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「今から探しに行こう」「まだきっとあるよ」

1.序

 ひたむきな、という言葉が好きです。ひたむきな人、ひたむきな思い、など。
 英語で何というのでしょうか?辞書を引いたら、「single-minded」って出てきました。なんか少し違うなぁ。
 私の言うひたむきさは、相手の心に真っ直ぐ向かう感じ。それも疑いようのないほど。ゆるぎない。
 大人になると色々と言い訳が増えます。小さくまとまってしまいがちな自分を、娘が突き崩してくれた話です。

2.小さな旅

 上の娘が小2のとき、学校で「小さな旅」に出ました。グループで行動し、自分たちで切符を買って電車に乗る。娘はそのことが嬉しくて仕方なかったようです。「楽しみにしている日って、どうしてすぐに来ちゃうのかな?」と聞かれ、答えに困ったのが忘れられません。
 私も同じく小2の時、大船フラワーセンターへ「小さな旅」に行きました。嬉しくて、楽しみで、前日、休憩時間に遊ぶゴム・ボールまで買ってもらいました。
 でも、結果は散々。友だちとキャッチボールをして、すぐにゴムボールを無くしてしまったのです。
 探しても探しても出てこない。涙が溢れそうになる。でも友だちの前では泣けない。暗澹たる気持ちで家に戻りました。母にボールはどうした?と聞かれ、無くした、とだけ答えました。悲しかった。ツツジだったか満開に咲いていた花の群だけが苦い思い出として刻まれています。
 その話を娘にすると、「今から探しに行こう」と言うのです。「まだきっとあるよ」と。僕はもう30年も前の話だし、詳しい場所を覚えてないよ、無理だよ、と答えます。その時の娘には30年なんて月日の長さは想像がつかない。だから「探しに行こう」なんて、“ひたむきな眼差し”で言われると、胸を突かれます。

3.結

 はっきり言って、特に小さいころは子育ての中で、子どもがうざいときもありました。でも、こんなキラキラした瞬間をかいま見せてくれることもあります。無邪気とか、未熟では割り切れない、ひたむきさを教えてくれます。
 今は二人とも大学生となり、表現の仕方こそ変わりましたが、本質的には、「大人」の私に、まっすぐ大切なことを言ってくれます。そんな関係を続けてくれる娘/子に感謝です。

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