静かな時間を確保するために

1.「美しさは私たちの中に」
私が地味に好きな曲の一つに、攻殻機動隊SAC1期2話の劇中歌である「beauty is within us」がある。

曲の歌詞は著作権の問題があるのでGOOGLE先生に聞いてほしいけれども、曲の歌詞を素直に理解すると、

男として生まれた人が、自分が男でも女でもないことに憤り、自らを生んだ母を呪う前半、そして後半では母に許しを乞いつつも、母の言葉(ここは歌詞を引用します。全文引用でもないので許されるはず)
「Oh,beauty is within us,mother knows
Oh,beauty is within us like a rose
Oh,beauty is within us,so let it grow」
<意訳:ああ、あなたは美しいわ、母さんは知っているの。あなたはバラの様な美しさを持っているわ。あなたは美しいの、それを育てましょう>
という言葉に翻弄される気持ちを描いている。
(なお、usは当然のことながら「私達」なので、母としては自分と息子の美しさを話したのかもしれない。しかし、文脈的に母が性同一性障害を抱える息子にいうならば私の意訳ではなかろうか。
東大翻訳では0点だろう。だが、私が入った京大の入試ではこういう意訳が点を取れたりしたのである。2005年のことだが)・・・という曲である。

なお、この曲が流れる攻殻機動隊SAC1期第2話は、名作である。1話の後にすぐにこれが来るというのも素晴らしい。「病魔に侵されたが宗教的信条の為に生身のまま死んだ戦車研究者の男が、死後に友人の助けを得て自分の電脳を多脚戦車に突っ込んで鋼鉄の肉体を手に入れたことを両親に見せに行く」という物語だ。自らを縛った両親に復讐をしようとしたのか、両親に「僕は強くなったよ」と言いたかったのかは不明のまま物語は終わる。なお、本作の主人公である草薙素子は電脳と義体(身体がロボ)を手に入れており、それとの比較も考えさせれる。未鑑賞の方は是非一度、1話と合わせてご覧いただきたいと切に願う。

曲は、自らに悩む人間の気持ちをとても美しく表現した劇中歌だった。静かに悩みを告白する曲である。

2.「月光が照らすに海の青さ」

2016年の映画でアカデミー賞作品賞を受賞した「ムーンライト」という映画がある。

ヤクの売人の男が仲良くなった少年に言う。
「俺はキューバの出身だ。長くいた。海の近くに住んでいた。
月がでるとはだしで駆け回ってた。
あるとき、ある老女のそばをバカやって叫びながら---走り回ってた。
老女は俺を捕まえてこう言った。
“月あかりを浴びて走り回ってると黒人の子供が青く見える。ブルーだよ。
お前をこう呼ぶ。
ブルー”」

作品は、男性が好きになった少年の人生と悩みを静かに移す作品である。サミュエル・L・ジャクソンは批判していたけれども大体評価はとても高いし、見て良い作品だと思う。

3.性の悩みを静かに表すこと
beauty is within us も、 ムーンライト も、LGBTQを題材にしているけれども、それを声高には叫ばない。
ただ、静かに、その悩みを記すのである。それが大事だと思う。
性の同一性や人と違うことを受け入れること、そしてその人がどう生きるかを決めることには時間がかかるのである。

4.アメリカのLGBTQの現状と危惧
アメリカではLGBTQが非常にリベラルの間でもてはやされている。
禁止されている州もあるが、リベラルな州では学校でLGBTQへの「理解、共感」を推進する授業がされている。
第二次性徴期に悩む(特に女子が多いと聞く)が突発的に乳房を取る手術をすることもあるらしい。
そして州によっては両親の同意なく手術が出来てしまうとのことだ。
https://jp.reuters.com/article/usa-transyouth-data-idJPKBN2R20HI
ロイターのこの記事のほか、twitter(X)でアメリカ在住、特に西海岸在住の人たちのtweetを読むと如何に拙速な手術がされているのかが良くわかる。そして、それが反発を生んでおり、アメリカの分断の一つの原因になって居る。

5.日本のLGBTQ医療のガイドライン
https://www.jspn.or.jp/modules/advocacy/index.php?content_id=23
日本におけるLGBTQの治療に関しては日本精神神経学会がガイドラインを出している。18歳未満の治療に関しては特に経過観察と十分な本人の理解が重視されている。第2次性徴期の治療に関しては不可逆性が大きく、本人の意思も浮動的であるため、その治療が本当に必要かどうか判断することが重視されている。

6.LGBTQ理解推進法の制定
令和5年6月23日に「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」が施行された。
主として何も言っていない法律である。
理解促進のために頑張りましょう、全国民が安心して暮らせる社会にしましょうとしか言っていない。
これをとらえて、LGBTQの団体は差別を助長するものだと反対している。
https://www.asahi.com/sdgs/article/14939487

7.色々な自分のことを静かに考える時間の必要性
性自認や性的嗜好がマジョリティーと違う人は世の中にはマイノリティながらいるだろう。私の周りにも過去、数は少ないがいた。表明していない人も含めたらちょいちょいいるかもしれない。
彼らが自分の生き方を決めるのは大変だと思う。
性的嗜好は好きにしたらいいし、岡山の県北で糞まみれになりながら頑張っていただいても、性病さえなければ私としては特に何らの感想を頂かない。
性自認について治療を行う場合、やはり未成年の治療は慎重さが求められると考える。自らの性が変わることは大きい自己同一性の変化をもたらすし、その治療が一定程度進めば不可逆性が発生するからである。
また、MTF(元々男性だけど女性になろうとする人)には女性ホルモン治療が行われるが、これが非常に精神を不安定にすることは諸々の事件を見ても明らかである。

8.周りの対応
彼らの治療については医師の研究会や国会などで話されることであるし、まあ経過を見ておけばいいかと思っている。
問題は、私たちが日々の暮らしでLGBTQの人間がいた時にどう接するかであろう。
私は、「ほっておいてやれよ」と思う。
どう生きるかはそいつが決めることだろう。
相談されたら黙って聞いてやろうじゃないか。
若者が手術を相談されたら「変えたら戻られないが、それでいいのかじっくり考えよう」と言ってあげよう。そして黙っておいてあげよう。
LGBTQが静かに人生を考える時間を提供すること、それが私たちマジョリティのするべきことではないか。

何かそういう団体は「理解の促進」とか「勉強しろ」とかやたらいうが、そんなもん何を勉強して理解するかは俺の自由だろう。みんな忙しいんだ。
ただ、人は傷つけないようにしたいもんである。

そのためにも、黙って話を聴くこと、悩む人には考える時間を与えることが重要だと思った次第である。

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