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マツダ CX-8 SKYACTIV-D

マツダのトップ・オブ・レンジ、CX-8の新車を試乗することが出来た。

今回の仕様は一度じっくり乗ってみたかったSKYACTIV-D 2.2Lディーゼルターボエンジン搭載車、トランスミッションは6ATである。

さて、早速エンジンを掛けてみると今時のディーゼルエンジンの中でも特にディーゼルノックは小さく、窓を閉めてキャビンで聞く分にはガソリン車との区別がつかないどころか、そもそものNVレベルが相当低く、日頃ノイジーな車に慣れている私の耳にはホボ無音のレベルだ。

ディーゼルノックの低さはSKYACTIV-D特有の低圧縮比(14.4)と共に、今回改良されたインジェクタ多段噴射制御の効果が出ているのだろう。車外音が聞こえやすいように意地悪くサイドウィンドウを下げて壁際で加速するなどしてみたが、これらエンジン改良の効果と車外へのノイズコントロールも秀逸で、ほとんどディーゼル特有の音は気にならない。車外音ではトヨタ車のガソリン直噴インジェクタの作動音の方が余程大きく感じる。

振動についても先に述べたインジェクタ制御、低圧縮比やそれに伴うピストン系の低慣性化、ダンパー付きピストンピンなどの効果でディーゼルとは思えない程のレベルに仕上がっている。

車外へ音が漏れにくいように、エンジンルームは入念にインシュレータが配されている

ではドライバビリティはどうか。2000rpmで450Nmの高トルクを発生する2ステージターボエンジンは一切の気難しさを感じさせない。ターボの応答性に有利なディーゼルエンジンをわざわざ2ステージ化しているだけにターボラグは全く感じられない。しかし、ガソリンの大排気量ターボ車で感じる様なドーンと突き飛ばされる様な加速を期待すると裏切られる。ディーゼルターボエンジンは、ゆったりとした太いトルクで息の長い加速をする様な乗り方でこそ魅力を感じるというものだ。

残念なのはアイドリングストップだ。元々マツダのアイドリングストップはピストンの停止位置をコントロールする事で始動性が早いのが特徴だったが、この車では他車より少し遅いレベルで、測定した訳では無いが、おそらく0.3sec以上掛かっていると思われる。これは感覚的には、さあ動かそうと思ってから一呼吸して掛かるイメージと言えば分かってもらえるだろうか。また始動制御にも少し問題がある様で、右折などで停止時にアイドリングストップが作動している際にブレーキペダルやステアリングを少し動かすとエンジンが始動するが、そこでどういう条件なのか、エンジンが再度ストップしてしまい、動き出すタイミングがずれてしまう事があり、この辺りは改善が必要なところであろう。

ドライバビリティの快適さを語る上で、トランスミッションの優秀さも忘れてはいけないだろう。形式としてはステップアップ式の今では珍しくも無い6速ATだが、このタイプにありがちな変速時の引っかかり感が無く、最新のDSGタイプのトランスミッションの様にキレ良くリニアなシフト感が気持ち良い。また余程バルブボデーの設計や制御が良いのか、クラッチが繋がる際のショックやロックアップのオンオフショックも全く感じられない。キックダウン時にもこのフィーリングは変わらず、おかしなショックもなくキックダウンすると共に、マニュアルモードで積極的にシフトを行ってもショックが無いのは勿論、タイムラグ無く変速をコントロールするのは悦び以外の何者でもないと感じさせる。

5mに近い全長と1.8mを超える全幅、3m近いホイールベースで1.8tを超える車重といった堂々たる体躯のSUVだがハンドリングも中々優れている事がいつもの船坂峠に連れ出してみて判明した。この道は平均的な道幅で対向2車線の、カーブがきつく2つのヘアピンが続くコーナーなどもある、少し厳しめの山道だ。

CX−8は、このサイズをもてあますことも無く、正確なステアリングで結構なハイスピードを保つ事ができる。但し、衝突安全性と車体剛性を確保する為とは言え、太いAピラーの断面形状が悪く、右コーナーで対向車線が完全に死角となってしまい、対向車が全く見えないというのは、安全性やドライビングの楽しさを大きくスポイルしている。これがSKYACTIV-BODYの基本骨格に関わる部分だとすると問題だと感じると共に、他の出来栄えが良いだけに残念だ。

右前方の視界を遮る巨大なAピラーがわかるだろうか

乗り心地も、重いタイヤとホィールでバネ下がバタバタしがちなSUVとしては、タイヤのダンピング不足とそれを増幅するようなマス感が少なくて良い部類だろう。
内装は、最近のマツダ車らしくデザインも良く高級感があって良い。シートの出来も上々で、かけ心地良くホールド感にも優れている。しかし、せっかくデザインや素材で高級感を演出しているのだが、よく見るとダッシュボード中央のウレタンパッドに成型不良が見つかった。せっかく、高額なステッチを奢っているのに台無しだ。せっかくプレミアム路線を軌道に乗せつつあるのだから、こういった部分の品質にはより一層気を配ってもらいたいものである。

これらいくつか気になる部分を除けば、スタイル良く走りも良いCX-8はSUVに縁の無い自分にとっても、とても魅力的な車だと感じた。

CX-5に対して3列目のシートが追加されたので、ゆったり伸びやかな外観


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