ドラフト振り返り

1日目

フランチャイズQB誕生

 全体2位でオハイオステートのC.J.Stroudを指名!ドラフトに関心が強い、熱心な方々にとっては今更でしょうけれどStroudの特徴を軽くまとめます。
 Stroudは6フィート3インチ(191センチ)214ポンド(97キロ)という理想的なサイズやフレームと、今ドラフトでトップクラスのパススキルを併せ持つ逸材です。精度はピカイチ、パスによって速度や角度や落とし所を細かく調節することができます。フットワークは滑らかでボールを供給するスピードも早い。判断力に長けており、この2シーズンはタッチダウンパス85回に対してインターセプトはたったの12回。ビッグプレイメーカーでもあり、2022シーズンの30ヤード以上のパス成功数31本はカレッジ(FBS)で最多でした。
 開幕から先発であることは間違いないでしょうし、それだけの実力をすでにもっていると思います。10年先もNFLでプレイできるだけのポテンシャルがあるはず。テキサンズの新しい時代の幕開けに相応しい指名です。
 ↓彼1人について所感をまとめた記事を書いてるので、詳しくはそちらをどうぞ。

衝撃のトレードアップ、まさかの2連続指名

 4月のモックドラフトはテキサンズがC.J.StroudとWill Anderson Jr.のどちらを指名するかで盛り上がってました。HCがディフェンス畑というのもあるのか、QBではなく今ドラフト最高の守備選手(人によっては、守備どころかYoungやStroudよりも上のトップ選手とするビッグボードも珍しくありませんでした)を優先するという予想は多かったです。
 StroudかAndersonか…という問いに対するCaserioの答えは「両方指名する」でした。

 EDGEは超ニーズだし、Bosaクラスのポテンシャルがある選手ですから欲しかったですけどまさか本当に大幅にトレードアップするとは。トレード対価はこちら↓

 今年の2巡や来年の1巡を手放すのは、安くはないですがそれだけの価値はあります。それにこれだけの対価を払ってトレードアップしたことにAnderson本人は非常に感激しているようですしね。
 どんなプレイヤーかも知ってる方は多いでしょうが、簡潔に説明するならば将来のプロボウラー、ゲームチェンジャー、ディファレンスメイカー。爆発的なスタート、低い姿勢のままコーナーを曲がるボディバランス、OLを翻弄するハンドスキル、柔らかい足首と腰、QBを追い詰める方向転換…枚挙にいとまがないですが兎にも角にもフランチャイズの顔になれる傑物です。
  ちなみにQBやボールキャリアーを追い回して仕留める姿からか、あだ名は「ターミネーター」です。

2日目

わかりやすくニーズを埋めていきました

 2巡(全体33位)をトレードの対価に使ったので2日目の指名権は3巡2つ。ゆったり見ていられると思ったらその2つの指名権をどちらもアップするという展開。積極的に動くCaserioらしいドラフトになりました。
 3巡のオリジナルピック、全体65位に6巡と7巡をつけて62位にアップ。指名したのはペンステートのC、Juice Scruggs!

 6フィート3インチ、301ポンドとポジション的には一般的なサイズ。低く当たれて、手の置く位置や姿勢が良いです。パスラッシュに耐えられる強靭な下半身を持ち、ランではコンビネーションブロックやLBを取りに行くのが上手いと思いました。チームキャプテンを努めており、リーダーシップも兼ね備えています。
 ちなみに本名はFrederick Scruggs。Juiceというあだ名をつけたのは父親で、よちよち歩きを始めたくらいの歳のScruggsがミルクよりもジュースの方が好きだったから、というのが由来なんだそう。

 「QB、EDGEに続いてCも埋まった。ふー、一安心」と思ったらまたしてもトレードアップ。ブラウンズからもらった73位に5巡(Cooksの対価でカウボーイズからもらった指名権)をつけて69位に上がりました。指名したのはTankことNathaniel Dell。あだ名のTankの由来は幼い頃頭がデカかったから。お母さんがつけたそう。

 5フィート8インチ(173センチ)、165ポンド(75キロ)と小柄なWRが多い今ドラフトでもひときわ目立つアンダーサイズ。しかしカレッジではこの2シーズン27試合で199キャッチ2727ヤード29タッチダウンという大活躍。山椒は小粒でもピリリと辛いを地で行く男。持ち前のスピードと滑らかな90度ブレイクでマッチアップするDBの頭を悩ませる選手です。リターナー(特にパント)としての実力も高いんですが、どうやらプロデイでスペシャルチームコーディネーターのFrank Rossが惚れ込んだよう。薄いWRデプスを補強しつつリターナーの有力候補も手に入れる一挙両得な指名になったようです。昨季はチームメイトによる投票でキャプテンに選ばれた、というのもイイですね。

↓マジでたまらねぇなぁ

3日目

やっぱり大人しく待つわけがない

 オリジナルの全体104位とAndersonのトレードで手に入れた105位。3日目の2番目3番目の指名権を持って臨みました。指名漏れした2日目相当の選手をかっさらうには絶好のポジションでしたが、ここでもトレード&トレード。104位+203位⇔109位+174位のトレードをレイダースと交わしてます。104位を109位に落とすことで下位とはいえ30位くらいアップできたから良し、です。

