しいと感じた。

操安性は、そこそこ高速域でも高速道路の直進性は不安は無い。沢山の荷物をトランクに収めているが、高速でうねりを超えても煽ることも無く、まあまあ楽に走ることができるのは当然か。車内騒音は風切り音などはよくチェックされており、エンジンノイズも2500rpm〜3000rpmあたりで4気筒エンジン特有の籠りは有るが特に気になるレベルでも無い。もっとも、CVT のおかげで通常は巡行時にはエンジン回転数は2000rpm以下であり、アクセルを踏み込まない限りこの領域を使うこともないのだが。

ロードノイズも全体的には抑えれれているが、粗い路面に差し掛かると足回りから伝達してくる「ゴー」という音が車内に籠るのは、多くの国産車に見られる共通の弱点だ。欧州車ではBセグ車でもこれほど顕著じゃないので、トヨタに対策技術が無い訳でもないであろうし、これもコストのかけ方だろうか。基本的に騒音対策には質量増とコストアップが伴い、しかも対策であって付加価値にならないことから、車両主査判断となるケースが多いのだ。

先にも述べたが、この車に搭載されているエンジンは、1.3リッターの1NR-FE 型でダイハツがトヨタNZ系エンジンの代替えを狙ってトヨタと共同開発したエンジンだ。スペックは設計年次の旧いNZ系と異なり、燃焼効率の向上と低フリクション化に力を入れており、織り込まれている機構も、デユアルVVT-iによるアトキンソンサイクルや、カムキャリアを採用してラッシュアジャスター付きのローラーロッカーアームとしたなど、カンザシが多く刺さった豪華なものだ。その反面エンジン全体のサイズは、特に高さと幅方向で大きくなってしまった。

このエンジンは野心的な物だったが、国内ではあまり採用が進まず、NZ系エンジンは小型ハイブリッド系を主に残置している一方、NR系は現在、2WDコンベ仕様として、1.5リッター版の2NR-FKEがカローラ・アクシオとフィールダー、シェンタに搭載されているに過ぎない。カローラスポーツなどに搭載されている8NR-FTS型は、NRと名は付いているシリーズエンジンでは有るものの、完全にトヨタ開発の別物だ。現在NR系エンジンはアジアや南米などの主力エンジンとなっており、トヨタの海外工場での生産が主になっている。採用が進まなかった要因は種々考えられるが、排気レイアウト(NZの後方排気に対して前方排気)による車両・トランスミッションとの適合性、トヨタHVシステムの要件に対する不整合(コスト・サイズ?)などかと推測するが、確かなことは当然知るよしもない。

燃費は高速道路とカントリーロード主体では18km/l+α、下り勾配の多い高速道路のみだと22km/lくらいで、高速だと旧型アクアより2割くらい良好な燃費だ。一方、筆者の自宅周辺(急勾配と低速の市街地走行の、恐らく国内では最悪条件)ではやっと10km/lを超えるくらいとはかばかしくなく、他の車に比べて落差が大きかった。おそらく燃費点の絶対値は高いのだが、その範囲が低中速回転で負荷の高い領域に広くなく、我が家の使用条件では、燃費のあまり良くない領域で走りがちになるのではと推測する。

結論としては、車を純粋に道具として捉える人にとっては、安くて便利な良い車として生活の友となるだろう。そういう面では安心して勧められる車だ。


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