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モンゴル・大草原の知恵

1.はじめての海外渡航はモンゴルだった

 わたしの生まれて初めての海外渡航はモンゴル。展示の仕事でいきました。26歳の時です。実際に一ヶ月ぐらい生活して、現地の人とも深く触れあい、その魅力にどっぷりはまってしまいました。
 大草原の文化や知恵、礼儀、誇り、とりわけホスピタリティ(おもてなしの精神)など紹介したいことは山ほどあります。
 当時、椎間板ヘルニアの痛みでひいひい言っていた私が、ウランバートル空港に着いたとたん、痛みがウソのように無くなり、さらにその後、馬上の生活を送る中で、全身の体幹がくまなく鍛えられ、痛みから解放されたことは喜ばしい驚きでした。
 同行した人の中には、食べ物と言えばほとんど羊肉しかない同国に対し、苦手意識を持つ人もいましたが、私は限りない可能性をそこに見出しました。

2.心の病をいやすユニークな「わざ」

 大草原の国・モンゴルには、心の病を癒すユニークな「わざ」があります。
 小長谷有紀著『モンゴル万華鏡』によると、内モンゴル自治区東部では、アンダイ病という、人間関係の葛藤が原因の神経症の一種と思われる、錯乱状態に陥った女性に対し、村をあげて、これまたアンダイという名の踊りを一緒くたになって踊り、病を治療するといいます。
 著者は「その踊りはまさに踊り狂うという表現がふさわしい。個人の狂気を集団の狂気で癒そうとするからである。」と記しています。
 ここでは「臭いものにフタ」といった苦しむ個人を社会から切り捨てて解決するのでなく、社会の方が苦しむ個人に近づき、一体になり、解決を図るのです。
 たしかに真の癒しは、自らの苦しみが理解されてはじめて訪れます。逆に、苦しみが社会から無視された時、その魂には取り返しがつかない傷が刻まれてしまいます。
 「共苦」とでも言おうか、仏教で言う「同苦」に近い感覚か。そのような優しさがモンゴル文化にはあります。
 精神疾患を持っている人、苦しんでいる人、扱いにくい人、これらの人を一部の専門家に任せたり、施設に預けるだけで「事足れり」とするのではなく、また、その人にだけ問題があるととらえるのではなく、社会の方も変わっていく必要がある。私は期せずして、この”アンダイ”というモンゴル文化に、社会福祉で言う「ノーマライゼーション」の理念が現実化しているのを見ました。
 法律や制度の充実も大切ですが、個々人の意識の面、コミュニティの変革も同じぐらい大切です。

3.最後に

 近くの国ですし、相撲や日本のドラマ(当時は、「おしん」や「東京ラブストーリー」が人気でした。今はアニメですね)などを通して、親日感情も強いモンゴル。ご興味がある方は、是非、ご訪問されることをオススメします!



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