 109位で指名したのはTCUのEDGE Dylan Horton、6フィート4インチ(193センチ)263ポンド(119キロ)。TCUの3-3-5ディフェンスでDEとしてプレイしていました。ガードの前からタックルの外にセットすることが多く、EDGEと言ってもAndersonとは異なるタイプです。
 ランディフェンスで活躍でき、ポジションやスキームの汎用性の高い選手。分厚い体、重い手で自分の守る範囲を走ろうとする愚か者に痛い目を見せるDLです。反面パスラッシュはイマイチで、パスプロに秀でたタックルをどうこうできるようには見えないです。それでもガード相手にインサイドからラッシュするプレイには期待できそうです。
 ちなみに元セーフティです。入学当初の2018年は200ポンドでした。凄まじい肉体改造に成功したわけですが、そういうコンバートをした選手ってやる気やガッツがありそうで僕は好きです。

 アリゾナからもらった105位はフィラデルフィアの2024年の3巡とトレード。これ面白いなと思ったのは、僕は「2日目相当の美味しい指名ができる」って考えてましたけどチーム的には「もうここで指名したい選手はいない」ってなってるところ。コルツが指名したBYUの巨漢OT Blake Freelandやフィジカルお化けAdebaworeなんか良いと思ったんですが。

デプス補強 

 ニーズを的確に埋めていったあとは層が薄いポジションにテコ入れしていくフェイズ。レイダースからもらった5巡174位に7巡をつけて167位にプチアップ。アラバマのLB Henry To'oTo'oを指名しました。6フィート1インチ(185センチ)227ポンド(103キロ)と少し小柄ですね。Will Anderson Jr.や昨年指名したChristian Harrisとまた同じチームになりました。一般的には3巡から4巡で指名されるだろうという予想でしたからおいしい指名ということになります。
 リアクションの良さとIQの高さで身体能力やサイズを補っている感があります。試合によって調子が変わります。良いときはまるでオフェンスと申し合わせたのかというくらいドンピシャのポジションへ詰めてロスタックルしてます。アラバマではMIKEですがプロではWLBと見られてます。Christian Harrisとどう使い分けていくのか注目です。

 6巡201位で指名したのはJarrett Patterson、ノートルダムのC/Gです。2019年から2021年まで46試合にCとして先発、2022年は左Gに転向して12試合に先発しています。2020年の左足骨折や最終年のポジションチェンジが無ければ2日目に指名されていたんじゃないかと思います。2年連続チームキャプテンに選ばれたあたり、人望があるんでしょうね。身体能力や突出したテクニックやパワーがあるわけではないですが、視野が広くてCでもGでも2桁先発しているのはイイですね。
 OLは消耗が激しいポジション。シーズン通して先発5人が出場し続けるのは難しいと思います。控えの質も非常に大事なので、そういう意味でPattersonには期待してます。っていうか事前の評価ではScruggsとあまり変わらない順位での指名を予想されていました。どちらが先発になるかは定かではないです。

 6巡205位ではXavier Hutchinsonを指名!好きな選手なのでテキサンズに指名されて良かったです。6フィート2インチの長身ながら動きが滑らかで、大外もスロットもできる隙のない選手です。カレッジ時代はBrock Purdyのメインターゲットで、Purdyが抜けたあともチームのパスオフェンスを支えたエースです。1シーズンで107キャッチ、キャリア254キャッチはチーム記録だそう。欠点はプロレベルのマンカバーを振り切れなさそうなところ、キャッチしてるわりにタッチダウンは少ないところ、手を使わないとセパレートに苦労するところ。
 ロスター級のWRはNico CollinsにJohn Metchie(すでに練習に復帰しているそうです)Amari Rodgersがいて、今オフでRobert Woods、Noah Brownを補強、でTank Dellを指名ということで6人いるからWRの指名はもう無いと思ってました。なのでHutchinson指名にはかなり驚きましたねー。Metchieの復帰がシーズン途中だとしても、熾烈なロスター争いが起こるでしょう。

 そして最後の指名はピッツバーグ大のBrandon Hill。40ヤード4.43秒を記録した、今年のセーフティで最速の男です。ただセーフティとしてはプレイリアクションやカバー力にかなり問題があるようで、おそらく主戦場はスペシャルチーム。快速と持ち前のアグレッシブなタックルはキックオフカバーなどで活きてくるかもしれません。

まとめ

 さーて怒涛の3日間でした。連日トレードアップしていましたが、そもそもドラフト前は指名権が多すぎると考えていました。欲しい選手を取るためにトレードしまくるのは賢明だったと思います。全体3位へ上がるために相応の対価は払いましたが、それでも来年の1〜3巡を1つずつ保有しています。
 指名自体もニーズ優先で明確な穴が埋まり(しかもトップクラスの選手で)デプスも厚くできました。ケガや素行のリスクを避け、むしろキャプテン経験のある人格者が多い。正直かなり良いドラフトだったとホッとしています。


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