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【詩】媚薬

その一滴ひとしずく
どこをにじませたのだろう

いつ
零れ落ちてきたのだろう

その一滴は
わたしの現実を揺るがせ
甘噛むような
痛みさえ請い願わせる

肌にひりひりと張り付くような
沈黙のなかで

疼くまま
うごめくまま

炙られ
衝かれるままに

手を伸ばした先は

内側に取っ手のない扉

そうだった
秘かに持っていた
小瓶の蓋を開けたのは
わたし

甘やかな香りに誘われ
その痛みに魅せられたのは
わたし

扉に伸ばす手は
もう
逃れる術はないことを
知っている

逃れられないなら
そのしずくに染まろう

濡れそぼちて
扉を開けよう


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